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総所得金額等の「計算の基礎」とは

(2016/06/28)
  所得税法上の事業所得者が、確定申告書を作成する際に、確定申告書に売上金額及び必要経費等を記載すべき法的義務はあるのであろうか。
 所得税法120条1項11号は、居住者は確定申告をする場合、その総所得金額等の「計算の基礎その他財務省令で定める事項」を申告書に記載すべきものと規定されているが、そこにいう「計算の基礎」にこれらの金額が含まれるか否かについては明文の規定がなく、専ら解釈に委ねられているのである。
 この点が争点とされた事例において裁判所は一定の解決を見出しているので、確認しておこう。
 すなわち、広島地裁昭和57年1月28日判決(税資122号107頁)は、「省令〔筆者注:当時は大蔵省令〕の規定内容、及び所得金額は事業所得の場合、少くともその収入金額(売上金額)と必要経費(売上原価等)によって算数上明らかにされる数値であることからすると、右にいう『計算の基礎』とは、単に利子・配当・事業等の区分された各所得金額をいうにとどまらず、事業所得の場合右売上金額、必要経費等、各所得の計算の基になった事項をも含むものと解され、右記載は義務付けられているものということができ〔る〕」と論じている。
 そして、この判断はその後上訴審においても維持されている。
(出所:酒井克彦・税のしるべ平成26年4月14日号)