欧米の信託事情〜英国では庶民に普及、米国では生前信託が一般的
(2015年7月)
1.欧米では信託が庶民に普及 英国や米国では信託は庶民にも普及しています。 たとえば、浪費家の息子のための信託です。 アンドレッティ夫妻には200万ドルの資産があるとしましょう。夫妻が亡くなれば、いずれ2人の子どもで均等に相続することになりますが、問題は長男のマリオさんです。彼は浪費家で、一度に遺産を渡すと使い果たす恐れがあります。 そこで活用するのが信託です。夫妻は弁護士に依頼し、信託を設定することにしました。両親の死亡時に遺産を子ども2人で相続しますが、マリオさんに一度に渡さず、20万ドルを渡して、残り80万ドルを弁護士が信託財産として5年間管理します。信託財産は株などの金融商品で運用。運用益をマリオさんが受け取ります。 このような「放蕩息子信託」が一般的に利用されているそうです。 妻のための、たとえばこんな信託も多く活用されています。 イギリス人のロザンヌさん(85)の生活は、10年前に亡くなった夫ナイジェルさんが残した信託が支えています。生活費や医療費を信託財産から受け取るため財産管理の煩わしさはありません。信託の受託者はしっかり者の娘です。信託制度を利用することについての不安を解消するため、弁護士のマンセル氏がアドバイザーとして家族を支えています。 2.マイケルジャクソン家族信託 マイケルは、遺産の全てを、生前自身が設立した財団「マイケル・ジャクソン・ファミリー・トラスト」に遺言により信託しました。信託は、母キャサリン・ジャクソンと彼の3人の子どもたちのために運用するという内容です。 すべての財産を信託してしまうのではなく、一部の財産に限った信託の利用ならリスクも少なくなりますし、ウルトラCを狙うのではなく、腹八分目の節税を心がけることが肝要です。 積極的に提案するのではなく、問題が登場したとき、相談が持ち込まれたときの解決手法として利用すべきが信託なのです。 米国では著名人にかかわらず生前信託が一般的です。 米国では、遺言を遺すとプロベイトと呼ばれる検認手続きが行われます。米国には戸籍制度がないため、遺産が公開され裁判所が関与するのですが、誰だって遺産の公開は避けたいものです。 プロベイト手続きでは、財産は公示され、相続人は名乗り出るように催告されます。手続きには1年から3年程度の期間がかかり、弁護士へのタイムチャージによる報酬や、新聞での死亡公告、裁判所への登録費用がかかります。 裁判所が任命した管理人(弁護士等)が、財産や相続人の調査を行い、負債を支払います。米国連邦遺産税の申告もプロベイトに含まれます。その後、ようやく裁判所から遺産の分配許可が出されます。 プロベイト手続きを避けるために生前信託によって、死後の財産の行方を決定しておくのです。 著 者
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