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松本享(まつもと・あきら) 1976年生まれ。長崎県出身。福井大学大学院工学研究科在学中の2000年5月に、研究室の仲間とソフト開発会社「有限会社シャフト」を設立。現在は、「株式会社プログラミングファスト」と社名変更。創業以来、iモード等の携帯電話に特化したウェブシステム開発を専門に取り組む。モバイル対応のネットキャンペーンシステムでは、国内有名メーカーによる採用実績も豊富。2004年からはeコマース分野とインターネットリサーチ分野にも力を入れている。 【3つのキーワード】 1.確かな技術力と紹介で着実に成長 2.モバイルリサーチがマーケティングの常識を変える! 3.師の教えを素直に守る 【起業の頃について】 ――学生の時に福井で起業されたそうですが、起業のきっかけは。
松本:昔から商売に興味があって、ソフトをつくることも好きでしたので、大学で気の合う仲間3人で始めました。設立時、地元のホームページ制作会社サーフボードの田嶋社長と、上坂経営センターの上坂先生の2人が出資してくださいました。ただソフトをつくるのが好きで始めたので、それ以外は何も決まっていない状況でした。 一つやりたいと思ったことは、自分たちで考えたアイデアを実現して、インターネットの世界で何か仕掛けをすることです。いくつかアイデアがあった中で実際にやってみました。しかしそれだけではお金がすぐには入ってこないので、ホームページの検索システムなどの受託開発を合わせてやっていました。 ――起業のころに一番苦労されたことは。 松本: 社会経験なしでスタートして商売の仕組みすらわかっていなかったので、請求書の出し方や書式、お金をもらうまでのやりとりなどを全然知りませんでした。会社をつくる本には会社のつくり方は書いてあるのですが、請求書はこうつくろうと書かれていませんから(笑)。その辺りは戸惑いましたが、それでもそういうことを一つ一つやっていくのは面白かったです。 悩んだことは、売上がなかなか上がらなかったことです。頼まれたものだけやるというのは楽ですが、自分たちでこういうものをつくって売ろうというのは難しかったです。資金もいりますし、やはり営業や宣伝ですね。あとはそもそもニーズに合っているかどうかという根本的な問題があります。 会社を始めて半年ほどたって、単に「ソフトをつくります、ホームページをつくります」では弱い気がしたので、とにかく携帯のほうをやろうと決めました。テーマを設定してやりましたが、福井ではその当時携帯システムのニーズがありませんでした。それでほとんど収入もないまま1年ほど過ごして、だいぶ焦りました。それが一番の苦労ではないでしょうか。 ――そこから飛躍するきっかけは何かあったのですか。 松本: そこで判断したのは、福井を市場と考えてその市場のニーズに合うものをつくるか、モバイルのシステムをやりたいのであれば需要があるところに行くかしかありません。私が選んだのは東京に行くことでした。東京であればニーズがあるだろうと、自分たちがやりたいことを選びました。3人のうち私1人で東京に出てきて、ほとんど毎週行ったり来たりしながら東京で営業活動をして、それでだいぶよくなりました。 ――学校は?(笑)。 松本: 創業1年目で大学院は卒業しました。本格的に東京に行き出したのが2年目でしたので、卒業してから東京に出てきました。 ――東京に来られていかがでしたか。 松本: いろいろな仕事があるのだと思いました(笑)。 営業については特に宣伝をしたわけではなく、いろいろな人付き合いをしている間にどんどん自分たちの得意なところの仕事の話が出てきました。それで軌道に乗ってきて、自分たちのやりたいことと実際に提供できているものがだんだんそろってきた感じです。 ただ東京と福井の往復で、交通費がかかりましたね。最初のころは夜行バスで移動したり(笑)。新幹線の半額ですから。 ――そうした苦労もなさりながら少しずつお客さまを増やされて。 松本: お客様の紹介でまた新しいお客様が増え、地道に大きくなってきたような感じです。いまだにマーケティングや広報は下手で、新規のお客さまを集めるのは苦手です。長年お付き合いいただいているお客さまからご紹介していただくケースが多く、そういうお客さまをやはり優先しています。 ――起業のころ失敗したことは。 松本: 一番つらかったのは、創業メンバーが2人いなくなったことです。最初からこれをやる会社だと決めて始めたわけではなく、何かやりたくて集まってスタートしたものですから、会社としてやることを統一していこうというなかで、3人の意志を合わせられず、残念ながら別れました。お金の苦労よりも、いつも苦しむのはそういうコミュニケーション的な問題です。そのあとも友達の集まり、個人事業主の集まりということをあまり脱却できない状態が続いたところが苦労です。 大失敗というのはありません。そういう意味では保守的で思い切ったこともやりませんね(笑)。 ![]() 【経営について】 ――現在の事業の内容を教えてください。 松本: ソフト会社で、ジャンルはウェブシステムです。自社製品のASPサービスと受託開発をやっています。ホームページのデザインではなく仕組みのほうをつくるのが得意です。特に携帯については、iモードの登場当初から手掛けています。 ――1番目の『キャンウェブ』とは? 