7.特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入
 第30回 7−4 業務主宰役員グループと業務主宰役員関連者
掲載日:08/09/09

1)業務主宰役員グループの範囲

 特殊支配同族会社の判定要素のひとつに、「業務主宰役員グループの株式等所有割合が90%以上」との要件があります。この業務主宰役員グループとは、業務主宰役員およびつぎに掲げる者のことをいいます(法人税法施行令72条1項、3項)。

(1) 業務主宰役員の親族(6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族)
(2) 業務主宰役員と婚姻届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(3) 業務主宰役員の使用人
(4) 上記(1)から(3)以外の者で、業務主宰役員から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
(5) 上記(2)から(4)の者と生計を一にするこれらの者の親族
(6) 業務主宰役員等(業務主宰役員および(1)から(5)の者)が同族会社を支配している場合におけるその同族会社
(7) (6)もしくは(8)の者または業務主宰役員等および(6)もしくは(8)の者が同族会社を支配している場合におけるその同族会社
(8) (7)の者または業務主宰役員等および(7)の者が同族会社を支配している場合におけるその同族会社

 これらの者は、基本的には、同族会社判定における株主グループの範囲と同様ですが(法人税法施行令4条1項、2項)、(6)から(8)における「同族会社を支配している場合」とは、つぎのとおり90%以上の支配が要件となっています(法人税法施行令72条2項)。

〔同族会社の支配要件〕
 [1] 同族会社の発行済株式または出資(自己株式または出資を除く)の総数または総額の90%以上に相当する数または金額の株式または出資を有する場合
 [2] 同族会社のつぎに掲げる議決権のいずれかにつき、その総数(その議決権を行使することができない株主等が有する議決権の数を除く)の90%以上に相当する数を有する場合
  イ. 事業の全部もしくは重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転または現物出資に関する決議に係る議決権
  ロ. 役員の選任および解任に関する決議に係る議決権
  ハ. 役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社が供与する財産上の利益に関する事項についての決議に係る議決権
  ニ. 剰余金の配当または利益の配当に関する決議に係る議決権
 [3] 同族会社の株主等(合名会社、合資会社または合同会社の社員(その同族会社が業務を執行する社員を定めた場合には、業務を執行する社員)に限る)の総数の90%以上に相当する数を占める場合

 なお、特殊支配同族会社の要件である「株式等所有割合が90%以上」であるかどうかの判定の際にも、上記の基準は準用されます(法人税法施行令72条3項)。

 したがって前述のとおり、持株割合で該当しない場合であっても、議決権割合により該当することもあり、また、合名会社、合資会社、合同会社については、業務執行社員数の割合によって該当する場合があります。


2)業務主宰役員関連者

 業務主宰役員関連者とは、前述の業務主宰役員グループ(の(1)から(8)に掲げる者((1)から(5)までの者にあっては、その同族会社の役員に限る))をいいます(法人税法施行令72条1項)。


3)同一の議決権行使に同意している者がいる場合

 個人または法人との間で、その個人または法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がいる場合は、その議決権はその個人または法人が有するものとみなされます。また、この場合、その個人または法人はその議決権に係る会社の株主等であるとみなされます(法人税法施行令72条4項)。

 つまり、議決権が形式にすぎず、実質的な議決権行使者が異なる場合には、その実質に着目して議決権割合を判定しようとするものです。

 なお、「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」の判断に関しては、つぎのような取り扱いがあります(法人税基本通達1−3−7)。

「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」に当たるかどうかは、契約、合意等により、個人または法人との間でその個人または法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるかどうかにより判定することに留意する。
(注) 単に過去の株主総会等において同一内容の議決権行使を行ってきた事実があることや、その個人または法人と出資、人事・雇用関係、資金、技術、取引等において緊密な関係があることのみをもっては、その個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者とはならない。

 継続して白紙委任状を提出することを約しているような場合や、株式持合いにより議決権行使に関して互いの意思に沿うように議決権行使する旨の合意があるような場合には、これに該当することになります。

(議決権を行使することに同意している事実があると考えられる事例)
(1) 株式の所有が組合形態で行われている場合で、特定の組合員の意思により議決権が行使される旨の組合契約等における合意があるとき
(2) 株式の所有が信託形態で行われている場合で、委託者、受託者または他の受益者の意思または指図により議決権を行使する旨の合意または信託行為における旨の合意があるとき
(3) 株式を相互に持ち合っている場合で、議決権の行使についてお互いの意に沿うよう行使する旨の定めがあるとき
(4) その個人または法人に対して継続的に白紙委任状を提出しているとき
平成18年12月公表の国税庁「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度に関する質疑応答事例」(問4)より


4)議決権を行使することができない株主等

 議決権数の判定にあたっては、「議決権を行使することができない株主等が有する議決権の数」を除くこととされています。

 会社法では、株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にある株主については、その議決権を有しないものとされていますが(会社法308条1項カッコ書き)、このような株主等については、「議決権を行使することができない株主等」に該当することになります(法人税法基本通達9−2−55、同1−3−6)。


前へメニューへ次へ
Copyright 2001-2008 Kaneko Accounting Office All rights reserved.
Copyright 著作権マーク SEIKO EPSON CORPORATION 2008, All rights reserved.