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3)含み益の観点から保険を眺めてみると

 ここまで取り上げてきた保険を,この観点から眺めてみてみよう。

 企業としての財務体質を恒常的に強化することを考えると,長期間にわたって含み益が確保される必要がある。

 このようなことからすると,どのような保険に効果があるのだろうか?

    1年 10年 15年 20年 25年
長期平準定期
(98歳満了)
年払保険料
2,557,000
保険金額 1億円 1億円 1億円 1億円 1億円
資産計上累計 1,278,500 12,785,000 19,177,500 25,570,000 31,962,500
返戻金 1,340,000 15,700,000 23,830,000 45,370,000 56,040,000
返戻率 52.4% 61.4% 62.1% 88.7% 87.66%
含み益 61,500 2,915,000 4,652,500 19,800,000 24,077,500
逓増定期1/2損金
(*1)
年払保険料
53,31,900
保険金額 1億円 1億円 5億円 5億円
資産計上累計 2,665,950 26,659,500 26,955,718 7,701,638
返戻金 0 53,570,000 61,200,000 27,150,000
返戻率 0 100.47% 76.52% 25.45%
含み益 0 26,910,500 34,244,282 19,448,362
逓増定期1/3損金
(*2)
年払保険料
14,192,900
保険金額 1億円 2.856億円 5億円 5億円 5億円
資産計上累計 9,461,934 94,619,340 141,929,010 189,238,680 141,929,010
返戻金 11,430,000 144,570,000 196,810,000 236,140,000 255,700,000
返戻率 80.5% 101.8% 92.4% 83.1% 72.0%
含み益 1,968,066 49,950,660 54,880,990 46,901,320 113,770,990
逓増定期1/4損金
(*3)
年払保険料
12,299,800
保険金額 1億円 1.464億円 2.358億円 1億円 1億円
資産計上累計 9,224,850 92,248,500 138,372,750 184,497,000 142,062,690
返戻金 9,940,000 127,090,000 197,060,000 261,200,000 288,260,000
返戻率 80.8% 103.3% 106.8% 106.1% 93.7%
含み益 715,150 34,841,500 58,687,250 76,703,000 146,197,310
※ 保険料全期払

 一つの考え方としては,損金算入の割合が高い保険種類はどうだろうか? 上表で言えば,長期平準定期保険と,1/2損金タイプの逓増定期保険である。どちらも保険期間の6割期間で,保険料の1/2が損金算入され,残りの1/2が資産計上されることになるわけであるから,上表のそれ以外のものに比べて損金算入割合が大きく,それだけ資産計上が少ないので,返戻金との差=含み益が多くなりそうである。

 しかし,よく考えてみると,最初から損金算入割合が大きいということは,それだけ前払い保険料が少ないわけであるから,解約の際の返戻金は比較的早い時期に減少をはじめるはずである。

 ここで挙げた長期平準定期保険と1/2損金タイプの逓増定期保険は,それぞれ保険期間が前者は98歳満了,後者が22年なので,早い時期に返戻金が減少をはじめるということでは後者が特に該当する。

 その意味で,長期間の含み益の確保ということでは,長期平準定期保険のほうが妥当といえる。特定の時期(たとえば10年後)に赤字になる可能性があるので,その時期に含み益を最大化し,解約することによって益を出し,その赤字の対策とするというような場合であれば1/2損金タイプの逓増定期も妥当であろう。

 しかし,取引先の倒産など不測の事態に備えるということであれば,時期がわからないわけであるから,長期にわたる含み益作りが必要ということになろう。長期平準定期保険は,そもそも保険期間が長期にわたっているので,保険期間の前半はともかく,中盤以降,長期にわたって含み益を確保するという点では妥当な保険契約ということができる。

 それでは1/3損金や1/4損金タイプの逓増定期保険はどうなのだろうか?

 当然のことながら,契約当初から資産計上する保険料割合が高いため,解約の際の返戻金との差である含み益は形成しにくい。しかし,その資産計上累計額は,保険期間の6割を経過した後,残り4割期間で按分して損金に落とすため,急激に資産計上累計が減少することになる。このため,保険期間の後半には,解約の際の返戻金と資産計上累計との差が大きくなってくる。したがって,長期でみた場合,含み益形成に大きく貢献する。

 上表の1/3損金タイプの例でいえば,経過25年段階で返戻率はすでに70%台に落ちているにもかかわらず,含み益としては1億1377万円,保険料累計3億5482万円の32%にもなっている。

 上表の1/4損金タイプでは同じく経過25年段階で返戻金は率でみると93.7%となって落ちはじめているが,含み益としては1億4619万円,保険料累計3億749万円の47%にも及んでいる。

 したがって,損金算入割合の低い逓増定期保険も長期でみた場合,保険期間の後半を意識すれば含み益の確保に相当程度貢献することがわかる。結局,含み益を長期にわたって確保しようとした場合,特定の1保険種類で満たそうとするより,複数の保険を活用して,それぞれの強い時期の含み益を利用することが妥当といえるようである。

 次章からは,それぞれの保険の利用目的において保険金額の設定をいくらにすべきかの考え方を取り上げる。



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