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堀部基至(ほりべ・もとゆき) 1971年生まれ。京都府出身。高校を卒業してから電機部品メーカーでプリント基板の営業を専門に行う。営業で大手メーカーに出入りしているときに現在の会社のアイデアを温めていた。2001年3月、勤めていた会社と同業のプリント基板メーカーとして有限会社アレイを設立。2001年12月に株式会社アレイに組織変更。スピードの速さを売りものに、設立当初から連続の増収増益で推移しており、バイバイゲームに近い成長を遂げている。 【3つのキーワード】 1.品質へのこだわりからISO9001を取得 2.強みは「超短納期」と「ワンストップ」 3.節税より利益を出すことが、有利な資金調達を可能に
【起業の頃について】――起業のきっかけは。 堀部: プリント基板の製造メーカーに約9年間勤めた後、29歳で独立しました。お客様のあと押しも頂き、また組織の中で営業するよりも、自分で自由に思い切って営業してみたいという思いから独立しました。 私と営業1人と経理事務の飯島の3名で始めました。当初から会社として成長していきたいという思いがあり、本当は自宅の一室からでもよかったのですが、10畳ほどの事務所も借りました。私たちが営業でいないときも、飯島に会社で留守番をしてもらっていました。最初はやることがなかったのですが(笑)。 ――少人数で始めて実績も名前も信用もない。ご苦労されたことは。 堀部: 1年間、決算するまでは銀行はお金を貸してくれないですね。 ――普通は2期終わらないと駄目だと言われてしまいますね。 堀部: ですからそこまでの資金繰りは結構苦しかったですね。 営業力があったので仕事は取れたのですが、喜んでいる場合ではなく、お客さまにお金を頂く前に、仕入先の工場に作ってもらうのにお金を出さなければいけない。幸い1年目でいい決算ができたので、1年目で借りることができました。 ――最初は人を採用するのも大変ではないですか。なかなか小さい会社へ来てくれませんね。 堀部: はい、募集を出すと10数名から面接予約は入るのですが、すっぽかしが多かった。事務所もぼろかったので、おそらく外観を見て途中で帰っていくのではと・・・(笑)。 ――他にはどのようなご苦労がありましたか。 堀部: 1年目でしたか、少し基板の不具合が重なったことがあります。やはり物づくりなのでそういった事とは背中合わせなのですが、不具合時の対応こそ、会社としての姿勢が問われることを勉強しました。 半分笑い話ですが、3人で「神頼みしかない」と言って、近くの神社にお祓いに行ったりしました。
――会社が飛躍するきっかけになったことはありますか。堀部: 第一には、一つ一つの仕事を丁寧に、信頼を積み重ねてきたことではないでしょうか。うちのような会社に仕事を出していただけることを本当にありがたいと思って、一つ一つ心を込めてお客様に納めていったことで、お客様が1社1社増え、現在では約250社もの会社とお取り引きいただいております。 第二に、まだ社員が10名足らずのときにISO9001を取得したことです。当時、設立3年目ぐらいで取るのは珍しいと言われました。 ISOを取得していたおかげで、会社が小さくて歴史はなくても、大手から「取引しましょう」と言ってくださることもありました。 【経営について】 ――現在の事業について教えてください。プリント基板というのはどのようなものでしょうか。 堀部: 例えば、最先端のロボットや、携帯電話の中身などを開発するところのお手伝いです。新しい機能などをお客様である開発者の方が回路設計します。弊社でそれをプリント基板に落とし込む設計をしたり、開発品も作っています。 エレクトロニクスの分野では開発競争です。他社より早く世界で最軽量の製品を開発して一日も早く発表したい。短納期で量が少ないところを、弊社が小回りを利かせてお手伝いしています。量産品となると海外に出てしまいますが、その開発段階において、日本で最先端の技術にも高品質で応えることで、顧客を着実に増やしているところです。 ――すると一番の強みは短納期ですか。 堀部: はい。強みは「超短納期」と「ワンストップ」です。 プリント基板の設計だけ行う、基板だけ作るという会社はたくさんありますが、これを全部一貫して、設計から半導体をはんだ付けするところまでトータルで、しかも超短納期でできることです。 開発の方も、弊社1社ですべて打ち合わせが済んでしまいますので、非常に喜ばれますね。 ――なぜそんなに早くできるのですか。 堀部: 超短納期の理由は、弊社の持つネットワークです。 弊社で設計をし、もの作りは約300社の協力会社の工場を組み合わせることで、短納期が実現できるのです。土曜日も隔週で営業する会社を組み合わせることで、1ヶ月中ほとんどの土曜日が稼動できます。 ――そのネットワークはどのように作ったのですか。 堀部: 9年間この業界にいたので、町工場の社長などの知り合いがいました。そこから協力者を得て徐々に増やしていきました。 プリント基板は最先端ですが、結構古く、どちらかというと打ち合わせに来るのは年季の入ったおじさんの営業マンという業界です。 弊社のような若い会社は珍しく、若さや新鮮さをアピールしています。この業界は今ちょうど世代交代の時期なので、うまく波に乗って着実に成長していければと考えています。
