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(2014年2月)

相続・事業承継対策の種類

 来年2015年には相続税が大改正を迎えます。それに備えて相続・事業承継対策が重要になっています。有効な相続・事業承継対策を提案することで、顧問先からの信頼が厚くなり、契約が長続きできます。今回は中野智也税理士が「相続・事業承継対策の種類」について解説いたします。


2015年の大改正に備えて!

 相続税の大改正を目前に控えた現在、相続・事業承継対策の重要性が増しています。ひとくちに相続・事業承継対策といっても、税金だけではありません。ほかにもいろいろな対策を打つことが大切です。相続・事業承継対策を提案することで、相続の見込み客を獲得できます。そういう意味でも相続・事業承継対策の必要性は高まっています。


財産債務の状況と家族構成本人の考えを把握する

 相続・事業承継対策といっても扱う範囲は広いです。どういった対策が考えられるのでしょうか。

1.相続税対策

 相続が発生した際の相続税に関する対策。将来相続が発生したときにいかにして相続税を安くできるか考えます。そのためにはお客様がどんな財産を持っていて、どんな家族構成かなどを調査して状況を把握し、いろいろと策を練るのです。

 一方、相続税の納税となれば多額のキャッシュが必要になる場合があります。不動産などの固定資産をたくさん保有しているものの、現預金などの流動資産が少ない場合、相続税を納められないことが想定されます。納税資金をいかにして確保するか対策を打たなければいけません。

 また、納税の方法も考える必要があります。相続税は金銭一時納付が前提ですが、延納や物納といった制度が認められています。しかし、延納や物納は一定の要件があり、相続発生後では間に合わない場合があるので、事前に対策を練らなければいけません。

2.事業承継対策

 相続のとき、またはそれ以前に円滑な事業承継を行うための対策。個人事業も対象となりますが、問題になりやすいのは法人の場合です。相続発生と同時に事業を承継する場合もありますし、元気なうちに子供等に事業を承継させておくといったかたちも想定できます。事業承継対策は相続にとって切り離せません。

 事業承継対策で考えるポイントは4つあります。

1)後継者問題…誰が会社を継ぐかを考えなければいけません。

2) 株価対策…法人の株式を持っていれば相続財産になり、相続税がかかります。いかに株価を下げて相続税を節税できるかを対策する必要があります。

3) 種類株式の発行…相続で会社を継がない子供にまで株式が分散してしまうと、その後の事業承継がやりづらくなります。会社を承継しない子供(次男、三男など)が株式を取得する場合に備えて株式買取請求権をつけるなどの対策を取ることが大切です。

4) 納税猶予…中小企業の非上場株式を相続して事業を承継する場合、納税猶予制度があります。要件が厳しくて使いにくい部分がありますが、徐々に要件が緩和されてきており、今後増えていく可能性があります。

3.争族対策

 相続となると相続人の間で、誰がどの財産をいくらもらうかで争いになってしまうという場合がよく見られます。実務を行ってみても、相続が発生する前までは仲がいい兄弟だったのに、相続を機にもめて関係が悪化してしまい、分割協議がまとまらなくなるというケースは少なくありません。

 そのような「争族」を回避するためにどのような対策が必要なのか。生前に話し合って、子供たちに意思を伝えておいたり、遺言書を作成して残しておくことや、最近ですと信託を活用するケースも考えられます。

 まずは一度、お客様がどのような財産をどのくらい持っていて、どのように考えているのかをしっかりヒアリングして、現在の状況を把握することが大事になってくるといえるでしょう。


贈与税・譲渡所得税の確定申告の実務