不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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容積率300%地域の敷地について更正の請求で広大地が是認された事例
2014年12月

今年もあとわずかとなりました。皆様本年も当レポートのご愛読有難う御座いました。さて、本年最後のレポートは、容積率300%の地域に所在する敷地について更正の請求を行ったところ、広大地として是認された事例をご紹介します。


 今回の更正の請求事案の事実事項を確認しますと、評価対象地は東京23区内に所在し、最寄駅より徒歩3分程度、指定容積率300%、地積約800平方メートル上に、被相続人の自宅が建っています。評価対象地は幹線道路の背後に存し、周辺には一般住宅を中心に賃貸共同住宅、分譲マンション、未利用地等も散見される住宅地域です。

相続時点 平成25年
土地面積 約800平方メートル
建物 木造2階建居宅(自宅)
用途地域 第一種住居地域 容積率 300%
最寄駅 徒歩約3分

 一般的に、指定容積率が300%以上の地域内に存する評価対象地は、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」、いわゆる『マンション適地』に該当するとされ、原則広大地評価の適用はできません。但し、例外的に、「例えば道路の幅員などの何らかの事情により指定容積率を活用することができない地域であると考えられる」場合には、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」に該当しないこととして差し支えないとされています(国税庁HP「広大地の評価における『中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの』の判断」より)。

 この内、例外的な場合として国税庁より例示されている「道路の幅員」とは、『基準容積率』の算定を指すものであり、前面道路(前面道路が2以上あるときは、その幅員の最大のもの)の幅員が12m未満である建築物の容積率は、当該前面道路の幅員のメートルの数値に下表の数値を乗じたもの以下でなければならず、その数値と指定容積率を比較して、原則として低い方が適用されるというものです(建築基準法第52条第2項)。

建築物のある地域 前面道路の幅員のメートル数値に乗ずべき数値
第1種・第2種低層住居専用地域 4/10
第1種・第2種中高層住居専用地域
第1種・第2種住居地域、準住居地域
(高層住居誘導地区内の建築物であってその住宅の用途に供する部分の床面積の合計がその延べ面積の3分の2以上であるものを除く)
4/10
(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物にあっては6/10)
その他の地域 6/10
(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物にあっては4/10又は8/10のうち特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの)

 例えば、第一種中高層住居専用地域で指定容積率が200%の地域に存する土地の前面道路が4mの場合、4m×4/10=16/10(160%)<200%(指定容積率)となり、実際に使用できる容積率は160%となります。

 なお、評価対象地の前面道路は8mであったため、8m×4/10=32/10(320%)>300%(指定容積率)で、実際に使用できる容積率は300%となります。また、最寄駅からの駅距離(徒歩3分)等も鑑みて、結果として「マンション適地」に該当するとして、広大地評価が適用できない可能性がありました。

 そこで、評価対象地の周辺における近年の分譲マンション及び戸建分譲開発の事例の収集や市場調査を行ったところ、評価対象地の最寄駅は、鉄道の支線の駅であるため、商業繁華性に劣る上、本線の駅からの接近性にも劣るため、分譲マンションの需要があまり高くない地域であること、また、評価対象地の近隣において、近年で実際に分譲されたマンションも、売行きが低調であり、竣工から数年経った相続時点現在においても完売に至っていないこと等がわかりました。つまり、当該地域は使用できる容積率を限度一杯まで使用して分譲マンションを建築しても、売れ残りや採算が取れないリスクのある地域であると判断できます。

 その反面、戸建分譲開発は近年多くされており、評価対象地と同程度の規模・容積率及び立地条件の敷地が戸建分譲地となっている事例も複数見つかりました。

 これらを踏まえて、当該地域は実際に使用できる容積率だけを考えれば「マンション適地」に該当するものの、当該地域の立地条件や、分譲マンション市況の弱さ等から、「指定容積率を活用することができない地域である」と判断しました。そして、その旨等の意見を記した広大地調査報告書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、税務上の広大地に該当すると判断され、是認されました。

 これまで、本件更正請求事案のように、指定容積率が300%以上の地域内にある土地の広大地評価をするにあたっては、既述の「基準容積率」を理由として広大地評価が認められたケースもありましたが、本件のように、実際に使用できる容積率が300%以上であったとしても、評価対象地の周辺の利用状況や売買事例、市況等を細かく調査し、評価対象地が広大地である根拠をしっかりと明示・主張できれば、広大地評価が認められるものであると思います。一方で、こうした土地につき広大地評価が認められるか否かについては、納税者側の土地評価の専門的な知識を取り入れた説明能力に懸かっていると言わざるを得ません。

 当事務所では、先生方が既に申告を済まされた案件についてのご相談も受け付けております。首都圏内はもちろん、首都圏以外の広大地案件についても対応しております。お電話のほか、FAX、Eメールでの相談も受け付けておりますのでお気軽にご連絡ください。






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