――現在年商は。堀部: 約5億円です。 ――これからやっていきたいことは。 堀部: まずは2〜3年でこの分野で年商10億円にしたい。将来的にはいろいろなビジネスを広げていきたいと思っています。 ――経営理念は。 堀部: 「品質にこだわる」、品質で顧客との信頼関係を築くことです。 早く作る、トータルでやれるというのは確かに差別化要因ですが、すべてはしっかりした品質でもの作りができなければ顧客との本当の信頼関係はないと、最近強く感じています。 ――社長の考えを社員の方にどのように伝えていますか。 堀部: まだ25人なので、朝礼で言ったり、部署ごとのミーティングに出たりといったことで今のところは間に合っています。ちょっと声を掛けるなどのコミュニケーションは取るようにしています。 ――社員の方にはどのようなことを求めますか。 堀部: 面接のときは目標達成意欲を見ます。スポーツでも何でも過去に目標を持ってチャレンジした人はいいですね。 あとはコミュニケーションを取れる人。会社でも、毎年社員旅行に行ったり、時々飲み会を開いたりコミュニケーションの場を設けて積極的に参加してもらうよう努力をしています。 ――評価はどのようにしていますか。 堀部: 現在は、社長と社員のコミュニケーションとして、「会社はあなたにこういうことを望んでいます」という面談を四半期ごとに行っています。それが直接賞与や昇給の評価に100%は結び付きませんが、かなり参考になっています。 評価制度も、いくつも検討して発注手前までいったこともあるのですが、弊社に合う評価システムを模索中といったところです。 ――外部の専門家の方をどう活用していますか。
飯島(取締役管理部長):給与面など、社内で見えてはいけないものは外部へアウトソースしています。 ――会計事務所にどのようなことを求めますか。 堀部: 1年目から利益が出てしまい、はじめは経営がよくわからないので、周りの社長にうまく節税していると聞き、そこを最初は期待していました。ところが公認会計士の先生は、まじめでグレーの部分をやりません。そこを不満に思っていた時期もありました。 しかし今では、きれいに正しく申告してきてよかったと思っています。というのは、しっかり利益を出して成長を見せていくと、銀行がちゃんとこちらを向いてくれて、必要なときにお金を貸してくれるのです。ですから、ちょっとした税金を減らすために変な節税を無理にやってこなくて、きちんと税金を払ってきてよかったと思うのです。 ――是非、中小企業の社長さんに聞かせたい(笑)。 堀部: それは本当に思います。変にその時だけの税金を抑えたいと思う考えは間違いです。会社は長く存続したいではないですか。その場だけ見ると(税金は)払いたくないですが、長期で考えれば着実に利益を積んでいくのが大切です。 飯島: 先生からはいつも、「決算書は税金を払いたくないために作るものではない。外部から見るものは決算書しかないのだから、それは自分の成績表だと思ってつけていきましょう」ということをご指導いただいていました。 堀部: 一時反抗したときもあるのです。あまりにも融通が利かないのでもう会計事務所を変えようかと(笑)。しかし先生の指導は今思えば正しかった。 ――堀部社長のように「会社を成長させて大きくしていきたい」という社長さんと、「いや会社はそこそこでいいから節税して個人で蓄財したい」という社長さんがいらっしゃるにもかかわらず、ほとんどの会計事務所が、「お客さんは節税したいものだ」と決めつけてしまうのが間違いだと思うのです。 会計にしても、「決算書と申告書ができました、ハンコください」で毎年終わらせてしまうから、会社を10年20年経営しているのに、自分の会社の決算書も読めない社長さんが大勢います。これは会計事務所の責任だと思います。 堀部: そこは大事ですね。私たちも知らなかったから教えてもらって。今はもう本当に重要なパートナーです。 ――いい先生に巡り合えてよかったですね。 【会計・財務について】 ――今年、増資していますね。IPOを視野に入れてですか。 堀部: 増資の時点ではIPOは結構意識していました。しかし、監査法人の勉強会に行ったり、いろいろと勉強してきて、正直に言って今は迷っているところです。メリットもあればデメリットもある。現時点では、簡単に目指すとは言い切れません。
