不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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更正の請求で広大地と認められた特殊なケース
2013年4月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回のレポートでは、更正の請求で、広大地と認められた特殊なケースの一つをご紹介したいと思います。


 今さらではございますが、財産評価基本通達24−4の「広大地」判定に際しては、一般的に下図のようなフローチャートに沿って行うこととなります。

<広大地評価のフローチャート>

 この場合、特に、最近の裁決事例を見ても争いが多いのは「開発行為を行う場合、公共公益的施設用地(開発道路等)の負担が必要と認められるか?」の要件のようです。

 ただし、この点について、絶対的な指標はなく、例えば、ある土地について、売却の入札が行われた場合、「A業者の利用計画は、開発道路を設置して区画割が行われる予定であるが、B業者の利用計画は、新設道路を設けず、旗竿状の画地と整形地とで区画割を行う予定である」というようなことは、よく見られることです。

 なお、今まで携わった中では大手のハウスメーカー等が落札した場合には、開発道路を設けて、なるべく整形地が多くなるように区画割をし、一方で、地場の中小の不動産業者等が落札した場合には、多少の不整形地が生じても、新設道路等の潰れ地がでないように区画割をする傾向が強いように思われます。

 なお、今回、紹介させていただく事案は、平面的にみた場合には、公共公益的施設の負担を要せず、一見、広大地に該当しないように見える土地であっても、周辺の土地との関係において、その地形的な特性から、新設道路を設置することが妥当であり、広大地と判定されたものです。

 下の開発想定図(1)を見て下さい。

開発想定図(1)

 この土地は一般住宅が標準的使用と認められる地域に存しており、公共公益的施設の負担を要するか否かの要件以外はすべて、広大地の要件を満たしていましたが、開発想定図を策定した場合、一見すると、開発想定図(1)のように整形地と旗竿状の敷地により、開発道路を設けずに区画割が可能です。なお、この地域の標準的な画地規模は100平方メートル程度でした。

 ただし、この土地の特筆すべき事項は、まず、北東側隣接地よりも、約5メートル程度地盤面が低く、北西側で接面する道路は間口の半分くらいが階段状となっています。この階段部分は、南西方から北東方へ上がる急階段となっており、前面道路は階段状部分も含め、建築基準法42条2項道路でした。したがって、行政法規のみに則れば、開発想定図(1)のように区画割することが妥当であると思われがちです。

 ところが、階段状道路にしか接面しない区画1、2については、自動車の乗り入れは不可能であり、実際に市場に供給した場合には、買い手がつかないことが予想されます。そこで、より現実性を考慮すると、下の開発想定図(2)のように区画割することが合理的ではないかと考えられます。また、この階段状部分を平坦にする等の立体的に道路形状を変更することも周辺利用状況から不可能な状況です。

開発想定図(2)

 本件は、更正の請求にて課税当局の判断を仰ぎ、妥当と判断されました。

 不動産調査は現地調査が基本であり、この土地についても最初に実測図を見た時は広大地には該当しない土地と思われましたが、現地に赴いてみると、市場性の観点からは、道路を設置するのが合理的と気付いた事案です。このように、不動産はこの世に二つと同じものはなく、一見すると見落としがちな個性を多く含むものです。特に、特殊なものにつきましては、何らかの落とし穴がある可能性が高いです。






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