中小事業者のための消費税率引上げ対策
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 3.経理実務への対応
 
(1)納税額の把握と納税時の資金繰り

 周知のように、消費税は赤字企業でも納税が必要です。多くの民間の調査では、中小事業者・零細事業者における今回の消費税率引上げ分の価格転嫁について、厳しい実態が明らかになっていますが、価格転嫁が十分にできなければ、事業者は自らの利益を削って納税することになります。それだけに、税率が上がった場合に、納税額がどれくらい増えるのかを把握することや、納税時の資金繰りを前もって考えることは重要です。

 例えば、売上高1500万円の事業者が簡易課税で申告している場合、「卸売業」(みなし仕入率90%)では、5%の納税額であれば7万5000円ですが、8%に引き上げられると12万円となり、その差4万5000円が負担増となります。「不動産業等」(みなし仕入率50%)では、同じく37万5000円から60万円に増え、その差22万5000円が負担増となります。

 売上高が上がればそれだけ消費税率引上げ後の納税額も増えるわけですから、そのための納税時の資金繰りを考えておかないと、滞納といった事態も起こりかねません。事業者のなかには、消費税納税のために金融機関等で前もって定期積立預金をしているところも多いと思いますが、毎月の積立額を増額するなどの準備が求められます。


(2)経理実務面の影響

 記帳を、手書きでなく、パソコンなど電子機器を使用している場合は、当然、経理ソフトの内容を変更することに留意しなければなりません。また、手作業で処理している事業者の場合は、この機会に経理ソフトを導入するなどして事務効率化のためにIT化を検討してみてはいかがでしょう。既にIT化を図っている事業者は、さらに使い勝手の良いソフトへのバージョンアップなども検討課題となります。

 そのほか、発行する請求書や契約書の消費税額が、どのように表示されているかを確認することも必要です。税率引き上げ時期をまたぐ契約となるなどの場合は、税率引上げ後に引上げ分の消費税額をもらえないなどのトラブルを招く懸念もあります。そのためにも、取引先と相談をした上で、契約書の改訂などを前もって準備しておくことを勧めします。


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