4.定期同額給与
 第15回 4−4 通常改定による定期同額給与
掲載日:08/05/27

1)通常改定による定期同額給与(法人税法施行令69条1項1号イ)

 定期給与で、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日*(保険会社は4月を経過する日)までに改定されたもの
*ただし、3ヶ月経過日等後に改定(継続して毎期所定の時期にされるものに限る)されることについて特別の事情があると認められる場合は、その改定の時期

 わざわざ会計期間開始の日と規定しているのは、「みなし事業年度」を考慮したもので、また、3ヶ月経過日までとされた理由としては、

 [1] 役員給与の支給額を定める時期が、一般的に定時株主総会の時であること
 [2] 事業年度終了間近の改定を許容すると、利益の払出しの性格を有する増額改定を認める余地が生じること

が挙げられており(国税庁「役員給与に関する質疑応答事例(平成18年12月」)、特別な事情によらない通常の役員報酬の改定については、定時株主総会が開催される期間内によるものを定期同額給与として認めるものです。


2)特別の事情があると認められる場合

 3ヶ月経過日等後の改定であっても、特別の事情があると認められる場合には、通常改定による定期同額給与として認められる場合があります。この特別の事情に関しては、通達においてつぎのような例を示しています(法人税法基本通達9−2−12の2)。

 (1) 全国組織の協同組合連合会等でその役員が下部組織である協同組合等の役員から構成されているものであるため、当該協同組合等の定時総会の終了後でなければ当該協同組合連合会等の定時総会を開催できないこと
 (2) 監督官庁の決算承認を要すること等のため、3月経過日等後でなければ定時総会が開催できないこと
 (3) 法人の役員給与の額がその親会社の役員給与の額を参酌して決定されるなどの常況にあるため、当該親会社の定時株主総会の終了後でなければ当該法人の役員の定期給与の額の改定に係る決議ができないこと

 この通達は「例えば、つぎのような事情により・・・」として例示を挙げていますので、改定時期が3ヶ月経過日等後であることが、恣意性の介入する余地がない法人の意思では操作できないような外的なやむを得ない事情によるものであれば、「特別の事情」として認められるものと考えられます。

 もちろん、「継続して毎期所定の時期にされるもの」でなければならないので、特定の事業年度のみの事情や毎期改定時期が異なるような事情では認められないことになります。


3)期首に遡及して増額改定する事例の検証

 旧法人税法基本通達9−2−9の2で損金算入が認められていた、定時株主総会において役員報酬の増額改定を期首に遡って決議し、期首から決議前までにすでに支給された役員報酬に係る増額分を一括支給するケースは、定期同額給与には該当しない(事前確定届出給与、利益連動給与などの他の損金算入が認められる給与にも該当しない)ため、通達も廃止され損金算入できないこととなりました。

(事例:月額20万円の増額改定をし、4〜6月分の増額部分を一括支給)


 このため、遡及一括支給を行っていた法人が、従来と同じく損金算入できるようにするためには、一括支給ではなく、改定以後の支給額に遡及差額を上乗せする形で、支給額の改定を行うしかありません。


 これは、従来と同様の効果を得るように、改定後の支給額を決定するものであって、遡及改定差額との認識のもと、これを以後の支給時期に分割支給するような定め方をした場合には、問題となります。


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