3.役員給与の税務上の取扱い
 第9回 3−1 平成18年度税制改正の概要
掲載日:08/04/15

 会社法施行を受けて、平成18年度の税制改正において役員給与関係の取り扱いが大きく変わりました。従来まで利益分与たる性格であると考えられてきた役員賞与について、会社法では役員報酬と同様、「職務執行の対価である財産上の利益」に一本化されたことに伴い、税制も損金に算入される役員給与等の範囲を見直しました。


 改正前においては、役員報酬と役員賞与とに大別し、役員報酬を原則損金算入、役員賞与については利益分与たる性格から損金性を否定してきました。その区分方法は、主としてその支給形態によって行われ、原則として定期の給与を役員報酬、名義のいかんを問わず臨時的な給与を賞与としていました(退職給与を除く)。

(改正前までの取り扱い)






定期給与 あらかじめ定められた支給基準または慣習に従って毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給される給与 役員報酬
臨時給与 他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する定めに基づいて支給されるもの
退職を基因して支給される一切の給与 退職給与
上記以外のもの 賞与(損金不算入)

 平成18年度の税制改正では、これまでの定期か臨時かという区分をなくし、会社法と同様、役員賞与も役員報酬と同じく役員給与として一本化して捉え、損金算入される給与の類型を3種類定めたうえで、これに該当しないものを損金不算入とする規定としました(法人税法34条1項)。

 役員賞与を利益処分とする考え方がなくなり、職務執行の対価として明確化されたことで、税務が役員賞与の損金性を否定するひとつの根拠がなくなったわけです(もっとも、役員賞与であるかどうかの判断は、利益処分たる性格を有するか否かによるのではなく、もっぱら支給形態が定期か臨時かという基準によって判定されていました)。


 具体的に3種類の類型とは、(1)定期同額給与、(2)事前確定届出給与、(3)利益連動給与であり、基本的には、職務執行開始前に支給額があらかじめ決定されているものといえます。

 従来から税務当局には、法人の利益調整の手段として役員給与が使用されることを封じ込めたい考えがあり、会社法施行を機に損金算入できる役員給与の範囲を限定し、支給時期や支給額に対する恣意性が排除されるものであれば、損金算入を認めましょうという趣旨に基づいた取扱いになっています。


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