酒税法においては、法令で認められるほか、免許を受けない者の製造した酒類、酒母若しくはもろみ又は輸入したこれらのもので輸入許可を受けないものを、所持し、譲り渡し又は譲り受けた行為を、密造酒類等の所持等犯として処罰すると規定する(酒法56①五)。
「所持金」という用語が、「携帯している金」等を指すことからすれば(日本国語大辞典)、「所持」も「持っている」という意味かと思われるところ、ここにいう「所持」とは現実にそのものを所持している必要はないと解されている。
例えば、仙台高裁昭和26年5月29日判決(東高刑時報22号52頁)は、酒税法53条(現行法45条)のいわゆる「所持」とは、物に対する事実上の支配の状態を意味するとしており、物件を他人の保管に託した場合においても、受託者を通じて間接にその物に対し支配関係を維持していると認められる限り、なおその物権を所持しているとみることができる旨判示している。
これは鉄砲等禁止令に関する最高裁昭和24年5月26日第一小法廷判決(刑集3巻6号869頁)の考え方と同様である。このように考えると、寄託者の所持と受託者の所持とが併存することになるのであるが、そのことは妨げないと解されているのである。