不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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標準的画地規模に関する意見書を提出した結果、広大地が是認された事例
2015年1月

いつも当レポートを御愛読頂き、ありがとうございます。
今年最初のレポートは、当初申告で、広大地として申告した土地について税務調査が入った税理士先生から御相談をいただき、標準的画地規模に関する意見書を税務署に提出した結果、広大地が是認された事例を紹介したいと思います。


 今回の事案の事実事項を確認しますと、評価対象地は埼玉県内に所在し、最寄駅より徒歩8分程度、指定容積率200%、地積1,640平方メートル上に、被相続人の自宅が建っています。評価対象地は幹線道路の背後に存し、周辺には一般住宅を中心に、賃貸共同住宅、月極駐車場や農地も散見される住宅地域です。

相続時点 平成22年
土地面積 1,640平方メートル
建物 木造2階建居宅(自宅)
用途地域 第二種中高層住居専用地域 容積率:200%
最寄駅 徒歩約8分

 広大地に該当する要件の一つである「その地域の標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」について改めて確認しますと、評価対象地が都市計画法施行令第19条第1項及び第2項の規定に基づき各自治体の定める開発許可を要する面積基準以上であれば、原則として、その地域の標準的な宅地に比して著しく地積が広大であると判断することができるとされています。(国税庁HP「広大地の評価における『著しく地積が広大』であるかどうかの判断」より)

 この内、「各自治体の定める開発許可を要する面積基準以上」に関しては、「三大都市圏の市街化区域は500平方メートル以上が原則」というように具体的な例示が示されています。しかし、「その地域の標準的な宅地の地積」に関しては、評価対象地の付近で状況の類似する地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地の地積、評価対象地の付近の標準的使用に基づく宅地の平均的な地積などを総合勘案して判断する、とされているため、納税者がその地域の標準的な宅地の地積を判断しなければならないこととなります。

 これを踏まえて今回の案件を見てみましょう。

 対象不動産の近隣地域は最寄駅から徒歩10分圏内ではあるものの、一般住宅が非常に多い地域となっており、分譲マンションもほぼ存在しないことから、標準的使用が一般住宅であることに疑義のない地域です。また、対象不動産の存する市の開発指導要綱では、開発事業の1区画当たりの最低敷地面積が120平方メートルとされており、対象不動産の周辺にも同程度の敷地の一般住宅が見られたことから、この税理士先生は120平方メートル程度が標準的画地規模であると判断し、広大地として申告しました。

 しかし、その後相続税の税務調査があり、対象不動産は広大地に該当しないのではないかという指摘がありました。理由は「対象不動産の存する地域の標準的使用は一般住宅であるものの、標準的画地規模は200平方メートル程度であり、対象不動産内に開発道路を設ける必要はないのではないか(図2参照)」というものでした。どうやら税務署は、対象不動産の隣の街区を見て、200平方メートル程度の一般住宅が多いため、標準的画地規模を200平方メートルだと判断したようです。

 しかし、当事務所が隣の街区の土地を調査したところ、200平方メートルの一般住宅は、相続時点から20年以上前の大規模分譲地でした。また、周辺で近年に戸建分譲された事例を複数調査したところ、ほとんどの戸建分譲事例が概ね135平方メートルで分譲されており、最も近い標準地も135平方メートルの住宅地である事が分かりました。

 以上の事から対象不動産の存する地域は、標準的画地規模が135平方メートルの地域であると判断されるため、図3のような開発道路を設けた戸建分譲が最も合理的な分譲であると考えられます。この旨を意見書として税務署に提出した結果、広大地に該当すると判断され、是認されました。

 本事例のポイントとしては、その地域の標準的画地規模は近年の戸建分譲事例や標準地等を基にして判断する、ということです。実際に周辺に200平方メートルの一般住宅が多かったとしても、それが旧来からの利用方法が残っているだけであり、現在では135平方メートルで戸建分譲されるのが一般的であれば、当然に標準的画地規模は135平方メートルとなります。但し、今回の税務署の担当者のように、税務署は必ずしもその地域の不動産事情に精通しているわけではないので、こちらが当然だと感じていても、税務署側がそう思わないこともあります。やはり広大地であることの根拠は明確に提示する必要があると思います。






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