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辛郷孝(しん・きよたか) 波乱に満ちた人生を乗り越え、若い頃から野心に満ち溢れていた。持ち前の強い意志を持って、30歳までに社長になると決め、実行。29歳10カ月のときに起業。「映画も仕事も、感動する場面は、一緒。100%なんてないんだから、だったら、よりスリルのある道を選択した方が面白いじゃないですか。自分が映画の主人公だと思ったら、ピンチもチャンスだと思えるはずです。」ソフトシアターは、感動と変革をテーマに、先進の技術力でソフトウェアの劇場を創造しつづける。 【3つのキーワード】 1.映画も、仕事も、人生も、すべてハッピーエンドでなくてはならない 2.顧客満足、社員満足、家族満足 3.やってみなわからん、やったことしか残らへん 【起業の頃について】 ――起業のきっかけは。
辛:30歳までに独立すると学生の時から決めていました。 1990年に大学の工学部を卒業したのですが、バブルの絶頂期で、不動産業界に勤めたのです(笑)。2年間不動産の営業をして、バブルが崩壊し土地が全然売れなくなりました。そこで初心に戻り、コンピュータ業界で3年間働き、合計5年間サラリーマンをしました。 27歳の時にフリーになり、29歳で今の会社をつくりました。 最初のスタッフは4人、私と学生時代の同級生1人と前の会社の先輩2人でした。お金もなかったので、神田のお米屋さんに間借りしてのスタートでした。 ――ご苦労したことは。 辛: 私が営業し、5人ぐらいで開発するという形で、比較的順調に仕事はありました。ただ、仕事がなくなったときのことを考えると不安ですから、かなり無理に仕事を入れてしまい、徹夜の連続、土日もなしで開発していました。当時、大手町の日経新聞の近くに新聞記者さんたちが行く銭湯があったのですが、そこに夜12時ぐらいに行くのが唯一の楽しみでした(笑)。 しかし、それではやはり体がもちません。ある日、一番年上の31歳の人が急に倒れて、救急車で病院に運ばれたのです。真っ白な顔で点滴を受けている彼の顔を見た時、「ああ、もう自分は経営者失格だな」と思いました。それまでは感覚でやっていたのですが、もっと勉強しないと駄目だ、と。 ――会社が大きくなるきっかけはあったのですか。 辛: 受託開発の売上は、2年半から3年で1億円までいきましたが、このままいってもつまらないということで、自社ブランドのパッケージソフトを開発しました。 2000年に、セルフ型ガソリンスタンドが急激に増えるという記事を読み、セルフ型ではお客さまと店舗スタッフとの接点がまったくなくなってしまうので、そこをITを使って何かできないかと考えました。そこで、お客様がポイントカードを差し込んで給油すると、バーコードで誰がいくらつかったのかが全部わかるシステムを開発し、韓国と日本で特許も取りました。シャープなどに代理店になっていただきました。 しかし、マーケティングがなかったので、財務的にはせっかく積み上げたものがマイナスになり、2期連続赤字という時もありました。その時はキャッシュフローが厳しくなりますので、増資して資本を厚くし、債務超過にだけはしないようにしました。そういう時期もありましたね。 最初の自社パッケージがうまくいかなかったので、そこでマーケティングのことを非常に勉強しました。それまでは、いいものをつくれば売れると思っていたのですが、お客さんのニーズを聞いていくこと、見込み客を集めていくこと、そういうところを学んで、今それを実践しています。 【経営について】 ――経営理念は。
辛:「映画も、仕事も、人生も、すべてハッピーエンドでなくてはならない」。楽しんでやりたいということと、やるからにはみんなの人生もハッピーになってほしいし、仕事もハッピーでありたいということを、大切にしたいと考えています。 『顧客満足、社員満足、家族満足』この3つがないとハッピーではないのです。仕事の質を高め、できるだけ残業はしない。終業は6時ですが、7時ぐらいにはみんな帰ってしまいます。どうしても明日大事なプレゼンをしなければならないという場合などは残ってもいいのですが、誰かが仕事をしていると、私も「早く帰って」といいます。土日も、幹部になればミーティングなどがありますが、基本的には家族で休んでほしい。誕生日はバースデー休暇もあります。 また、弊社では、お客さまの声を大切にしています。