松本: 携帯電話で応募できる企業のキャンペーンサイトをつくる仕組みを提供しています。 缶コーヒーなどに貼ったシールに番号が書いてあって抽選に応募できたりその場でプレゼントが当たる仕組みを構築して提供するものです。メーカーの商品は1個1個違いますから、それに合わせて見た目や流れも変えたり、取る情報も変えたりして、非常に短期間でシステムを構築します。そうしたキャンペーンは主に広告代理店などが企画をしています。彼らはいつも忙しくて寝ないでやっています。いつも慌てているのです(笑)。そのニーズにはまるような体制でやっています。 ――「こういうのを4〜5日でつくってよ」という感じですか。 松本: そうです。時間がないが日にちは決まっている、もうCMは流れていますという(笑)。 ――2番目の『モバイル・ビズ』は。 松本: 携帯サイトをつくるためのサーバーと管理ツールを貸すASPサービスです。 レンタルサーバー機能に加え、画面を編集するツールが付いています。タグやHTMLを知らなくても、打ち込んでいくだけで携帯サイトのページがつくれます。 ――ではホームページビルダーが使える人ならOKですね。 松本: そういうイメージです。ホームページビルダーの携帯版がレンタルサーバーとセットになっている感じです。 ――今、ASPでシステムを提供しようというのが増えていますね。 松本: そうですね。私の創業当時は第1次ASPブームのような感じでした。その時、2000年ごろでしたが、大体世の中のASPサービスは全部駄目だとか(笑)。融通が利かないのはいけないらしく、ASPサービスは思ったほど普及しませんでした。 今は第2次ASPブームになっています。以前より融通が利くような、ウェブ2.0に対応させてカスタマイズや連携ができる機能が付いてきており、ウェブ2.0ブームと共にまたASPブームが到来しています。 ――3番目の『KARAKURI』は。
松本:携帯システム用の変換エンジンを開発者向けに販売しているものです。 携帯のシステムをつくるときは、各キャリアの仕様が微妙に違っていて、HTMLの仕様も少しずつ違います。それを3つとも見せようと思うと少しずつ違うものを3つ書いてサーバーに別のファイルとしてアップしなければいけないわけです。 この『KARAKURII』を使うと、微妙な違いは共通記号で置き換えて共通化し、携帯からアクセスがあったときにそれが何であるか自動的に判別して表示できます。iモードとezウェブと別々に書いてくださいというと不親切なので、1個つくると全部で見られるようにつくれるというわけです。 『キャンウェブ』の場合も、キャンペーンサイトを5日でつくらないといけないわけですから、なるべく手間数が少ないほうがいいのです。 ――では自分のためにつくったという感じですか。 松本: 自分たちのためにつくっていたものを、この部分だけでも売れるのではないかと、抜き出して使いやすくして発売したものです。 ――販売してみてやはりそういうニーズはありましたか。 松本: ぼちぼちです。あまり広くマーケティングをしないので(笑)。自分たちで使っていて満足だから、わかってくれる人だけ買ってくれればいいという感じはあります。 ――これから伸ばしていく商品は。 松本: インターネットリサーチ業界向けの仕組みで、携帯で消費者調査ができるシステムです。今までは特定の取引先への独占ライセンスとしていたのですが、今後パッケージ化して販売していきます。 携帯でアンケートを取るときに写真も撮って送ってもらうという、新しいモバイルリサーチ手法です。例えば、今日食べたランチや、部屋の様子などを、消費者に写真で送ってもらうわけです。そうすると、文字だけよりも画像からより多くの情報を瞬時に得ることができます。今これに力を入れているところです。 ――マネジメントについても伺いたいのですが。社員は何人ですか。 松本: 24人です。東京が11人、福井が13人です。 ――採用はどのようにしていますか。 松本: 福井のほうは、知り合いの紹介に頼っています。いろいろと試した中で、結局それが一番うまくいっているようです。 ウェブ系の割と華やかな仕事で、大きなメーカーのサイトをつくっていますので、そういう点で魅力的に思ってもらえるようです。あとは、会社だか何だかよくわからないような、大学の研究室のような雰囲気でしょうか。上司から何か命令されるとか、怒られるとか、そういうところではないです。 ――では逆に、自分でエンジンを積んでいる人でないと。 松本: はい。失敗したときも、3人ぐらいで組んでいてやって失敗するわけですから、責任の所在というのはあります。上の人が「おまえが悪い」と決めるわけではないので、みんながそれぞれ何となく悪いわけです。3人とも原因がわかるわけです。その中で一番責任感の強い人が責任を取るという感じです。悪く言うとあいまいですが、良く言うと全部自主性に任せていて、理不尽さはないというか。上下関係があると理不尽さが出てくるようですから(笑)。福井のオフィスは、そんな雰囲気です。 東京のほうは、普通の会社的な雰囲気ですね。採用も一般の求人会社でしています。来年は未経験者を好んで採ろうと思っています。 ――どうしてですか。 松本: 経験者とは言っても、本当に自社が欲しい仕事を経験していたかどうかはわかりません。本人も自分のイメージでこういうことをやるのだろうと来ても合わなかったりすると不幸です。 それなら未経験であっても、むしろ「自分で勉強してくれる人かどうか」を最初に見て採ったほうがいいと思います。 ――では、どういう人に来てほしいですか。 松本: 「自分の中で範囲を決めてしまわない人」です。自分の仕事を自分で決めてしまわない人がいいです。「自分はこういうことをやるために来たのだから、ここまでしかやらなくて、会社はそれをわかってくれないので不満だ」というのがないほうがいいです。 よくわからないことでも、とにかくやってみるという、前向きで明るい人がいいですね。楽天的でもあると思いますし。 あとは、技術志向の風土がありますので、営業でも事務でも、技術的な志向や経験がある人がいいですね。 【会計・財務について】 ――会社をつくってすぐ2,000万円に増資したのは。
