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専門家の名義貸しと損害賠償責任
(2015/09/25)

 著名人や有名人が宣伝広告に登場するなどした、その事業の遂行が不正、不当であったり、宣伝されていた商品に欠陥等があった場合に、関与した著名人等の法的責任が追及されることがある。この事業者と取引をした者が著名人等の宣伝広告を見て信頼し、あるいはそれを重視して契約締結の判断を行った場合の、著名人等の不法行為(民709)、共同不法行為、幇助(民719丸数字1丸数字2)を法的根拠とする責任追及である。

 例えば、俳優が原野商法の広告塔となりパンフレットに推薦文を掲載していた事例において、大阪地裁昭和62年3月30日判決(判時1240号35頁)は、俳優の幇助責任を肯定している。

 ところで、大阪地裁平成18年12月8日判決(判時1972号103頁)は、法律事務所の所長弁護士が受任した事件をイソ弁(居候弁護士の略。法律事務所に雇われて働く弁護士)が共同して受任し、所長の事務処理をしている間に、イソ弁が退所したところ、所長の事務処理の過誤により敗訴判決を受けたとして、依頼者が所長と元イソ弁に対して委任契約上の債務不履行責任を追及した事案である。

 同判決では、受任事件につき勝訴の高度の蓋然性が認められずに責任は肯定されなかったが、これも弁護士としての委任契約における名義貸しの事案の一つであるといえよう。

(出所:酒井克彦・税のしるべ平成25年10月21日号)