6.利益連動給与 |
第25回 6−2 利益連動給与の具体的要件 |
掲載日:08/08/05
損金算入が認められる利益連動給与の要件は、その算定方式が、その事業年度の利益に関する指標(有価証券報告書に記載されるものに限る)を基礎とした客観的なもので、以下の1)〜3)の要件を満たすものであること、その他4)の要件を満たすものとなっています(法人税法34条1項3号イ、ロ)。
1)有価証券報告書の提出法人
算定方式に関して「利益」に関する指標とあるため、株価や売上高などの指標は認められず、「有価証券報告書に記載されているもの」とあるため、適用できるのは、有価証券報告書を提出する法人に限られています。
つまり、継続して利益連動給与を適用できるのは、株式公開会社ということになり、事実上、中小企業には無縁の制度となっています。
2)確定額を限度としていること(法人税法34条1項号イ(1))
(1) |
確定額を限度としているものであり、 |
(2) |
かつ、他の業務執行役員に対して支給する利益連動給与に係る算定方法と同様のものであること。 |
(1)は、無制限な支給が行われないように上限の定め方に要件が付されたもので、上限額が具体的に確定していない取り決め方では要件を満たさないことになります。つまり「経常利益の○○%を限度とする」といった取り決め方は不可で(法人税法基本通達9−2−18)、「利益連動給与の上限は○○百万円とする」といった具合に、具体的な金額を取り決める必要があります。
3)報酬委員会の決定などの適正手続(法人税法34条1項3号イ(2))
(1) |
その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日(保 険会社にあっては、4ヶ月を経過する日)までに、 |
(2) |
報酬委員会(業務執行役員または業務執行役員の特殊関係者が委員になって いるものを除く)が決定していることその他これに準ずる適正な手続きを経ていること |
「その他これに準ずる適正な手続き」とは、具体的に以下のように規定されています(法人税法施行令69条9項)。
[1] |
内国法人(委員会設置会社を除く)の株主総会の決議による決定 |
[2] |
内国法人(委員会設置会社を除く)の報酬諮問委員会(業務執行役員および業務執行役員の特殊関係者([3]において業務執行役員関連者という)が委員となっているものを除く)に対する諮問その他の手続を経た取締役会の決議による決定 |
[3] |
内国法人が監査役会設置会社(業務執行役員関連者が監査役になっている会社を除く)である場合の取締役会の決議による決定(監査役の過半数がその算定方法につき適正であると認められる記載をした書面をその法人に提出している場合に限る) |
[4] |
上記[1]から[3]に準ずる手続 |
特殊関係者とは、業務執行役員の親族、内縁の妻、その役員の使用人、これらと生計を一にする親族などをいいます(法人税法施行令69条8項)。
4)その内容が遅滞なく開示されていること(法人税法34条1項3号イ(3))
(1) |
その内容が、決定または手続の終了の日以後遅滞なく、 |
(2) |
有価証券報告書に記載されていることその他所定の方法により開示されていること |
その他所定の方法としては、証券取引法に規定する半期報告書、臨時報告書や証券取引所が提供する適時開示システム「TD−net」が認められています。
また、利益連動給与は、すべての業務執行役員に対して要件を満たした利益連動給与を支給することが求められているため、ここでいう「開示」の内容についても、業務執行役員のすべてについて、その業務執行役員ごとに、[1]その利益連動給与の算定の基礎となる利益に関する指標、[2]支給の限度としている確定額、[3]客観的な算定方法の内容を開示する必要があります(法人税法基本通達9−2−19)。
ただし、この開示は、業務執行役員ひとりひとりに関しての記載を求めるものではなく、算定方法を「役職別」に公表していれば、役員の氏名まで記載する必要はないとされています。
5)損金経理要件等(法人税法施行令69条10項)
(1) |
利益に関する指標の数値が確定した後1ヶ月以内に支払われ、または支払われる見込みであること |
(2) |
損金経理をしていること |
具体的に、「利益に関する指標が確定した」とは、定時株主総会において計算書類の承認を受けた時(会計監査人設置会社の特則(会社法439条)により定時株主総会の承認を要しない法人については、取締役が計算書類の内容を定時株主総会へ報告した時)をいいます(法基通9−2−20)。
また、損金経理することが要件となっているため、利益連動給与の算定基礎となる利益が生じる事業年度において、役員賞与として費用処理(未払計上)する必要があります。
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