4.定期同額給与
 第16回 4−5 臨時改定事由による定期同額給与
掲載日:08/06/03

1)臨時改定事由による改定(法人税法施行令69条1項1号ロ)

 定期給与で、その役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更等のやむを得ない事情(臨時改定事由)により改定されたもの

 臨時改定事由による改定は、「通常改定による定期同額給与」における「特別な事情」とは異なり、会計期間開始から3ヶ月経過日等後に発生した偶発的な事情や、改定をするにふさわしいやむを得ない事情によるもので、利益調整等の恣意性があるとはいえないものについて、定期同額給与として認めたものです。

 この「臨時改定事由による改定」は、平成19年の税制改正で新たに追加されたものです。平成18年12月公表の国税庁「役員給与に関する質疑応答事例」において、以下のようなケースを定期同額給与と認めるとしており、その後の税制改正により具体的に整備されたものです。

 [1] 役員の分掌変更にともなう増額改定
 代表取締役の急逝により、期中に急遽、代表取締役となった取締役について 役員給与を増額した事例
 [2] 合併に伴う定期給与の増額
 合併法人と被合併法人の取締役を兼務し、双方から役員給与の支給を受けていた取締役について、合併後も合併前のそれぞれの法人における職務を遂行することとなった場合において、合併後の役員給与を2社で支給していた給与の合計額に改定した事例

 この2点の具体例は、その後の通達改正において「やむを得ない事情」の例示として、つぎのように規定されています(法人税法基本通達9−2−12の3)。

(職制上の地位の変更等)
9−2−12の3 役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容に重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とは、例えば、定時株主総会後、つぎの定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合や、合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合をいう。

 職制上の地位とは、社長、副社長、専務、常務などの法人における役職を指し、定款等の規定または株主総会もしくは取締役会の決議により付与されたものをいいます。なお、意図的に、もしくは形式的に役員の職制上の地位変更を行って給与改定をし、利益調整目的にこれを利用するようなケースは、当然に認められないことになります。


2)一定期間の減額

 なお、前述の平成18年12月公表の国税庁「役員給与に関する質疑応答事例」では、つぎのような事例も「定期同額給与」として取り扱って差し支えないとしています。

 当社は、取締役Aが統括する部署における法令違反により行政処分を受けたことから、その社会的な責任に鑑み、臨時株主総会において、取締役Aの定期給与の額を3ヶ月間20%減額する旨の決議を行いました。

 法令違反等により企業秩序を乱した、あるいは会社の社会的信用を大きく失墜させたなどの場合で、役員給与の一定期間の減額措置を講じるといったことは当然に起こり得るケースであり、その処分内容が社会通念上相当なものであると認められる場合には、定期同額給与として取り扱って差し支えないというものです。

 以上のような事例は、税制によって損金算入が阻害されるようなものではないので「その他これらに類するやむを得ない事情」として認められるべきものであります。


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