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岩本政人(いわもと・まさひと) 1967年、神奈川県横浜市生まれ。18歳からプロのロードレース・ライダーを目指し、アルバイトと猛練習を繰り返す。国際A級ライセンスを取得し、鈴鹿8時間耐久レースにも出場。不運な事故により負傷し、現役引退。資金集めのためにアルバイトをしていた建設業界をきっかけに起業。1990年に株式会社アペックスを設立。マンション、集合住宅などのアフターサービス事業に焦点を絞り建設業界の常識を破ることで事業の拡大を続ける総合建設ITソリューションカンパニー。 【3つのキーワード】 1.「4つのお客様」を喜ばせる 2.就職も結婚も価値観の共有を 3.社員にも株主にも「ガラス張り経営」 【起業の頃について】 ――起業のきっかけは。
岩本:若い頃、プロのロードレース・ライダーを目指していたのですが、ある年の国際A級クラスでレース中に背骨を折ってしまいました。幸いけがは完治したのですが、今後どうしようかと考えたときに、自分で会社を興して、「社長兼チームオーナー兼チーム監督兼ライダー」になろうと思ったのです。 そこで、以前マンション建築の現場でアルバイトをしていた会社の社長に相談に行きました。「会社を作って社長のように金持ちになり、自分でレースをやりたい」というと、「君が本気でやるというなら応援するよ」といってくださいました。 会社を作り、後輩を集めて、建築現場の軽作業を請け負う事業を始めました。そのころは、起業家になろうとか、会社を成長させて社会の役に立とうなどとは、全く考えていませんでした。 ――バイクが中心だったのですね。 岩本: 目標は一つしかなかった。自分の生きる道はバイクしかないと思っていました。レースがあるときは「すみません」と1週間ほどいなくなり、お客様から「社長はどこにいるのですか」「いや、ちょっと鈴鹿に・・・」(笑)。 しかし仕事も順調に増え、このままではさすがに無理だという時が来て、自分は後輩にレースの夢を託し、ビジネスの世界で生きていこうと決めました。そのころビジネスがだんだん面白くなってきていました。 ――当時苦労したことは。 岩本: ちょうどそのころ、大口取引先の経営が悪化して、今まで順調にあった仕事がいきなりなくなってしまいました。半年間ほど仕事がありませんでした。 その時、先輩をはじめいろいろな人に話を聞きに行きました。そして「経営者としてしっかり勉強しないと会社は大きくならないし、社員も幸せにできない」と気づきました。 そこで、森ビルのビジネススクールや、リクルートの『アントレ』が主催するセミナーに何回も行って勉強し、世の中にはすごい経営者がいるのだと初めて知りました。また、リクルートの人の紹介でいろいろな方に会わせていただき刺激を受け、「私も社会に対してもっと大きく役に立つビジネスをしたい」と考えるようになりました。 ――どのような事業をはじめたのですか。 岩本: 当時は、建設業界も不動産業界も人手不足で、かつITによる合理化が遅れていました。建築現場の日々の業者や職人の人数もきちんと把握されておらず、コスト管理ができていなかったのです。 そこで、業者や職人の人数の集計ができる簡単なデータベースを作ったところ、大変喜ばれました。また、そのような管理ができる施工管理技術者やキャドオペレーターなどの人材派遣も始めました。 【経営について】 ――現在の事業内容は。 岩本: 不動産業界へ人材とシステムを提供しています。 一つは、不動産にかかわる様々な人材を教育し、ゼネコンやディベロッパーに派遣する事業です。 もう一つは、マンション建築後のアフターサービスをワンストップで提供する事業です。
――アフターサービスとは。岩本: ディベロッパーやゼネコンには瑕疵担保責任があり、施工上の問題について一定期間無償で直さなければなりません。例えば、扉が開かなくなった、床がギシギシいうので直してほしいなどというときに、本来はすぐにお客様のところへ行くべきところを、人手不足で対応が1週間後〜2週間後となってしまうことがありました。そこで、弊社がアウトソーサーとして素早く対応し、しっかり直すところまで管理して、お客様に満足していただきます。 また、いつどのマンションの何号室でどのような問題があったかを全てデータベース化し、ウェブで共有できるASPシステムを提供しています。例えばある部屋でトイレの故障があり、調べてみると3年前にも故障があってその時は誰がいくらで直したということがわかるようになっています。住宅のそうしたシステムは、今までありませんでした。 ――お客様からもマンション供給会社からも喜ばれますね。 