![]() |
|||||||||
|
日下部耐史(くさかべ・つよし) 1968年生まれ。大学院卒業後、NEC−HEに入社。PC開発事業を経て、商品企画、宣伝広報、販売戦略を事業部で一手に担った。NECモバイルスキャナの海外立ち上げ後、同社同期の友人と共にインターネットブロードバンドにフォーカスを合わせた事業の立ち上げを決意。2000年8月、シーエムジャパン株式会社設立。テレビCMのコマーシャル要素とクリエイティブ、エンターテイメント要素の両側面に着目して、顧客と広告主のコミュニケーション手段を提供する。父が経営する電気店を幼い頃から手伝い起業家精神が培われた。 【3つのキーワード】 1.新しいことで市場に一石を投じたい 2.ブロードバンドにおけるソリューションをワンストップで 3.数より質の応援団を増やす 【起業の頃について】 ――起業のきっかけは。
日下部:父が電気店を経営しており、学生の頃から何かで起業して社会に貢献できないかと考えていました。卒業後は電気メーカーに7年間勤務しました。その頃ブロードバンド市場が立ち上がろうとしており、「人生は一度しかない、悔いを残したくない。」と思い、31歳のとき独立しました。多くの起業家は、勤務していた会社の業務で起業するケースが多いのですが、我々の場合は真っ白なところから始めました。ブロードバンド市場でどんなサービスをやるかというところも一から考えて構築していきました。 ブロードバンドの特長は「高速大容量」「常時接続」「定額制」です。その中で我々の強みは、映像、なかでもコマーシャルに着目しました。私たちが身近に接するものにテレビがあります。テレビ番組は制作できないが、コマーシャルならば、企業もコマーシャルをインターネットで露出したいというニーズがあるのではないかと感じました。 もう一つは、面白いコマーシャル、心を和ませるコマーシャル、何回でも見たいコマーシャルと出会ったということもあります。ブロードバンドの環境になれば、いつでも好きなときにそのコマーシャルが何度でも視聴できるということから、コマーシャル映像をベースに事業を展開したのがはじまりです。 ――最初は何人でスタートしたのですか。苦労したことは? 日下部: 2人です。一緒にいた会社の同期でした。がむしゃらにやっていたので、特に苦労というのは感じませんでした。何が苦労だったか、あまり思い付きません。 新しいことをやろう、市場に一石を投じてやろうという気持ちを持っていたので、苦労というより逆に楽しかったですね。楽しいことばかりだったような気がします。 ――資金に関してはいかがでしたか。 日下部: もうかるまでは2人とも手弁当でやりました。お金よりも、事業に対する思い入れが強く、別にぜいたくな暮らしをしたり、遊びにお金を費やすこともなかったので、特に困ることはなかったように思います。前職の会社で蓄えたものもありましたし。 そのあとは投資家の方にも出資していただきましたので、特に起業時にお金に困ったことはないですね。 ――人の採用などはいかがでしたか。 日下部: 人のほうが大変でした。優秀な人材は重要ですが、その人を探すのがまず大変でした。システム開発ができるメンバー、コマーシャルのマーケッター、営業も必要になってくるのですが、人を集めるというところでは苦労しましたね。 ――良い人材を集めるためには。
日下部:面白い、魅力的なビジョンを示すことではないでしょうか。知り合った方に「一緒にやりたい」と共感を持ってもらえるよう、一生懸命に説明しました。 ――会社が大きくなるきっかけになったことは何かありましたか。 日下部: 一つのきっかけはヤフーBBです。ヤフーBBが定額・低価格料金でブロードバンドサービスを提供したことによりブロードバンドユーザーが一気に増えたのです。企業もインターネットで映像配信をしはじめ、市場が拡大しました。 もう一つは、コマーシャル配信で大手企業2社の受注が決まり、それが後押しをしてくれて順調に事業が拡大しました。 やはり市場が伸びていく過程を示せないと、いくら提案しても企業はついてきてくれません。まずインフラが整って、ユーザーが増えてはじめて企業がサービスを提供できます。サービスについても、まずは身近なところではじめて、そのあと動画広告、高度なブロードバンドにおけるサービスを提供し始めるという、その流れにうまく乗れたのではないかと思います。 ――選んだ市場がよかったのですね。 日下部: ブロードバンド市場を選んだのはよかったと思います。ただ思ったより市場の伸びが遅かったのです。ですから、ヤフーBBの低価格戦略は、われわれにとっても、ブロードバンドのビジネスを展開する会社にとっても非常に後押しをしてくれたと思います。 【経営について】 ――現在の事業内容について教えてください。 日下部: 当社はブロードバンドにおけるソリューションを提供している会社です。具体的には、映像の制作、動画の配信、その周辺のウェブサイトの制作、動画広告をワンストップで提供しています。 ――どれが一番中心ですか。 日下部: 動画配信です。テレビコマーシャルなどの映像は既につくられているものが多いのですが、それを配信するというニーズが非常に高まってきています。そのニーズに対応したことで、動画配信が伸びています。 次に映像の制作が伸びています。インターネット向けに映像をつくって配信するものです。今までは文字や画像で商品を訴求していましたが、「百聞は一見にしかず」で、映像で訴求していくことによって、相手によりわかりやすく内容を伝えることができるのです。 もう一つは、ショートムービーです。 ――ショートムービーとは。 日下部: ネットドラマなどです。ある商品を訴求するときに、ただその商品を単純に説明するだけではなく、ドラマや映画の中で作品と対応しながらうまくその商品を伝えていくということが今はやってきています。「プロダクトプレイスメント」のような映像の制作が徐々に伸びつつあります。
