平成27年からの相続税改正のポイント
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 3.事業承継税制の改正

(1)事業承継税制の概要

 非上場会社の事業承継支援のため、次の1)と2)の税制(以下、「事業承継税制」という。)が設けられています。

1)非上場株式に係る贈与税の納税猶予・免除制度

 後継者が、先代経営者(贈与者)から非上場会社の株式の贈与を受け、一定の要件を満たす場合は、贈与前から後継者が既に保有していた議決権株式を含め、発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分について、贈与税の全額の納税が猶予されます。納税が猶予された贈与税額は、先代経営者又は後継者の死亡等により、納税が免除されます。

2)非上場株式に係る相続税の納税猶予・免除制度

 後継者が、先代経営者(被相続人)から相続等により非上場会社の株式を取得し、一定の要件を満たす場合は、後継者が相続前から既に保有していた議決権株式を含め、発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分について、課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。納税が猶予された相続税額は、後継者の死亡等により、納税が免除されます。

3)適用を受けるための要件等

 前述1)と2)の納税猶予の適用を受けるためには、後継者、先代経営者及びその非上場株式を発行する会社において、一定の要件を満たす必要があります。さらに、納税猶予の適用を受けた後であっても一定の事由に該当した場合は納税猶予が打ち切られ、一定の利子税の額とともに猶予税額の全部又は一部を納付する必要があります。


(2)事業承継税制の改正点

 事業承継税制について、その利用を促進するため、平成25年度税制改正により主として次の図のような適用要件等の見直しが行われました。

事業承継税制(納税猶予制度)の主な改正点
改正項目
(1) 事前確認制度の廃止
(2) 親族以外の者を後継者とする場合の適用
(3) 役員退任要件の緩和
(4) 先代経営者の無給役員要件の撤廃
(5) 認定会社における雇用確保要件の緩和
税の種類 相続税・贈与税 相続税・贈与税 贈与税 贈与税 相続税・贈与税
平成26年まで((1)を除く)の取扱い 相続又は贈与等の前に経済産業大臣の確認を受けることが必要でした(〜平成25年3月31日)。 後継者は先代経営者の親族のみに限定されます。親族以外の者への非上場株式の遺贈又は贈与は、適用対象外とされます。 先代経営者は、認定会社の株式を贈与する前に、認定会社の役員を退任する必要があります。 先代経営者が認定会社の株式を贈与後に再び役員に就任した場合、5年間は役員給与を受けることができません(役員給与を受けると、納税猶予制度の取消事由に該当)。 納税猶予制度の適用開始後5年間の各年において、相続開始時又は贈与時の雇用の8割以上を維持する必要があります(確保できないと、納税猶予制度の取消事由に該当)。
平成27年
以降の取扱
上記の確認が不要とされました(平成25年4月1日〜)。 先代経営者の親族以外の者を後継者として、その者への非上場株式の遺贈又は贈与する場合においても、納税猶予制度の適用が認められます。 先代経営者が、贈与時に認定会社の代表権を有していなければ、その贈与時及び贈与後に引続き役員に留まっていても、納税猶予制度の適用が認められます。 上記の納税猶予制度の取消事由について、先代経営者が認定会社の株式を贈与後に役員に就任し、役員として給与の支給を受けた場合であっても、取消事由に該当しないこととされます。 上記の雇用確保要件に係る納税猶予の取消事由について、「納税猶予制度の適用開始後5年間において、平均して相続開始時又は贈与時における雇用の8割以上を維持」に緩和されます。
(注) 認定会社とは、事業承継税制の対象となる株式を発行する会社のうち一定の要件を満たす会社をいい、具体的には租税特別措置法70条の7の2第2項1号に規定する認定承継会社又は同法70条の7第2項1号に規定する認定贈与承継会社をいいます。


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