不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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道路と評価対象地の間に公有地が存在する土地について、
広大地として是認された事例
2015年6月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
さて、今回は、道路と評価対象地の間に公有地が存在する土地について更正の請求を行ったところ、広大地として是認された事例をご紹介します。


 まず、税務上の広大地の定義について改めて振り返りますと、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)では、広大地とは『その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの』と規定されています。

 今回は、この公共公益的施設用地の負担、つまり開発道路を設けて宅地の区画割を行うことが、経済合理性の観点から必要であると認められるかどうかが論点となった事例をご紹介します。

 始めに事実事項を確認しますと、評価対象地は最寄駅より徒歩5分圏内に存し、現況は月極駐車場である地積約700平方メートルの画地です。用途地域は第二種住居専用地域に指定され、容積率は200%であることから、対象不動産の周辺は一般住宅を中心に、賃貸共同住宅、寄宿舎、保育園や幼稚園等の公共施設も見られる住宅地域です。

 尚、評価対象地は最寄駅から徒歩5分圏内ですが、評価対象地程度の地積では分譲マンション業者からの需要はなく、近隣地域の標準的使用が100平方メートル程度の戸建住宅であることについては論点とはなりませんでした。

(概要)
相続時点 平成24年
所在地 関東信越国税局管内
都市計画区域 市街化区域
用途地域 第二種住居地域
建蔽率・容積率 60%・200%
最寄駅 徒歩約5分
土地面積 約700平方メートル
現況 月極駐車場
街路

西側幅員約6.1m 建築基準法42条1項1号
北側幅員約6.0m 建築基準法42条1項1号
標準的使用 一般住宅地

 評価対象地は、路線価図や公図を見ると、一見、二つの路線に接する土地であるように見えるため、開発道路を設けずに、区画割することが合理的であるように考えられます(下図「公図」、下図「開発想定図A」参照)。

「公図」
「公図」

 しかし、実際に現地を調査してみたところ、対象不動産の北側には幅約2.6m、高さ約0.6mの法面(実際に宅地として利用できない盛土の傾斜面)が存在しており、車の通行はもちろん、人の出入りも出来ない状況であることが分かりました(公図の無地番地部分が法面部分、下図「法面断面図」参照)。

「法面断面図」西側道路から見た場合
「法面断面図」西側道路から見た場合


「開発想定図A」
「開発想定図A」


「開発想定図B」
「開発想定図B」


「開発想定図C」
「開発想定図C」

 但し、当該法面は無地番地(公有地)であることから、この法面部分も建築基準法上の道路に含めることができるかどうか詳しく調査する必要がありました。

 そこで、当該法面について役所で調査したところ、この法面は単なる公有地であり、建築基準法上の道路に含めることは出来ない旨の回答を得ました。

 つまり、当該法面の存在により、評価対象地は北側道路から建築確認や開発許可を得ることは出来ないため、実質的に西側道路のみに面する中間画地ということになります。

 従って、近隣地域の標準的使用が『一般住宅地』で、標準画地が『100平方メートル程度』と判定された本案件では、西側道路から路地状敷地で区画割するよりも、開発道路を設けた方が合理的であると考えられます(上図「開発想定図B」及び「開発想定図C」参照)。

 そして、その旨等の意見を記した広大地鑑定書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、税務上の広大地に該当すると判断されました。今回のケースでは、実際に現地へ足を運んで気づいた点を役所でしっかり調査した結果が広大地評価の是認につながったものと思います。

 当事務所では、先生方が既に申告を済まされた案件についてのご相談も受け付けております。首都圏内はもちろん、首都圏以外の広大地案件についても対応しております。お電話のほか、FAX、Eメールでの相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。






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