不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例
2015年5月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は措置法31条の2『優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例』についてご紹介させていただきたいと思います。


 相続税の納税資金確保のために不動産の譲渡がよく行われるかと思います。その際に、これまでは『措置法39条』いわゆる『取得費加算の特例』によって譲渡所得税が大きく軽減されていました。

 しかし、平成26年度に下記の改正が入ったことにより、取得費に加算することの出来る相続税額が大幅に減少し、平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈については譲渡所得税の増額が想定されます。

【平成26年度税制改正大綱】より抜粋
(1) 相続財産である土地等を譲渡した場合の特例について、当該土地等を譲渡した場合に譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額を、その者が相続した全ての土地等に対応する相続税相当額から、その譲渡した土地等に対応する相続税相当額とする。

(2) 省略

(注) 上記(1)及び(2)の改正は、平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈により取得した資産を譲渡する場合について適用する。

 そこで、納税資金確保のために大きな土地を戸建分譲業者などに譲渡した場合等に要件を満たしやすい措置法31条の2『優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例』をご紹介させていただきたいと思います。


○適用要件

 まず、この特例は、個人が平成28年12月31日までの間に所有期間5年超の土地等を譲渡した場合において、その譲渡が一定の優良住宅地の造成等のための譲渡のいずれかに該当するときにはその税率が下記のように軽減されます。

課税所得 所得税 住民税 合 計
分離課税長期譲渡所得金額のうち
2,000万円以下の部分
10% 4% 14%
分離課税長期譲渡所得金額のうち
2,000万円超の部分
15% 5% 20%

 つまり、分離課税長期譲渡所得金額が2,000万円以下の金額について軽減税率の特例が認められていることになり、最大で所得税が100万円、住民税が20万円の減額となります。

 なお、居住用財産の3,000万円特別控除または買換特例特定事業用資産の買換特例、収用に係る5,000万円特別控除または、買換特例、平成21・22年中に土地を取得した場合の1,000万円特別控除等の特例等を適用した場合には、この軽減税率は適用されませんのでご注意下さい。


○適用される譲渡の範囲

 特例の適用が受けられる譲渡は、国または地方公共団体に対する譲渡(措法31の2(2)一)、一団の宅地造成事業の用に供するための土地の譲渡で、一定の用件を満たすもの(措法31の2(2)一)などの、国や地方公共団体や一定規模の土地の造成を行う業者に優良住宅地の造成等のための譲渡を行う場合に適用を受けられることになります。なお、広大地評価の要件を満たす土地の譲渡については、要件を満たす場合が多いので注意が必要です。

 また、この特例は土地の譲渡についてのみ適用されるもので建物の譲渡は対象となりません。


○添付書類

 特例の適用を受けるためには、確定申告書に区分一覧表に掲げる証明書の添付が必要ですが、ここで注意したいのが、添付書類は開発業者から交付を受けなければならないことです。

 民間業者に対する譲渡(主に9号〜16号対象)については、買い取った開発業者から、一定の要件を満たすことを証する書類の交付を受け、確定申告書に添付しなければなりません。

 なお、右記の証明書は13号事由の適用を受けた際に添付をしたものになり、開発業者の署名・押印をされたものを提出しました。また、この他に開発行為許可申請書、開発行為許可通知書、設計説明書、土地利用計画図などを添付して申告をしております。

 この特例は譲渡不動産の購入者の開発計画などにより適用の有無が左右されるという特殊な規定になります。事前段階では適用が受けられる見込みであっても、計画の変更などにより特例の適用が出来なくなる可能性もあります。売買契約書に特例条項を設け、トラブルを防ぐなどの対策が必要な場合もあるかと思います。

 当事務所では、土地評価以外にも毎年多数の譲渡所得の申告も行っております。譲渡時または申告時に、適用に悩まれることがございましたらお気軽にご連絡ください。






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