7.特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入
 第31回 7−5 常務従事役員割合
掲載日:08/09/16

1)常務に従事する役員

 特殊支配同族会社に該当するためのもうひとつの要件が「業務主宰役員および常務に従事する業務主宰役員関連者の総数が、常務に従事する役員の総数の半数を超えるもの」というものです。

業務主宰役員(1人) + 常務に従事する業務主宰役員関連者の数
常務に従事する役員の総数

 上記の割合が50%を超える場合には、この要件を満たすものとなります。

 常務に従事する役員とは、会社の経営に関する業務を役員として実質的に、日常継続的に遂行している役員をいい(法人税法基本通達9−2−54)、職務内容や従事の状況等を勘案して、実態に応じて個々に判断することになり、常勤か非常勤かといった出勤頻度等の形式のみによって判定されるようなものではありません。

 ちなみに、代表取締役、副社長、専務、常務などは、その地位から考えて、会社の経営に関する業務を実質的に、日常継続的に遂行している役員と考えられるため「常務に従事する役員」に該当することになります。もちろん、肩書きのみで「常務に従事する役員」と判断されるものではなく、形式のみで実態の伴わない名目だけの役員であれば、当然に該当しないこととなります。


2)使用人兼務役員の取り扱い

 使用人兼務役員については、使用人としての職務割合が高く、役員としての職務が単に取締役会のメンバーとして業務執行に関する意思決定に参画するだけであるような場合には、「常務に従事する役員」には該当しないものとされています(法人税基本通達9−2−54(注)1)。

 また、使用人兼務役員については、「常時、使用人としての職務に従事する」という要件があるため、その点から考えれば、そもそも「常務に従事する役員」には該当しないのではないかという疑問も生じます。

 しかし、同通達の注書きでは、役員としての職務に対する給与が、使用人としての職務に対する給与を超えるような者については「常務に従事する役員」に該当するとしています。ただし、これは、給与の区分が実態を適正に反映したものであることを前提とした形式基準であると考えられるため、役員給与および使用人給与が、それぞれ役員もしくは使用人としての実際の職務内容に対する適正な給与水準からかけ離れているような事実があれば、あくまでも、職務の実態に即して判断されることになると考えられます。


3)会計参与、監査役の取り扱い

 会計参与や監査役は、通常は「常務に従事する役員」には該当しません(法人税基本通達9−2−54(注)2)。会計参与は、取締役と共同して計算書類等の作成をする権限を有し(会社法374条1項)、監査役は取締役の職務の執行を監査する権限を有するもの(会社法381条1項)であり、会社法上、業務執行権限がなく、そもそも経営に参画する役員ではないため、「常務に従事する役員」には該当しないのです。

〔常務に従事する役員の範囲〕
代表取締役、副社長、専務、常務 「常務に従事する役員」に該当する。
使用人兼務役員 役員給与 > 使用人給与
役員給与 < 使用人給与 「常務に従事する役員」に該当しない。
会計参与、監査役


前へメニューへ次へ
Copyright 2001-2008 Kaneko Accounting Office All rights reserved.
Copyright 著作権マーク SEIKO EPSON CORPORATION 2008, All rights reserved.