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7.法人の利用目的からみた各種「定期保険」(1)


 前章まで定期保険,長期平準定期保険,逓増定期保険の数値的な推移を保険料税務別にみてきたが,今回はそのまとめとして,利用目的からみた場合のそれぞれの妥当性をみてみよう。数値の推移が一時的によくても,利用目的からみてその利用する企業にとってのニーズと合致していなければ意味を持たない。その観点から,ここまで取り上げてきた保険を整理・理解することがここでの目的である。

 評価の基準は保険商品そのものにではなく利用目的にある。第1章で取り上げた利用目的,つまり経営者死亡時のリスク対策としての「事業保障」,経営者の退任時の「退職慰労金準備」の二つからまずみてみよう。


1)死亡保障のみを目的として各商品を並べてみると…

 ここまで50歳男性,保険金1億円ですべてのケースを説明してきたが,当然それには理由がある。つまり,並べてみた場合,相違点を比較しやすく,数値的に強い時期とそうでない時期などが理解しやすいためである。実際の契約は高額契約ばかりということはありえないので,ここまでの数値は保険金額を半分にすれば,その他の数値(保険料や解約の際の返戻金など)も同様に半分となる単純なものとして理解していただいてよい(厳密には相違する場合はあるが,概要の理解としては概ね記載のとおりである)。

 さてそこで,今まで取り上げてきた保険の事例を表1に特定の側面からまとめてみた。繰り返すが同様に50歳男性の例である。

表1
商品分類 項目 1年 3年 5年 10年
10年定期 保険金 1億円 1億円 1億円 1億円
保険料 672,600 672,600 672,600 672,600
長期平準定期(98歳満了) 保険金 1億円 1億円 1億円 1億円
保険料 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000
逓増定期1/2損金
(*1)
保険金 1億円 1億円 1億円 1億円
保険料 5,331,900 5,331,900 5,331,900 5,331,900
逓増定期1/3損金
(*2)
保険金 1億円 1億円 1億円 1億円
保険料 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900
逓増定期1/4損金
(*3)
保険金 1億円 1億円 1億円 1億円
保険料 12,299,800 12,299,800 12,299,800 12,299,800
*1:保険金額が11年目から50%複利逓増。保険期間22年。
*2:保険金額が7年目から30%複利逓増。保険期間35年。
*3:保険金額が7年目から10%複利逓増。保険期間36年。

 表1は50歳男性が保険金額として1億円を確保しようとした場合のコストとしての保険料をみたものである。したがって,あえて解約の際の返戻金などは記載していない。

 死亡の際の保障として保険金額1億円を50歳男性が10年間確保することだけを考えた場合,ここに記載した数社の保険会社の上記保険種類を並べると,年払い保険料で最低67万2600円から最大1419万2900円までの開きがある。保険金額は1億円定額あるいは当初保険金額1億円で設定した場合である。

 将来における解約時の返戻金や保険金の増加を必要としないのであれば,保険期間の満了が98歳までであったり,保険期間のある段階から保険金が増加したりすることは無駄である。

 通常,経営者に万一のことがあった場合の事業保障目的のみで保険を考えるのであれば,10年定期保険など,期間のあまり長くない定期保険が,その保障のための毎年の直接的なコストとしての保険料が安く,利用目的にかなった保険ということができる。

 たとえば,大型の設備投資などで借入れを増やしており,また経営者に対する経営上の依存度が強く,当面の恒常的な支出を多くしたくないような場合には,経営者に万一の場合の保障をできるだけ安いコストで確保しようということになるだろう。このようなケースは,中小企業においては当然にあり得る事態である。

 そのような場合には,定期保険で用意することが利にかなった保険利用ということになる。保険料の税務は第3章でみたように全額損金算入の扱いとなるものだ。



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