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中村崇則(なかむら・たかのり) 1973年、大阪府生まれ。神戸大学経営学部経営学科卒業後、日本電信電話株式会社へ入社。NTT在籍中に無料メーリングリストサービスの合資会社DNSを設立。会員数増加に、よりよい体制で対応するため2000年1月には株式会社インフォキャストへ移行。さらに同年7月インフォキャスト自体は楽天株式会社への売却を行い、これを機にITエンジニアスクールアイティーブーストを設立。現在ではサイトマーケティングから人材コンサルティングまで幅広く活躍中。 【3つのキーワード】 1.I Tツールをワンストップで 2.傘が必要ないときに傘の手配をしておく 3.本質的なことだけをやる 【起業の頃について】
――NTTに入社後わずか9カ月で合資会社DNSを設立。随分早い起業かと思いますが、最初の起業のきっかけは。 中村: 入社して働きながらやっていましたので、(NTTを)辞めたのは2年後の3月末です。起業の理由は、ひとつは、配属された営業系の仕事が自分には合っていなかったということ。もうひとつは、当時NTTに最先端になりきれていない部分が見えて、「もっと理想的な会社のあり方があるのではないか」と思ったことです。 ――最初は何から始めたのですか。 中村: 当時はまだ電子メールも普及していない時代。メーリングリストを初めて使ってこれは便利だと思い、無料でメーリングリストを提供するサービスを始めました。最初にコストがかかる形で起業すると大変ですが、月10万円のサーバー費用以外は特にコストもかからないので、会員数が増え広告がつくと比較的もうかってきました。 ――起業のころ一番大変だったことは? 中村: 最初は月の売上げが9万円ほどで、本当に食べていけるだけの状態でした。当時は25〜26歳だからあまり苦労とも思わず、月収9万円でも結構楽しかったですね。NTTで働いていた時は他人がつくったサービスを売っていたわけですが、自分たちの会社で自分たちがつくったサービスを提供しているのですから、充実感はありました。ただ今それをやれと言われても少しつらいかもしれないですが(笑)。 ――次に新たな取締役も迎え株式会社インフォキャストを設立。JAFCOから1億円、楽天から2億円調達しました。 中村: 設立当初から上場したいと思っていました。そのころはネットバブルで、私たちが特にアプローチしなくても向こうから出資しますと来てくださるような状況でした。楽天はIPOし、M&Aモデルで大きくしようと弊社も含め複数社に出資されていました。ショッピングモール以外にネットで媒体になるものを探しており、当時会員数が伸びていた弊社に魅力を感じたというところです。
――その後株式交換で楽天の子会社になりました。この決断はどのような理由で。中村: ひとつは、ライバル会社がヤフーに買収されたということ。もうひとつは、実際に収支に関しては赤字だったので単体で大きくしていくには随分時間がかかるだろうということ。その時点でいったんイグジットするのがいいという判断で売却しました。 ――その資金でアイティーブーストを設立したのですね。 中村: はい。現在は社員も出資しています。株式のほとんどを社内の人間が持っている状態です。 【経営について】 ――現在の事業は大きく分けて2つでしょうか。 中村: ASPとI T人材派遣の二本柱になります。 ASPは、レンタルサーバーやメール対応用ソフト『メールディーラー』を開発して運用しレンタルする事業。I T人材派遣は、教育も含めてI Tエンジニアをつくりだして派遣する事業。どちらも、弊社が持つリソースを他の企業のI T化のために貸して差し上げるサービスです。 ――年商、従業員数は。 中村: 年商は前期で5億円弱、今期計画8億円強です。従業員は80名です。 ――人材派遣では、自社で開発する分野に絞り教育・派遣をしていますね。 中村: シナジーがあるところで、自分たちが欲しい人材をつくりだして、それを貸して差し上げるという形です。I T系の人材は常時不足していますので、引く手あまたの状態です。 ――メール対応ソフトのデモを拝見しました。使いこなせたら便利ですね。 中村: 現在500社ほどご利用いただいており、ご高評をいただいています。メールがたくさん来る企業には非常に役立つソフトウェアです。 ――今後はどのようなことを。