岩本: 「4つのお客様」と私どもは言っています。 (1)マンションを購入された消費者、(2)マンションを売るディベロッパー、(3)施工会社、(4)専門工事業者です。 (4)の専門工事業者の方たちには、工事の工程を工夫して効率よくしてあげることで助かると喜ばれています。(3)の施工会社の方には「君たちがちゃんとやってくれるから、われわれ施工業者としての評判も上がったよ」と喜ばれています。(2)のディベロッパーの方もマンション事業主としての評判が上がります。(1)のマンションに住むお客様はスピーディに対応してもらえます。 このように、4つのお客様に喜んでいただける、大変にやりがいのある事業です。 ――通常は直接お金を払ってくださるお客様しか見ていないことが多いですね。 岩本: よく社員には、幅広く多面的にものを見ようと話しています。企業は、投資家や銀行がお金を出してくれるからビジネスができますし、お客様がいるから売上が上がります。 4つのお客様を満足させるためにはどうすればいいのかと常に考えていると、多面的に物事を見る癖がつきます。あの人にとってはこれがいいけれども、この人も満足させなくてはいけないからこうしたほうがいいかなと。お客様とお金をもらう人とサービスを提供する人が違うと、多面的に考えないといけないですね。 ――どんなことをいつも社員に話されていますか。 岩本: 「まずはお客様に喜んでもらおう。4つのお客様みんなに喜んでもらうにはどうすればいいか考えよう」と常に話しています。 時には自分を犠牲にして喜ばすこともあるかもしれませんが、それは将来必ず自分に返ってきます。今のために生きるのではなく、将来のために今を生きよう、将来のために今の行動を決めよう、といつも言っています。 また、自分のためにと思うと判断を間違えるときがあります。しかし、人を喜ばすためにと考えると、その時は自分にとって不利な場合もあるかもしれませんが、必ず自分に返ってきます。自分のためにと考える前に、人のためにやってみよう。それはお客様であったり、仲間であったり、家族であってもいいと思います。
――どんな人材に来てほしいですか。岩本: 自立型、自分で考えて動ける人です。 採用・就職は、結婚と同じです。価値観が合わない人と結婚すると離婚になってしまいます。同様に、価値観の合わない会社に入ってしまうとお互いに不幸です。 ですから面接の際には、「私の考えはこうです。私の考えを理解し、自分の考えと照らして本当に一緒に働きたいかよく考えてきてください。本当にこの会社で幸せになりたいと思ったら、お客様のために一緒に働こう。」と言います。 ――この社長室は、ガラス張りで珍しいですね。 岩本: 小さな会社なので、社員とのコミュニケーションが一番大事だと思っています。社員が喜んでいない会社は絶対に伸びません。社員を喜ばせたいのです。では社員が喜ぶにはどうすればいいかと言うと「透明」だと思います。社長が何を考えどのような発想で動いているのか、会社の業績がどうなっているのか、すべてわかることだと思います。そこで社長室もガラス張りにしたのです。ガラス張りにしたいと言うと、最初はみんなびっくりしていましたが(笑)。 社長室の小さな冷蔵庫には、ビールが入っています。夜8時ぐらいになると、社員が文句を言いに来たり、相談に来たり、よくここでビールを飲みながら話します。私と誰かが話しているのも見られるわけです。 どんなお客様が来ているかというのも見られます。私の経営者仲間が遊びに来ることもありますし、どんな人が来るかというのは見てもらいたいと思っています。 ――ショールームのようなものが入口にあります。 岩本: アフターサービスや品質検査をする技術者の研修をするための設備です。技術を標準化するために、座学と実地研修の勉強会を月に数回行っています。このような設備を社内に備えていることは珍しいため、よくディベロッパーやゼネコンの方が、研修の見学にいらっしゃいます。 ――今後の目標は。 岩本: お客様に喜ばれる業界にしたい。完成時の検査やアフターサービスを弊社がご提供することで、正しい価値をお客様に提供できる業界にしたいと考えています。 そのためには、ITという武器を使うことも必要です。弊社のシステムを業界の標準にしていきたい。さらに新しいシステムを開発し、それをより多くの企業に導入していただけるようにしたい。 また、優秀な人材を採用・教育し、適材適所で活躍できる人材を提供していきたいと考えています。 自動車や家電製品などでは、アフターサービスがしっかりなされていますが、不動産業界は遅れているのが現状です。 ――なぜでしょう。1回買ったお客様はもう買わないから?
