不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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広大地として是認されたミニ分譲地の事案
2013年10月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、ご支援先の税理士先生より相談を受け、当事務所が更正の請求をした結果、広大地として是認されました「ミニ分譲地」の事案をご紹介したいと思います。


 事実事項から確認しますと、評価対象地は首都圏の某県内で、最寄駅から約1,100m(徒歩4分)に存し、現況は畑として利用されている地積約430平方メートルの土地です。評価対象地が存する地域は、以前より都心のベッドタウンとして成熟を増しており、賃貸共同住宅、一般住宅等が混在する地域です。

 再開発を了した駅前には分譲マンションも複数認められましたが、最寄駅から徒歩10分以上を要する評価対象地の近隣には分譲マンションは見受けられず、敷地面積や容積率(100%)からも『分譲マンション適地』に該当しないことは明らかであり、相続時点現在の市況では、こうした周辺の利用状況からも評価対象地の最有効使用は『戸建分譲用地』であると判断されました。

 三大都市圏内では、敷地面積が500平方メートル以上の場合に開発許可が必要となります。一方で、開発許可を要する面積未満であっても、ミニ開発分譲素地が広大地に該当するかどうかは、平成16年の広大地情報・3「通達改正の概要」には「(2)広大地の範囲(広大地に該当する条件の例示)「ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、開発許可を要する面積基準(例えば、三大都市圏500へ右方メートルに満たない場合であっても、広大地に該当する場合があることに留意する」旨が規定されています。


 評価対象地の地積は、当自治体の開発許可面積基準である500平方メートルに満たないことから、当初は広大地評価をすることは見送られましたが、当事務所で周辺の市場を調査・分析した結果、対象地の周辺は開発区域が500へ右方メートル未満となるミニ開発分譲が確認出来る地域であることが判明したため、開発図面を作成し更正の請求をしました。

 ところで、上記の、ミニ開発分譲が多い地域に存する土地について、開発許可を要する面積基準に満たない場合であっても広大地に該当する場合があることを認めているということは、言い換えれば、開発許可を要する面積以上であるという「面積要件」は、あくまで判断基準の一つとして示されているのであり、このことは絶対的な基準ではないという意味にも解釈されます。

 なお、評価対象地の存する自治体には、道路を設ける住宅建設目的の宅地開発の場合、事業区域の面積が500平方メートル未満であっても、「条例」の適用があり、最低区画割面積の確保(当自治体においては110平方メートル)等、開発許可を要する場合とほぼ同様の規制・基準を求められることから、その実質は一般に言われるところの開発行為と何ら変わりありません。

 この宅地開発条例は、道路を設置する場合であれば、500平方メートル未満の土地であっても、条例適用事業とすることにより、規制強化しているものです。このことは、当自治体内においては、500平方メートル未満であっても、評価対象地の標準的な画地規模よりも明らかに大きい規模の土地については、実際の市場では一体使用を前提とした購入者は見られず、ミニ開発分譲素地として購入し、区画割分譲する事業者が多いため、最低限の画地規模等を確保し、500平方メートル未満の土地に対する良好な住環境を維持することを目的に、「条例」の対象として一定の基準を設けているものとも考えられます。

 すなわち、当自治体内において、500平方メートル未満の土地についても「条例」による開発規制が設けられているのは、言い換えれば、ミニ開発分譲が多い地域であるからと判断できます。

 そこで、「条例」等に基づき、左記のとおり図面を作成しました。

 本件評価対象地は、間口に比べて奥行が長く、この程度の間口幅では旗竿状の敷地で合理的に分割することは難しいため、敷地内に道路を設置せずに区画割をすることは現実的ではありませんでした。

 以上、評価対象地の形状や、周辺において多数のミニ分譲地が認められたこと、及び当自治体の「条例」等から総合的に判断し、広大地調査報告書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、税務上の広大地に該当すると判断され、是認されました。

 首都圏内においては、今回の自治体のように開発許可面積に満たない宅地開発であっても、「条例」等により開発許可を要する場合と同様の規制がかかることがあります。ミニ分譲地の広大地評価を適用する際には、評価対象地の周辺に同様のミニ開発分譲地の事例を探し出すことはもちろん、こうした自治体の「条例」等をもってミニ開発分譲が多いということを上手く説明できるかどうかも課税庁側が広大地に該当するか否かの判断の重要なポイントになると思われます。

 当事務所では、先生方が既に申告を済まされた案件についての更正の請求のご相談も受け付けております。首都圏内はもちろん、首都圏以外のミニ分譲地の広大地案件についても対応しておりますので、判断に迷われました際にはお気軽にご連絡ください。






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