7.特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入
 第27回 7−1 制度の内容
掲載日:08/08/19

1)制度の概要

 この規定は、オーナー(業務主宰役員)による実質的支配度合いが強い、いわゆる一人会社(特殊支配同族会社)を対象とした制度で、平成18年度の税制改正によって創設されたものです。

 具体的には、特殊支配同族会社の業務主宰役員に対する給与について、給与所得控除に相当する部分を、特殊支配同族会社の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととしたものです(法人税法35条)。


2)制度の趣旨

 法人形態の場合、法人においてはオーナーへの給与が損金算入され、一方、給与を受け取るオーナーにおいても、所得税の課税段階において給与の概算経費として認められた給与所得控除を受けることが可能となります。

 この仕組みは、実態が個人事業と実質的に変らない特殊支配同族会社にあっては、法人段階と個人段階のそれぞれにおいて経費が二重に控除されているという捉え方もでき、形態の違いのみによって個人事業との課税上の不公平が如実に現れる結果となります。

〔個人形態と法人形態との比較〕
個人形態と法人形態との比較

  こうした「個人事業者との課税上の不公平」を是正することを目的として、課税上の弊害となっている給与所得控除額(所得税法28条2項、3項)に相当する部分について、損金算入を制限することとしたものです。


3)会社法施行に伴う影響

 会社法施行に伴い、株式会社の資本金規制がなくなり、役員1人による運営も可能となったことから、株式会社の設立が容易になりました。これにより、個人事業者が節税目的で「法人成り」するケースが増加することも予想され、課税上の不公平がますます増大するといった懸念があったことも、制度創設に至った理由のひとつであります。


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