中村:企業のI T化に必要なツールをワンストップで提供していきたい。例えば人事部門をI T化してECもしますという場合に、アイティーブーストに言えば、人事のツールもECのツールもある。必要なものを選べてワンストップで提供できる会社にしたいと思っています。 ――どのような社風ですか。 中村: 割合とフラットですね。私のことも何々さんと呼ぶので、名前を聞いているだけでは誰が何の役職かわからない(笑)。 それから、必要なことだけをやるということ。儀礼的なことより、本質的に会社をよくするためには何が重要か、ということにフォーカスして活動しています。 ――社員に何を求めますか。 中村: 向上心です。自分の能力を高めるために、毎日何を考え生きていくか。プランを立て、やってみて、チェックして、悪いところを直すためのアクションを考える。PDCAを回せる人を求めます。 ――外部の専門家をどのように活用していますか。 中村: 基本的には弁護士・社労士・監査法人と顧問契約しています。 ――専門家の方に何かリクエストはありますか。 中村: 得意な業種を明らかにしてほしいですね。また商習慣でも、例えばI T系の会社は手形決済などほとんどありませんから手形のことは詳しくなくてもよいが、著作権にはすごく詳しいという方のほうがありがたい。専門家の方がそれぞれ何をよく知っているかということがわかれば依頼しやすいのではないでしょうか。 【会計・財務について】 ――資金繰りを良くする工夫は。 中村: そもそもキャッシュフローが良いビジネスなので、今まで資金繰りで苦労したことはありません。資金繰りを良くする工夫は?と聞かれれば、「資金繰りが悪いビジネスをやらない」ということになるかと思います(笑)。あとは資金繰りが悪くなる前に、資金を調達するということが大切だと思います。経営全般に言えることですが、傘が必要ないときに傘の手配をしておくというのが大切だと思います。資金繰りが良ければ、資金調達も強気に交渉できますしね。
――今後の資金調達は。 中村: 上場に合わせて調達したい。ここ2〜3年での上場を考えています。 ――上場したらどのようなことをやっていきたいですか。 中村: 今やっていることを、もっとうまく、もっと速く、もっと大規模にやりたい。今は垂直統合ができていない部分がありますので、上場で調達した資金を、例えばデータセンター設備などに投資したいと考えています。 【パーソナル情報について】 ――好きな言葉は。 中村: 「克己」です。 自分に打ち勝つ人でないと成長しないと思います。自分の欲望や弱い心、例えば「今日は遅刻してもいいか」という気持ちに打ち勝つことでより高みに昇れるのではないでしょうか。 ――尊敬する人は。 中村: ウォーレン・バフェットという投資家を尊敬しています。 長期投資の考え方、信頼した人に全部任せるというところですね。私も会社を大きくしていくにあたり、多くの人を信頼して任せられるような人物になりたい。また、バフェットのように本質的なことだけをやっていきたいと考えています。 ――本質的なこととは。 中村: 経済でも会社経営でも、雑多な情報の中から本当のクリティカルなポイントを見つけ、そのポイントにだけフォーカスして物事を進めていく。それ以外のことは多少ぶれたところで結果はあまり変わらないわけです。 例えば、私もお客様へインタビューすることがあります。インタビューを受ける人は、その記事が掲載されることで少しでも売上げが上がってほしいと思っているはずです。一方私たちにとっては、お客様のご利用事例を掲載することによりサービスの信頼性を高めることが目的です。つまり、「相手の売上増に貢献する、そして自分たちのサービスの信頼性を高める」という本質さえ忘れなければ、記事の内容はお互いにとっていいものになります。一番大事なことを忘れずに物事に取り組めば大丈夫だということですね。
――最後に中小企業の社長さんにお薦めの本はありますか。 中村: 『ビジネスは人なり 投資は価値なり―ウォーレン・バフェット』という、バフェットの半生について書かれた本です。 ――本日は、ありがとうございました。 中村: ありがとうございました。 |
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若くして起業し、着実に夢に向かって突き進んでいらっしゃる中村社長。「本質的なことに注力する」とは、経営者として視野を広く持つこと。そして周りの人や企業とWin−Winの関係を築くことではないでしょうか。ニハチの法則で「成果の8割は2割の重要事項で決まる」などと言います。あなたにも、どうでもいいことに時間を使い過ぎて肝心の大切なことが結局やっつけ仕事になってしまった、などという経験はありませんか。常に「本質的なことは何か」を念頭に仕事したいものですね。 取材:2006/05/16
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