中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)
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I.総論

1.目的


(1)  「中小企業の会計に関する基本要領」(以下「本要領」という。)は、中小企業の多様な実態に配慮し、その成長に資するため、中小企業が会社法上の計算書類等を作成する際に、参照するための会計処理や注記等を示すものである。

(2)  本要領は、計算書類等の開示先や経理体制等の観点から、「一定の水準を保ったもの」とされている「中小企業の会計に関する指針」(※1)(以下「中小指針」という。)と比べて簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業を対象に、その実態に即した会計処理のあり方を取りまとめるべきとの意見を踏まえ、以下の考えに立って作成されたものである。

  中小企業の経営者が活用しようと思えるよう、理解しやすく、自社の経営状況の把握に役立つ会計
  中小企業の利害関係者(金融機関、取引先、株主等)への情報提供に資する会計
  中小企業の実務における会計慣行を十分考慮し、会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した会計
  計算書類等の作成負担は最小限に留め、中小企業に過重な負担を課さない会計

 
※1  平成17年8月、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の4団体により策定された中小企業の会計処理等に関する指針。



 2.本要領の利用が想定される会社(※2)


(1) 本要領の利用は、以下を除く株式会社が想定される。

  ・金融商品取引法の規制の適用対象会社
  ・会社法上の会計監査人設置会社

(注) 中小指針では、「とりわけ、会計参与設置会社が計算書類を作成する際には、本指針に拠ることが適当である。」とされている。

(2)  特例有限会社、合名会社、合資会社又は合同会社についても、本要領を利用することができる。

 
※2  本要領は法令等によってその利用が強制されるものではないことから、「利用が想定される会社」という表現としている。



 3.企業会計基準、中小指針の利用


 本要領の利用が想定される会社において、金融商品取引法における一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(以下「企業会計基準」という。)や中小指針に基づいて計算書類等を作成することを妨げない。



 4.複数ある会計処理方法の取扱い


(1)  本要領により複数の会計処理の方法が認められている場合には、企業の実態等に応じて、適切な会計処理の方法を選択して適用する。

(2)  会計処理の方法は、毎期継続して同じ方法を適用する必要があり、これを変更するに当たっては、合理的な理由を必要とし、変更した旨、その理由及び影響の内容を注記する。



 5.各論で示していない会計処理等の取扱い


 本要領で示していない会計処理の方法が必要になった場合には、企業の実態等に応じて、企業会計基準、中小指針、法人税法で定める処理のうち会計上適当と認められる処理、その他一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の中から選択して適用する。



 6.国際会計基準との関係


 本要領は、安定的に継続利用可能なものとする観点から、国際会計基準の影響を受けないものとする。



 7.本要領の改訂


 本要領は、中小企業の会計慣行の状況等を勘案し、必要と判断される場合に、改訂を行う。



 8.記帳の重要性


 本要領の利用にあたっては、適切な記帳が前提とされている。経営者が自社の経営状況を適切に把握するために記帳が重要である。記帳は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って行い、適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成しなければならない。



 9.本要領の利用上の留意事項


 本要領の利用にあたっては、上記1.〜8.とともに以下の考え方にも留意する必要がある。

丸数字1 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。(真実性の原則)

丸数字2 資本取引と損益取引は明瞭に区別しなければならない。(資本取引と損益取引の区分の原則)

丸数字3 企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。(明瞭性の原則)

丸数字4 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。(保守主義の原則)

丸数字5 株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。(単一性の原則)

丸数字6 企業会計の目的は、企業の財務内容を明らかにし、企業の経営状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにある。このため、重要性の乏しいものについては、本来の会計処理によらないで、他の簡便な方法により処理することも認められる。(重要性の原則)


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