松本:あまり覚えていませんが、やはりお金がなくなったのです。それで次は多めに言っておこうぐらいの感じです(笑)。今考えると、出資者の方たちはすごいと思います。今自分が出資する立場になったとして、訳のわからない若いやつらに100万円でも出すかと思うと多分出さないですが、彼らは出してくれました。 ――それは社長に魅力があるからですね。今後の資金調達については、どのように考えていますか。 松本: いくつか選択肢があります。パートナーと組む上で資本提携という方法もありますし、企画の中でひらめくものがあれば積極的に増やして投資してもいい。今のところまだ具体的には決めていません。 人が増えていくことや今の事業が伸びていく上での規模拡大には借り入れで調達しますし、新事業をやるのであれば第三者というように、目的によって調達手段も当然に変わってきます。 ――将来、IPOしようとか。 松本: 具体的な計画はないです。確かに友達なども目指している人がいるので、華やかですし、野心的で面白いとは思いますが、そのつもりは今のところありません。 ――銀行から融資を受けるときに、どんな点に気をつけていますか。 松本: 実を言うと、先月初めて借入れをしました。今までずっとお金が足りていましたが、この半年間は人数を増やしたため、その関係で借り入れました。 気付いたことは、「単に黒字にすればよいのではなく、利益の出し方に計画性が必要」ということ。言ったことを実現できているということで、少なくてもいいから徐々に利益が増えている状況にすることが必要なんですね。金額の大小はあまり関係ないと思いました。 去年は結構利益を出したのですが、今年は人に投資したかったので人材会社にたくさん払ったため、前期より利益が減っているわけです。毎年増えても減っても最終的には黒字でしたが、今年の減益を見て銀行の反応は悪いのだなと思いました。 今までは借入れをするために利益を出すという概念がなかったのですが、今年、その考えができました(笑)。ステークホルダーに安心してもらうため、信用してもらうための見せ方も考えなければいけないということを学びました。 【パーソナル情報について】 ――好きな言葉はありますか。 松本: ないです(笑)。しいて言えば「マイペース」かな。 ――では尊敬する人は。 松本: 尊敬する人は、いつも意識しているのは上坂さんです。 彼は会計士以外にもコンサルタントとしてもやっていますし、ITコンサルタントの会社も持っていて、どちらかというと事業好きな先生です(笑)。 彼から教わったことは、結構まじめに守っています。なぜ彼がこういうことを言っているのかというのを考えずに、親に言われたことを守るのと同じ感覚で守っています。例えば、「お金は借りるな」という言葉です。会社を始める時に言われたことです。 あと彼の会社は、スタッフのモチベーションが怖いぐらいに高い。それを見ていると、やはり上坂さんはすごい人なのだと感じます。なぜすごいのかは、話を聞いていてもよくわからないのですが・・・。ただ明るくて、元気のいい人で(笑)。
――最後に好きな本を。 松本: 司馬遼太郎の『菜の花の沖』が好きです。とにかく読んでいて、彼の本は元気が出ます。 『菜の花の沖』は、瀬戸内海の一人の貧しい少年が大商人になっていく話です。ですから、ベンチャーの話です。しかも身分制度が固定されていた時代に大きくなって、最後は函館の町を開いた人です。商人でありながら冒険者でもあって政治家でもあるという、スケールの大きい話です。 「経済環境がどうので、会社の業績が・・・」と言い訳をする人が多い中で、それ以上の身分さえ縛られている時代に明るく生きてきた人の話を読むと、どんな悩みも大したことはないと思います。 ――『儲ける社長はココが違う!』(上坂先生の著書)でなくていいのですか。 松本: あれはタイトルが駄目だと思って(笑)。そのうちほとぼりが冷めたらダメ出ししておこうかと(笑)。 |
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明るくておおらかで、お話を伺っていても、とても楽しい松本社長。株主やお客様など多くの方からの応援が得られるのも、そのお人柄からでしょう。携帯の写真を使ったモバイルリサーチは、初めて聞く概念でした。今年やっと骨董品のような携帯から写真がとれる携帯に買い換えた私としては、もっと携帯を活用しなくちゃ・・・と思います(笑)。 これからも、モバイル業界に新たな風を吹き込んで、企業と消費者に喜ばれる製品を、どんどん世に送り出していってくださいね。 取材:2006/09/06
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