不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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平成27年の都道府県地価調査
2015年9月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、9月17日に発表になりました平成27年の「都道府県地価調査」についてご紹介したいと思います。


 「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成27年は全国21,731地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。尚、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内にある31地点は調査を休止しました。

 調査全体の概要としましては、平成26年7月以降の1年間の地価は、全国平均では、住宅地、商業地ともに依然として下落をしているものの下落率は縮小傾向を継続し、三大都市圏平均では、商業地については総じて上昇基調を強め、住宅地については、東京圏・名古屋圏で小幅な上昇を継続しています。また、上昇地点数の割合は三大都市圏では、住宅地の4割以上の地点が、商業地の7割弱の地点が上昇しました。一方、地方圏では、住宅地、商業地ともに上昇地点及び横ばい地点は増加していますが、依然として7割以上の地点が下落しています。

 全国での上昇率順位を見てみると、住宅地は上位10地点のうち8地点が福島県で占められていたのに対し、商業地では上位10地点のうち7地点が東京都、大阪府、愛知県となっています。

 以下では、東京圏の住宅地、商業地における地価動向を見ていきたいと思います。

地域別変動率表
(単位:%)
住宅地 商業地
平成26年 平成27年 平成26年 平成27年
全国 △1.2 △1.0 △1.1 △0.5
三大都市圏  0.5  0.4  1.7  2.3
東京圏  0.6  0.5  1.9  2.3
東京都  1.3  1.3  2.7  3.3
神奈川県  0.4  0.1  1.3  1.3
埼玉県  0.0 △0.2  0.2  0.2
千葉県 △0.1  0.0  0.4  0.5


≪住宅地≫

 東京23区は、全体で2.1%上昇となり、全23区で平均変動率がプラスとなりました。上昇率が最も高かったのは中央区の8.8%で、千代田区及び品川区の5.8%がこれに続いています。区部で上昇率の高い地点は、交通利便性が良いなどの条件が整っている都心又は都心に近接する地域で、マンション画地及び相対的に割安感がある戸建住宅画地を中心に現れています。

 神奈川県は、緩やかな上昇基調が継続しているものの、県全体の変動率も0.1%(前年0.4%)に縮小するなど、やや上昇の鈍化が見られます。富裕層による高額物件の需要や、人気路線沿線エリアを中心とした利便性良好な地域の需要が堅調である一方で、利便性に劣り、人口減少や高齢化等が進む地域では需要の回復が見られず、下落幅を拡大させています。横浜市及び川崎市では、いずれも都心への接近性が良好であることから住宅地への需要は堅調で、全ての区の平均変動率が上昇していますが、市全体の平均変動率の上昇率はやや縮小しています。

 埼玉県は全体で▲0.2%となりました。平均変動率が上昇した市町村数(全63)は、昨年度の19から16に、下落は42から45に、横ばいは前年と変わらず2となりました。その中でも、さいたま市全体の平均変動率としては0.9%(前年1.1%)と上昇率は縮小し、区で見ますと見沼区のみが上昇、7区が下落、2区が横ばいとなりました。

 千葉県は、全体で±0.0%となりました。平成21年以降下落していましたが、本年から横ばいに転じました。県内の調査対象59市区町村の平均変動率は、上昇が21市区町(昨年16)、横ばいが2町(昨年0)、下落が36市区町村(昨年43)となっており、最も上昇率が大きいのは、木更津市の3.6%(昨年2.7%)となっています。

≪商業地≫

 東京都23区は、全体で4.0%上昇となりました。都心の店舗系商業地で、商業機能が高度に集積した地域等の動向を反映し、全ての区が上昇となりました。上昇率が最も高かったのは港区の7.8%で、中央区の7.7%、渋谷区の6.1%がこれに続いています。

 神奈川県は、全体で1.3%上昇とほぼ前年並みの上昇となりました。その中でも横浜市は2.5%上昇しており、再開発の進展や根強いマンション素地需要から全ての区で上昇となりました。

 埼玉県は、全体で0.2%上昇となりました。その中でも、さいたま市は2.5%上昇しており、特に大宮駅周辺では企業の移転・集約需要ニーズにより駅西口にオフィス需要が根強く、また、個人投資家のニーズも堅調で上昇基調を強めています。

 千葉県は、全体で0.5%上昇となりました。その中でも千葉市は0.4%上昇しており、商業地の価格水準が低下したことから、生活利便性が良好な地域では、マンション素地を中心に需要が見られ下落から上昇に転じました。

 以上、前回の地価調査に比べ、低金利や住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えに加え、金融緩和による資金調達環境が良好なこと等もあって住宅地及び商業地ともに総じて堅調に推移して、上昇ないし下落幅の縮小が見られます。この堅調な住宅需要を背景に商業地をマンション用地として利用する動きが全国的に見られるなど、現在までマンション業者が触手しなかった土地であっても、立地条件等によっては、マンション業者の需要が見込まれるような事象が生じる可能性がありますので、広大地の判定に際して、今後はさらに新築マンションの建設動向にも十分ご注意下さい。






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