会計事務所経営に役立つ情報
(2015年12月)

多彩な諸手当を支給し自己評価と他己評価を「年収」で示す

 会計事務所の商品とは、人材そのもの。どんなに潜在能力がある人材を採用できても、能力や実績に報いる給与・評価のシステムが整っていないと、定着しません。これからの時代、会計事務所が生き残るには、人材を引き付け、定着・成長させるための給与システムが不可欠です。

 独自の給与・評価制度を活用している、松本税務会計事務所の事例を紹介します。


なぜ、あの会計事務所は良い人材が育つのか?

─御社の給与に対するスタンスを教えてください。

松本氏:
現代は、会計事務所の所長が「修行だから」と言って低賃金・長時間労働を強要する時代ではありません。安心して生活できるよう、一般企業と同じレベルの給与を支給できるよう努めています。これまでノリでいろいろな特別手当をつけていましたが、そこを残しつつ、評価をシステマチックにして給与に反映させています。

─確かに、いろいろな特別手当がありますが、縁故採用手当はユニークですね。

松本氏:
はい。社員の友人・知人を採用する場合、能力や人柄がだいたいわかりますからね。仕組みとしては、入社時にまず紹介者に5万円を支払います。そして、縁故者が入社して1年経ったら、その縁故者の年収の5%から、先に支給した5万円を引いた額を支給します。事務所としても、縁故採用がもっと増えることを望んでおります。当事務所そのものと、事務所の仕事に誇りを持った人が増えるからです。

─評価制度はどのようになっていますか?

松本氏:
評価シートを使い、「業績」「能力」「行動」を評価します。それぞれの項目について、まず自己評価を行い、直属の上司が評価をします。さらに所長を含めた幹部3人で最終評価をします。さらに「当事務所での適正年収」と「他の事務所に転職した場合にもらえそうな年収金額」も書いてもらいます。

実際の年収より高い金額を適正年収として書いていれば、それに見合った仕事をガンガン振るようにします。もちろん、それでつぶれる場合もありますが。一方、実際の年収よりも低い金額を適正年収で示してあると、責任逃れしているのではと解釈しています。

─上司も同じように部下の評価を年収でも示すのですか?

松本氏:
その通りです。幹部に匹敵するポジション以上になると、他己評価として、社員全員の「当事務所での適正年収」と「他の事務所に転職した場合にもらえそうな年収」を示してもらいます。ルールとして、同じ年収の社員が存在しないよう、必ず1万円でも差をつけ、序列をつけてもらいます。

─その狙いはどこにありますか?

松本氏:
とかく評価というと、なあなあになってみんな差がつかない無難な評価をしてしまいがちですが、それではいけません。幹部は人を評価することも重要な仕事。その訓練として、年収に示して評価してもらうようにしています。評価を年収で示すことは、その人の人柄と仕事ぶりに関心がなければできません。事務所全員に対して興味をもってもらうためにも、この年収評価を行っています。

─最後にメッセージをどうぞ。

松本氏:
会計事務所が発展するにあたり、成長と結果に報いる評価と給与は欠かせません。「ここまで頑張れば、このポジションでこれだけの給与がもらえる」という道筋をはっきり見せることで、それを励みにして努力を続けることができるのではないのでしょうか。


松本先生の取り組みについての詳細は、新作DVD情報教材「なぜ、あの会計事務所は良い人材が育つのか?」に収録しています。


なぜ、あの会計事務所は良い人材が育つのか?