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5)退職慰労金額を前提に保険金額を算出してみる

 まずここで設定条件を再確認しておこう。社長は現在50歳男性であり,社長になって間がない。自身の退任の時期は明確ではないが,65〜75歳くらいを想定して準備を考えている。

 そこで,これからの準備の条件として20年後の70歳時に退任し,その際の退職金を,先に算出した退職慰労金の損金算入の目安である6480万円と考えることとする。

 検討対象とする保険を,前章まで取り上げた長期平準定期保険と1/3損金タイプ逓増定期保険の2種類としてみよう。

表4 【当初保険金1億円の場合】
  保険金 保険料 20年経過解約返戻金
長期平準定期保険 1億円 2,557,000円 45,370,000円
1/3損金タイプ逓増 当初保険金
1億円
14,192,900円 236,140,000円

 長期平準定期保険の場合には,上記1億円の保険金設定では経過20年段階では目標である6480万円に届いていない。したがって,加入保険金額は,「1億円×6480万円/4537万円=1億4300万円」ということになる。

 これにより年払保険料は,「255万7000円×1.43=365万6510円」,また,20年経過段階の解約の際の返戻金は,「4537万円×1.43=6487万9100円」となり,目標金額をクリアすることになる。

 また1/3損金タイプの逓増定期保険の場合には,逆に当初保険金1億円では20年経過段階の返戻金は2億3614万円と大きく超過している。このため加入保険金額は,「1億円×6480万円/2億3614万円=2750万円」ということになる。

 これにより年払保険料は,「1419万2900円×0.275=390万3048円」,また20年経過段階の解約の際の返戻金は,「2億3614万円×0.275=6493万8500円」となり,目標金額をクリアすることになる。

 なお逓増定期保険の場合,当初保険金額2750万円で,ここで挙げている例では7年目から保険金額が30%複利逓増するタイプの例なので,経過13年目以降,終期である保険期間満了の35年目まで当初保険金額の5倍(逓増の当初保険金額に対する倍率限度)の1億3750万円ということになる。

 一表にまとめると表5の形である。

表5 【経過20年段階の解約返戻金を6480万円に近似させた場合】
  保険金 保険料 20年経過解約返戻金
長期平準定期保険 1億4,300万円 3,656,510円 64,879,100円
1/3損金タイプ逓増 2,750万円 3,903,048円 64,938,500円

 生存による退任慰労金の額を目安とした場合には,このような考え方で保険金設定をすることになるわけである。



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