会計事務所経営に役立つ情報
(2012年12月)

事務所に合った給与・報酬システムが生み出す成長の力

事務所のカルチャーを共有する給与規程で職員がひとつに

 「当社ではより良い事務所にするために貢献してくれる人、事務所を引っ張りあげてくれる人を高く評価します。このような当社のカルチャーを理解して、一緒に成長したいと思ってくれる人を採用します」と語るのは、辻・本郷税理士法人の徳田孝司理事長だ。

 一体何をすれば評価され、どう頑張れば認めてもらえるのか、これはその組織の目指すゴールによって変わる。ただし、そのゴールを明確に定義し、職員と共有することで意味をなし、給与・報酬は事務所のエンジンとして機能する。「所長の鉛筆ナメナメ」でなんとなく評価されてしまっては、職員は何をどう頑張れば良いのかわからなくなってしまう。

 所長は何に価値を置いているのかを職員と共有しなければ、事務所のゴールは明確にならず、職員は所長以下ひとつに団結できなくなってしまう。

 給与・報酬制度はただ職員に対する給料について規定するだけのものではない。事務所の未来をつくる、職員と一緒に明日をつくりあげるための第一歩なのだ。

 自発的に働ける環境づくりで職員の定着率は上がる自発的に動いて行う仕事と言われてイヤイヤする仕事、どちらがやりがいかあるかは聞くまでもないだろう。

 職員自らが、「一体自分は今何をするべきか」を自発的に考えて能動的に行動できる事務所は、新規の売上も伸びる、お客様の満足度も上がる、やりがいを感じる職員はいきいきと働くというように、正のスパイラルが回り出す。「うちは職員の定着率が高いんです。仕組みがシンプルだから一人ひとりが“自分の給与を上げるためになにをすればいいのか”を考えて自発的に動いているんです」と語るのは、税理士法人トップ会計事務所の増山雅久代表社員だ。

 社員が自立し、自身の役割を把握して行動できる組織がどれほど強いかは想像に難くない。その根底には成果配分という考えに則って制定された給与・報酬規程がある。

 年功序列でなんとなく給与を上げていくのではなく、「やったらやっただけやった分を払う」システムならば、職員は前向きに自分の仕事を遂行しようとする。

 ポジティブに自分の意志で働く職員はマインドも高く、上からの命令でただ動く「やらされている感」もない。 自分の評価が何に基づいているのか、なぜこの評価なのかといった指標が明確なため、不満も出にくく、職員の定着率も高くなる。人財が長く定着し、事務所を成長させていくモデルケースといえるだろう。コミュニケーションが不満を招く報酬規程で定着率アップ顧問先と綿密なコミュニケーションを結ぶには、優秀な職員の採用と育成が大切になる。1年ごとに職員が入れ替わってしまうようでは、顧問先から信頼を得るのは難しい。

 顧問税理士に満足していますか? の質問に、「満足」「大変満足」との答えが合わせて56%となった(税理士業界ニュース調べ)。半数以上の経営者が満足している一方で、44%は満足していない。では顧問先が税理士に対して抱く不満はなんだろう。

 その答えは「コミュニケーション不足」の一言に集約できる。サービスに対する不満も値段に対する不満も、しっかりと根拠と理由を説明できれば大きな不満に成長したりはしないものだ。

 また、昨今では経営コンサルティング的な指導も必要になる。そのためには顧問先をよく知る職員を定着させる必要がある。

 優秀な職員を採用し育成するためには何が必要なのか、その答えは事務所の方針に適した給与・報酬システムにある。事務所のスタイルやビジョンと合致し、職員のやりがいを喚起するようなシステムになっているのかどうか、ぜひ一度、見なおしてみてはいかがだろうか。


DVD「新・会計事務所の給与・報酬システム」