――デメリットは何ですか。堀部: 短い間での成長を見られます。大きい流れで3年後に飛躍しようというのは認められない。特に新興市場では四半期ごとに情報を開示して、利益も出さないと厳しいところがあります。 また、まだ小さい組織の中で、人事と総務を分けなければいけない、経理と財務を分けなければいけない、監査役も常駐させて・・・と、本業以外の部分の管理が大変です。25人で5〜6人もの人を管理部門に入れるのは、今の段階では早いのではないかと思っているところです。 さらに、今まで着実に利益を出してきたので、銀行からかなりいい条件でお金を貸してもらえるのです。 ――今まで毎期増収増益ですか。 堀部: はい、5期連続増収です。資金調達は銀行融資で十分で、それ以上に今やりたいことで大きいお金の必要性がないのも事実です。 【パーソナル情報について】 ――好きな言葉はありますか。 堀部: ポジティブに、未来に行くためにこそ、今を一生懸命、今を大切に生きるということを最近感じています。 私の性格は結構慎重派で固いほうです。違うタイプの経営者の方からは、「経営者は開き直りと思い切りもいる」ということを教えていただいたりもしますが、私は慎重にコツコツ来たタイプなので、そういうことは言えません。 しかし将来のために、今を大切に、今を一生懸命生きたい。もちろん経営者ですから先のことを考えなければいけませんが、あまり手に届かないような先のことを考えてエネルギーを使うより、今を着実に、今を大切にといったことを最近は思っています。 ――尊敬する人は。 堀部: 『社長失格』の著者の板倉雄一郎さんです。以前、弊社に講義に来ていただいたことがあります。 板倉さんは、それまで世の中になかったまったく新しい仕組みを考えました。一方、私は世の中に存在するものを着実に売ってきました。自分とまったく違ったタイプの天才的なアイデアを持っているところを尊敬しています。 ――そうした研修を定期的にやっていらっしゃるのですか。 堀部: いろいろな方を招いて従業員のレベルアップや意識改革などに積極的に取り組んでいます。カリスマコンサルタントで大阪の国吉拡さんにも何回か来ていただきました。外部の方の話を聞くと、結構火がつくのです(笑)。営業もまた頑張ろうと。そういうことには結構お金を使っていますね。 ――昨年、人材投資促進税制というのもできました。社員教育にお金を遣った場合には税金が安くなりますから、是非。 堀部: それは勉強しなければいけないですね。
――中小企業の社長さんにお薦めの本をお聞きしているのですが。 堀部: この本は具体的で面白かったですね。経営コンサルタントの石原明さんの『社長、「小さい会社」のままじゃダメなんです!』。 会社を着実に大きくする方法が、わかりやすく具体的に書いてあります。例えば「利益が出たら最初に遣うのは広告宣伝費だ」など。もっと早く、起業したてのころにこの本に出会っていたらよかったのにと思いました。 【マーケティングについて】 堀部: 今やり方を変えようとしています。今までは営業個人で売ってきましたが、それだけではキャパがあります。組織で売る、マーケティングを会社として勉強しています。最近はメルマガを発行したり・・・。 飯島: 今回3回目になるのですが、2500件ぐらい配信しています。コンサルタントの先生に文章も見ていただいています。 堀部: 限られた人数で売上を伸ばすために営業企画部をつくりました。飯島にリーダーをしてもらっています。24〜25人のうち3人の営業企画、マーケティングに人を費やして、しかも優秀な女性3人で。 ![]() ――今はどんなことをしているのですか。 飯島: 年に4回ほど大きいエレクトロニクスのショーがあるのですが、その出展の企画もしています。今度12月と1月に、ビッグサイトと幕張で行われるショーに出展します。 堀部: 会社案内も作りました、ちょっとこういう業界では珍しいんですよ。 ――まあ、ファッション業界のような会社案内ですね。これも女性3人で企画なさったのですか。おしゃれですね。 飯島: 基板業界は古い業界なのでそのイメージを変えたい。弊社の若さをアピールしつつ、やることはきちんとやって、同じものがしっかりとできる。そして売り方や見せ方がちょっと違う、というところを目指しています。 堀部: 女性の感性を大事にしています。基板業界というのは、結構おじさんのイメージがあるので(笑)。 ――今日は本当にありがとうございました。 堀部: ありがとうございました。 |
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堀部社長の誠実で温かいお人柄と、お客様にも社員にも真剣に向き合う姿勢に、経営者として大切なことは何かを改めて教わりました。節税よりも毎期利益を出して税金を納めてきてよかった、というお話しが印象的でした。お客様の開発現場のさまざまな悩みを解決する頼もしいパートナーとして、これからも発展されることを楽しみにしています。 創業時から社長を支え続けてきた飯島さんは、明るく前向きに仕事を楽しんでいる、笑顔がとても素敵な女性でした。 取材:2006/11/08
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