岩本:そのとおり。お客様が復讐できないのです。例えばA社のデジカメを買って対応や品質が悪ければ、次はB社の商品を買おうとなりますが、5,000〜6,000万円のマンションを買った人が「A社は対応が悪いから次はB社で」とはいきません。業界がそこにあぐらをかいてしまっているのです。しかし、顧客より自分たちの都合や利益を優先していては、これからの時代、企業は継続できません。 経済行為というのは価値と価格との交換です。正しい価値を提供する代わりにその対価をいただく。このバランスを崩してはいけないのです。マンションも消費者から厳しく選別される時代です。各ディベロッパーは、価格と価値のバランスが取れた商品をお客様へ提供する必要があります。 ――製品だけでは甲乙つけ難いですね。技術的なことは素人にはわからないですし。 岩本: そうですね。どのマンションも、外観や立地の違いはありますが、品質にはほとんど差がありません。ではどこで差別化するかというと、今の時代はサービスです。アフターサービスも含めて商品の価値が決まるのです。 【会計について】 ――月次決算は、毎月何日にできていますか? 岩本: 現在は10日です。これを5日に短縮したいと思っています。 月次決算では部門別会計を行い、社員の評価につなげています。会社の業績もすべて社員にオープンにしています。 ――増資の経緯は。 岩本: 1990年に資本金300万円でスタートし、2000年に資本金1,000万円に増資しました。ここまでは私の出資です。 その後、2004年に資本金3,230万円に増資した際は、友人・知人にも出資していただきました。 ――資金調達の方針は。 岩本: 運転資金はデッド(借入金)で調達し、設備投資はエクイティ(資本金)で調達しています。今後、増資も計画しています。 ――資金調達において大切なことは。 岩本: 株主や銀行に対しての適切なディスクロージャーではないでしょうか。私は、銀行に対しても、年2回必ず自分からアポイントを取り、決算書と事業計画書を持参して報告しています。 【パーソナル情報について】 ――好きな言葉は。 岩本: 「為せば成る」です。 上杉鷹山の歌で「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」は、「伝国の辞」と共に次期藩主に伝えられたものです。上杉鷹山は、江戸時代中期の出羽国米沢藩の藩主で、領地返上寸前の米沢藩再生のきっかけを作った、江戸時代屈指の名君です。
岩本: ゲンダイエージェンシー(JASDAQ)の山本正卓社長です。 パチンコ業界に専門特化した広告会社で、パチンコホールにおける集客戦略の提案から広告の企画制作までをトータルで提供しています。山本社長の「クライアントの業績発展を支援する」という理念や経営に対する考え方について、非常に強い影響を受けています。 ――書棚にビジネス書が沢山並んでいますが、中小企業の社長にオススメの本を是非教えていただけますか。 岩本: 日本電産の永守重信社長の『「人を動かす人」になれ!――すぐやる、必ずやる、出来るまでやる』は、弊社の管理職にも読ませたい一冊です。 楽天の野村克也監督の『野村ノート』もオススメですね。どちらも指導者とはいかにあるべきかについて、多くの示唆を与えてくれます。 ――本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。 岩本: ありがとうございました。 |
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とても気さくでおおらかな岩本社長。バイクのレースでけがをしたのをきっかけに会社を興したり、仕事がなくなったときに経営を勉強しに行くなど、逆境のときに、いかにプラス思考で行動できるかが、その後の運命を切り開くために重要なのだと思いました。ガラス張りの社長室も、社員を想う気持ちがあっての大胆な発想から。お客様や社員を喜ばせたい、業界を変えたいという志を持ち、不動産業界のオピニオンリーダーとして新しいことに挑戦する岩本社長の情熱に、心からエールを贈りたいと思います。 取材:2007/07/18
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