お客さまの喜びの声をホームページにアップしたり、月に1回ニュースレターをお送りしています。コンピュータ会社らしくなく、人間らしくいこうと考えています。 ――ちょっと変わった朝礼をなさっているとか。 辛: 月曜日の朝は、『ラインナップ』といって、みんなで輪になり、ラグビーボールや野球ボールやサッカーボールで、キャッチボールをしながら朝礼をするのです(笑)。 社員のアイディアで、ラグビーボールには『オール・フォア・ワン、ワン・フォア・オール』、野球のボールには『熱闘甲子園』などと書いてあります。キャッチボールしながらまず出欠をとったあとに、ボールを持った人が、先週1週間で新しく気付いたことや感動したことを話すのです。「週末、家族と旅行に行きました」「小学生の子どもと映画を見に行きました」など・・・・。そういうものを共有していくので、月曜日の朝から会社が笑いに包まれます。どちらかというとファミリー的な会社です。 ――どんな人に入社してほしいですか。 辛: 家族を大切にする人がいいですね。小さい時の話、小学校の時にどういう子だったかというようなことは面接の時によく聞きます。 新卒で弊社に入りたいという人たちは、弊社の考え方、理念に共感していただいています。 採用のポイントは2つあります。ひとつは、「能力アップ志向」の人。弊社は社長との距離が近いので、自分の成長を早めたいという人には、是非来てほしいです。 もうひとつは、「仕事エンジョイ志向」の人。大企業ですと、仕事とプライベートは分けて、仕事の仲間とはあまり遊びに行かないことが多いようですが、弊社では、土曜日にみんなで集まってバーベキューをしたり、弊社のお客さまでもある大江戸温泉に行ったりしています。仕事を本当に楽しんでやるタイプの人にも来てほしいです。 ――事業内容は。 辛: 情報セキュリティソフトの販売・保守とSE派遣業です。 ウイングさんが開発した『ALLWatcher』と、韓国の製品『DataBlock』、『SpyZero』、『Cocktail』などをセット商品として保守サービスを付け、パッケージとしてお客さまに提案しています。 ビジネスの形としては、インターネットで大手企業を中心に集客をして、まずセキュリティソフトから入ります。 次の提案として、SEを派遣しています。昨日の日経新聞にも載っていましたが、お客さまが今お困りなのは、SE不足です。大手企業では、端末1台が1本として多いところで何千台、何万台というときもあります。そうすると、ソフトを納品するだけではなくて、SEも常駐してほしいとなるのです。最初のころは弊社SEが常駐して、足りない場合は援軍を要請して行っていたのですが、それでも足りないので、今、中国から優秀なSEを採用しています。1カ月間、弊社で研修をし、日本語を話せる方や開発経験のある方がお客様のところに行っています。 【会計について】 ――会計はどのように勉強されてきましたか。 辛: 起業したばかりのころは、お米屋さんの事務員の方に教えてもらい、見よう見まねでやっていました。土曜日になると私が伝票を打って、自分ではしっかり月次決算をしているつもりでした。決算は自分ではできないので、税理士の先生を紹介してもらいました。先生から「想像以上の利益が出ていますよ」と言われてびっくり。 最初は会計を何も知りませんでしたので、いろいろな勉強会に行ったり、本を読んだりしました。まずは、経営計画から勉強しました。経営計画を勉強すると、当然、B/SやP/Lの計画を立てなくてはいけません。しかし、最初のころは、P/Lしか見ていませんでした。 あるとき「P/Lの経営は昭和の経営であり、これからの平成の経営はB/Sの経営だ」ということを読み、これは面白いということで、「B/S経営」とは何かということを、突き詰めていきました。それまでは、人をどんどん入れて、売上が10億円、100億円、社員が100人、200人というのがステータスだと思っていたのです。 今は、1人当たりの粗利益、1人当たりの経常利益、1人当たりの自己資本額ということを意識して経営しています。 ――資金の調達はどうされてきましたか。
