会計事務所経営に役立つ情報
(2012年10月)

金融円滑化法終了と会計事務所の密接な関係とは?

 2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」の期限は、いよいよ来年2013年3月末。金融円滑化法が終了すると、来年4月以降は銀行の融資スタンスが大幅に変わることが予測できます。そうなると、会計事務所にとってどんな変化が生じるか。今回は資金調達に強みを発揮する中小企業診断士・繁盛士業プロデューサーの東川仁氏が金融円滑化法終了と会計事務所の密接な関係について解説します。


2013年3月末までもう時間がない!

 中小企業金融円滑化法とは「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」の通称。中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸付条件の変更等を行うよう努めることなどを内容とする法律です。

 2008年秋以降の金融危機、景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、2009年12月に約2年間の時限立法として施行されました。期限を迎えても中小企業の業況や資金繰りが依然として厳しいことから、2013年3月末まで延長されました。

 金融円滑化法により、従来財務内容等に懸念のある債権でも、一定の場合正常債権として銀行は処理していました。しかし、来年3月末の最終延長措置が終了すると、財務状況に応じて不良債権として処理しなければならなくなります。

 潜在的には「不良債権予備軍」といわれる貸し出しが地方銀行全体で26兆円強に上り、貸し出しの14%強を占めるといわれています。また、不良債権先と区分された中小企業では、金融機関からの融資が困難になるため、資金繰りに窮した中小企業の倒産が急増することが予想されます。


何の手も打たない顧問先の半数が「破たん懸念先」に

 中小企業の倒産が増えると、会計事務所にとっても売上減という深刻な状況が訪れます。通常の事務所でも10社に1社程度は借入金のリスケを行っている顧問先が存在するのではないのでしょうか。

 ただ、中小企業の社長は自社がリスケをしていることを税理士の先生に言いたがらないケースがあります(あらかじめ税理士に相談している場合は別ですが)。だから、実際にリスケをしている顧問先は、会計事務所が考えているよりも多いことが想定されます。

 会計事務所が金融円滑化法終了に対して何の対策を取らないままでいると、顧問先の半分以上が「破たん懸念先」に格下げになってしまい、事業停止に追い込まれる可能性が高いです。そうなると、事務所の売上に大きく影響します。

 毎月顧問先に対して、試算表に関する説明を行っている事務所であれば、借入金の返済額の推移を把握できるので、相談等の対応が可能です。しかし、試算表を出力して届けているだけの顧問先に対してはそこまでの把握とフォローができていません。こうした顧問先が非常に危険なのです。

 会計事務所が顧問先にすべきことの第一歩は「金融円滑化法が終了すると、リスケを延長してもらえず、事業停止に追い込まれる企業がたくさん出てくる」と伝え、危機感を持ってもらうことです。

 一方、金融円滑化法終了対策で金融機関と密接なコミュニケーションを取ることで、新たなビジネスチャンスが期待できます。

 来年3月まで待ったなし。今すぐ金融円滑化法終了対策のアクションを起こしましょう。