――提案で気をつけていることはありますか。日下部: お客様のニーズをしっかりと把握しながら、インターネットならではの提案をすることです。相手の伝えたいメッセージとインターネットの特徴を生かした映像との融合が大切です。 また、映像とインターネットのシステムを連動してさまざまな仕掛けができます。さらに、テレビ、新聞、雑誌との連動という提案もします。 ――最近、テレビコマーシャルでも、インターネットでのキーワード検索を促す広告がとても増えていますね。 日下部: テレビの特性は、万人にリーチする広告メッセージを届けるのが目的ですが、その中で興味がある人だけインターネットでキーワード検索してもらう。「クロスメディアマーケティング」と言います。 ――今後はどのようなことをやっていきたいですか。 日下部: インターネット放送局のようなこともやってみたいですね。 ブログやSNSの次は映像での発信、『YouTube』のような動画共有サイトです。そのもう一つ先が、「放送局」ではないかと考えています。つまり、パーソナル間の映像発信ではなく、パーソナルからマスへ、あるいは企業からマスへの映像発信ができると思っています。現在はつくられた映像といいますか、コマーシャルやIRの映像を発信していますが、そうではなく、広報部が常に情報を映像で発信するというようなことも、ブロードバンドを使えばできるのです。そうした企業やパーソナルでのインターネット放送局の可能性を検討しています。 ――マネジメントについても伺いたいのですが、採用の方針は。 日下部: 「健康であること」が第一条件です。次に「情熱を持ってやれる人」。そして業界とは直接関係ないことでもいいので、何らかの「専門性を持っていること」です。 採用面接の時は、健康かどうかと、どんなことを実現してみたいかを聞きます。その内容が当社の方向性と合って、かつ情熱を持ってその仕事に取り組むことができるかが採用のポイントです。また、能力や今までの仕事での実績も考慮に入れます。 ――評価はどのようにしていますか。 日下部: 業績評価と行動評価です。 営業は、売上とプロセス(行動評価)の2本立てです。 開発は、どんな新しいものをつくったか、ルーチン業務についてはどれだけの量をこなしたか、業務態度(上司とのホウレンソウはしっかりできているか)などが評価の対象になります。 ――外部の専門家をどのように活用していますか。 日下部: 中小企業基盤整備機構から、内部体制の強化について指導していただき、従業員規則や稟議書などの業務体制・管理体制資料をつくっています。 また、公認会計士さんと弁護士さんもお願いしています。社外取締役の方にも営業開拓していただいたりしています。外部との連携は、結構密にしていますね。 【会計・財務について】 ――何度か増資されていますが、資金調達するのに何が大切でしょうか。
日下部:まずは、自分たちのビジネスに対する情熱が重要だと思います。 それにプラスして、「応援団を増やすこと」でしょうか。われわれの会社を応援してくださる方を増やしていく。それも数ではなく、「質」のほうで増やしていくことが大切ではないかと思います。 弊社の取締役や顧問の方々には、偶然の出会いから意思疎通した方や、「応援しましょう」と声を掛けていただいた方がいらっしゃいます。 ――社長のお人柄もあるのでしょうね。 日下部: ただ運がよかっただけかなと思います。 出会いって重要ですね。素晴らしい方との出会いがあり、かつその方が応援してくださるという、いい流れがありました。その方がまたいろいろな方を紹介してくださって、それで資金調達ができたこともありました。応援団を自らつくるということも大切ですが、つくったらその方としっかりコミュニケーションをとりながら関係を強化していくことが重要だと思います。 【パーソナル情報について】 ――好きな言葉は何ですか。 日下部: 「創造」「社会貢献」という言葉が好きです。 「ブロードバンドコミュニケーションの創造と社会貢献」が、われわれの企業理念です。ないものから新しいものをつくっていくこと、それを通じて社会に貢献していくこと。この2つは常に心掛けていることです。 ――尊敬する人は。 日下部: 当社の社外取締役に佐々木という者がおり、とても尊敬できる人です。状況判断が瞬時にできて瞬時にジャッジを下すのです。まず状況を把握してジャッジして指示するということが、ぱーっとできる。あの素早さというのは学ぶべきところがあると思っています。また、周りを巻き込むのが上手なところ、性格を自分でコントロールできるところなど、見習いたいと思います。 ――身近に尊敬できる方がいらっしゃるのは大変恵まれていますね。 日下部: ええ。反面教師になる部分もありますが(笑)。 ――最後に、中小企業の社長にお薦めの本があれば教えてください。
日下部:『水煮三国志』です。これも佐々木から教えてもらいました。 三国志には、ご存知のとおり、劉備玄徳、諸葛孔明、関羽、張飛などが出てきますが、この本は、いわば「現代版三国志」といったところです。劉備玄徳が、大学生から社会人になり、起業して会社を経営していく中で他社との闘争があり……といったことを、コミカルに描いた作品です。最近読んだ本の中では、とても面白かったですよ。 ――今日は、ありがとうございました。 日下部: こちらこそありがとうございました。 |
||||||||
|
「起業のころ苦労したことはあまり覚えていない。楽しいことばかりだった。」と振り返る日下部社長。そのプラス思考と事業への情熱が、成長の源泉ではないかと思います。また、出会いを大切にし、素直に、そして貪欲に師から学ぶ姿勢があるからこそ、多くの方の応援が得られているのではないでしょうか。これからも、新ブロードバンド時代における創造性にあふれるサービスを私たちに提供しつづけてくださいね。 取材:2007/01/16
|
||||||||