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8.法人の利用目的からみた各種「定期保険」(2)


 前章まで事業保障,退職慰労金準備という保険の利用目的から,各保険種類の妥当性をみてきた。ここでは,少し観点を変えてみておこう。


1)「課税の繰り延べ」の二つの意味

 第1章の保険利用目的の概観において「課税の繰り延べ」を取り上げた。これには大きく二つの意味が内在している。

 一つは,直接的な税軽減効果を狙ったものである。

 すなわち,保険料1000万円を年払いで払い,その1/2が損金だとすれば500万円が損金に算入される。仮に法人税の実効税率を40%と仮定すれば,税軽減効果は「500万円×40%=200万円」ということになる。この税軽減効果を加味すると,保険料の実質負担は「年払い保険料1000万円−税軽減額200万円=800万円」である。

 したがって,解約の際の返戻率も,この税軽減効果を加味して計算すれば,それだけ高くなる。つまり,ここで挙げたケースで仮に保険料を1000万円払い,返戻金が800万円なら返戻率は80%だが,税軽減効果を加味すれば100%という計算になるわけだ。

 この考え方は,まずその企業が黒字であることが前提だ。さらに効果は税率に依存する。つまり税率が高ければそれだけ効果が大きくなるが,税率が低ければそれだけ効果も低下することになる。

 「課税の繰り延べ」で括られるもう一つの意味は,含み益作りという点だ。

 保険料を払い,その結果,解約の際の返戻金があるということからすると,保険料が資産計上となっている部分は,それが解約の際の返戻金として戻っても固定資産(保険料積立金)が現金になるだけであって,利益になるわけではない。ところが,保険料が損金算入されていた部分については,そこからの返戻金は利益に計上されることになる。

 したがって,今まで取り上げてきた保険種類の場合,保険料の一部が損金算入され,それ以外の部分が資産計上されることになっていたわけであるから,資産計上累計と解約返戻金の差額が含み益となる。この含み益は,仮に実際に解約した際には利益となるわけである。



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