不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

土地区画整理事業施行中の土地の登記
2013年11月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、土地区画整理事業施行中の土地の登記に関するお話をしたいと思います。


 先生方の中には、一般的な土地とは異なる「土地区画整理事業」の区域内に土地をお持ちの方の相続を担当され、いつもと勝手が違うことに苦労された先生もいらっしゃるかと思いますが、今回は、そんな土地区画整理事業が施行中の土地の登記に関することをお話ししたいと思います。

 まず、「土地区画整理事業」とは都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図る為、都道府県、市町村、土地区画整理組合などが土地区画整理法に定めるところに従って施行する土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業のことを言います。因みに、土地区画整理事業の大まかな流れは以下のようになります。


 土地区画整理事業が施行中の土地の評価や登記で問題が生じるのは上記「仮換地の指定・工事」の部分に該当する土地です。土地評価に関して言えば、仮換地が指定される前であれば従前地を評価対象としますが、仮換地が指定されている土地であれば原則として仮換地を評価対象とします。但し、仮換地が指定されていたとしても、(1)仮換地について使用または収益を開始する日を別に定めるとされている為、当該仮換地について使用又は収益を開始することができず、(2)仮換地の造成工事が行われていない場合は、従前地を評価します。

 では、土地の登記はどのようになるでしょうか。


 仮換地は、上記図1のように指定されますが、仮換地は換地処分される前の「仮」の段階であるため、仮換地そのものを登記することはできません。仮換地の段階で相続登記を行う場合は、あくまで従前地の地番で相続登記を行います。上記図1の例を用いて言えば、「4街区1画地」を長男が相続する場合は、従前地の「1番1」を長男が相続しなければなりません。

 それでは、左記図2のように、1筆の従前地が2筆の仮換地に分かれるような場合で、換地後のことを考え、「6街区1画地」は長男が相続し、「7街区1画地」は配偶者が相続したい、といった場合はどのように登記することになるでしょうか。

 この場合、確かに仮換地は2筆ですが、従前地が1筆であるため、「6街区1画地」と「7街区1画地」を二人の相続人が別々に単独で相続することはできません。(「3番1」を1/2ずつの共有持分で相続してしまうと、「6街区1」と「7街区1」をそれぞれ1/2ずつ相続したことになります。)

 このような場合は従前地分筆が必要となります。

 従前地分筆とは、土地家屋調査士が土地区画整理組合と協議した上で仮換地の面積比に応じて従前地を分筆・登記することであり、左記図3のように、仮換地と従前地を1対1の関係にすることが可能です。これにより、「6街区1画地」が「3番1」と1対1で対応するため、「3番1」を単独で相続すれば、「6街区1画地」も同じ相続人が単独で相続するということになります。

 これは仮換地を売却する際にも同じことが言えます。土地区画整理事業の工事が進み、仮換地の使用収益が開始されると、仮換地を売却することも可能となります。しかし、図2のような場合で「6街区1画地」のみを売却する(所有権移転登記をする)としても、従前地は1筆であり、従前地の「3番1」を売却するということは、「6街区1画地」と「7街区1画地」を売却するということになってしまうので、このような場合も必ず従前地分筆が必要となります。

 尚、注意しなければならないこともあります。それは従前地分筆に掛かる時間です。当事務所でも毎年何件か従前地分筆を土地家屋調査士に依頼していますが、どの案件でも早くて1ヶ月半程度の時間が掛かっています。そのため、相続税の申告期限を考えると、相続発生後かなり早い段階で依頼しないと、従前地の地番が明確に定まらない為に、申告期限までに分割協議書が完成しないということにもなりかねません。このように、土地区画整理区内の土地を相続される方や、土地区画整理区内の土地を売却して納税資金に充てるような相続の案件がある場合は、土地評価以外にも注意しなければならないことがあるので、もし判断に迷われるようなことがあれば、お気軽に御相談下さい。






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所