会計事務所経営に役立つ情報
(2012年7月)

税理士だからできる経営者へのサポート

 企業の経営者が会計事務所に求めているもの何か?

 毎月の帳簿付けなのか。それとも決算申告を無難に乗り切ることなのか。経営者が求めているのは増販増客による売上の向上だろう。会計事務所はそのサポートやアドバイスができる唯一の存在。ならば積極的にその立場を利用しよう。

 キーワードは「決算診断」だ。


顧問先の防衛を測って決算料を維持

 経営者が会計事務所に求めているミッションは何か。それは企業が成長するための手助けをすることだ。

 ここでの「手助け」とは毎月の正確な作業やミスのない決算書を作成することではない。企業を倒産から守り、永続させるために会計事務所にしかできないサポートを行う。そのひとつが「決算診断」だ。決算料の値下げ要求を受けたことのある会計事務所が6割を数え、そのうちの83%が値下げ要求を受け入れざるを得なかったというアンケート結果(アックスコンサルティング実施。期間:2012年4月)をどう受け止めるか。

 これは会計業界特有の「決算料」に、経営者が付加価値を感じていないことを表している。

 その一方でこんなアンケート結果もある。

 グラフ(1)は決算書の中身に関する説明を税理士から受けていると答えた経営者に、「その説明と決算書で会社の実情がわかったか否か」を質問したものだ。結果はご覧の通り。半数以上が「分からない」と答えている。

グラフ(1)

 続いてグラフ(2)を見てみよう。「会社の実情と課題を定期的につかんで、経営に役立たせていますか?」という質問に対しては、75%もの経営者がこう答えている。「会社の実情をつかむ方法が分からない。その方法が知りたい」

グラフ(2)

 この課題を解決するサービスこそ、決算診断だ。

 会計事務所にしかできない高付加価値のサービスを提供する。企業の問題点をチェックすることで企業経営を成功へと導いていく。それによって顧問先は契約している会計事務所に対する価値を感じ、手放そうと考えなくなる。値下げ要求など言い出さなくなるだろう。

 経理代行業や決算申告代行業では終わらない、顧問先の経営を守り成長させていく税理士が今求められているのだ。


企業を守れない税理士はこれから生き残れない

 グラフ(3)は成功している経営者と資金難の経営者が自社の経営指標をどれくらいの頻度でチェックしているかを示した結果である。

グラフ(3)

 成功している経営者は、「ほぼ毎日」「週に1回」「週に数回」の合計が59%、一方資金難の経営者は41%とその差は歴然だ。

 事業領域を取り巻く環境は、日々猛烈なスピードで変化している。その変化に対応するために、自社の経営状況を常にチェックしておく必要がある。成功する経営者は数字に強いのだ。

 グラフ(4)はその事実をさらに裏付ける。

グラフ(4)

 黒字を達成している経営者の76%が経営者自ら会計業務を行っている。一方で、資金難の経営者は62%にとどまっている。黒字の経営者自らが自社の会計を熟知。創業時から会計ソフトを使いこなしたり、自らデータ入力は行わないまでも、自社の会計がどうなっているのか、常にチェックし分析している。「経営者は営業に専念し、経理や会計に関しては税理士に外注する」というイメージはもはや古い。

 成功している経営者が求めているのは、決算診断や定期的なコンサルティングなど、より高度なアドバイスなのだ。経営者にはできない高付加価値のサービスを用意し、提供することで企業を守る。これは会計事務所にしかできないミッションであり、アップセルのチャンスなのだ。