辛:設立時の資本金は、私が6割、以前の会社の先輩に4割出資していただき、1,000万円でスタートしました。 その後、経営の師として尊敬している方にも出資していただき、今は5,000万円の資本金になっています。 借り入れは、都市銀行2行ぐらいで競争していただいて、条件のいいところへお願いします。やはり1行だけでは少し不安ですね。 創業した時は、そういうことを全然知りませんでした。信用金庫で言われるままに、会社と個人で積み金をして、運転資金がまわらなくなるとその分借り入れて・・・・・。気付いたら借入4,000万円で積み金4,000万円にもなっていました。どう考えても金利が高いので解約しようとしたのですが、なかなか解約させてもらえずに、その時は随分もめました。 そうしたこともあり、銀行も3行か4行お付き合いさせていただいて、それぞれに分散させたほうがいいと思いました。 【パーソナル情報について】 ――好きな言葉は。 辛: 『挑戦』という言葉が好きです。何かに挑戦して達成した時に、仲間と一緒にそれを共有できることは、何物にも代えがたい喜びです。 社員には、「まずはやってみよう。失敗してもまた次にチャレンジすればいいじゃないか」と言っています。われわれは起業家ですから、100%成功することを望んでいません。失敗よりも成功が1つでも多ければ、それは成功なのです。30失敗しても、得るものが100あれば、100マイナス30で70です。
辛: そうですね。私は新規事業をするときに「300万円損してもいいですよ」と言うのです。その人よりも実力のない人であれば「あなたは500万円損してもいいですよ、ちょっとやってみてください」と言うのです。それぐらい失敗しても、そのノウハウはたまるので、次に活かしてもらえればいい。今の弊社の規模では300万円、500万円ですが、将来は「あなた、3億円失敗してもいいですよ」と言えるくらいになってみたい(笑)。それぐらい器の大きい経営者になりたいですね。 ――尊敬する人は。 辛: 歴史上の人物では、劉邦が好きです。周りに優秀な人たちが寄ってくるような、徳のある人になりたいと思っています。 経営者では、ソフトバンクの孫さんも好きです。 身近な方で私が最も尊敬している師匠は、アーバンベネフィットの木村勝男会長です。不動産会社の経営で、バブルの時に50歳で230億円の借金を抱えたのです。しかし「よし頑張ろう。230億円を20年間で返済しよう。今の意思を忘れないように体を鍛えなあかん」と、登山を1,000回やると決めて達成し、借金も全部返済しました。「やってみなわからん。やったことしか残らへん」というのが信条で、生き方がすごく格好いいのです。 ある時、「香港の会社を見に行こうや、辛君」と誘ってくださり、ほどなくして私の自宅に、私と妻の2人分の航空券とホテルのチケットが届いたのです。行きの飛行機の中で、「辛君な、宿題があるで」「何ですか」と聞くと、「それはな、楽しむことや」と。本当に、男として格好いい。私は非常に影響を受けています。 ――身近に尊敬できる師匠がいるのは恵まれていますね。最後に、中小企業の社長さんにお薦めの本を教えてください。 辛: 戦略では、ヤマト運輸の小倉昌男さんが書かれた『経営学』です。 マーケティングでは、神田昌典さんの『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』がいいですね。 最近読んだ本でいいなと思ってスタッフにも読ませようと思ったのは、ソフトバンクインベストメントの北尾吉孝さんの『何のために働くのか』。これはすごくいいと思いました。 木村勝男さんの『逆境にまさる師なし』も、是非読んでみてください。先ほど私がお話ししたことが、とても感動的に書いてあります。 ――あっという間に時間になってしまいました。今日は本当に楽しいお話をありがとうございました。 辛: こちらこそありがとうございました。 |
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取材後、会社説明会のプロモーションビデオも見せていただきました。辛社長の経営への情熱と、社員の方への愛情が一杯つまっていて、とても感動的でした。木村勝男氏の著書『逆境にまさる師なし』のサイン本まで頂戴し、早速、拝読させていただきました。 木村氏は、父の死によって、母・4人の妹弟たちとともに極貧の環境の中で育ちます。『父は自分の死と引き換えに「貧困、苦労、困難」という3人の師をつけて私が成長する舞台を与えてくれたのではないか』。次々に襲いかかる苦難に、常に正面から立ち向かってきた木村氏の生き方に触れ、神様はその人に解決できるだけの大きさの試練をお与えになるのだなと思いました。 取材:2007/05/30
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