6−1)逓増定期保険とは 前へメニューへ次へ

6.逓増定期保険の税務(まとめ)


 前章まで逓増定期保険の税務の3つのパターンとその数値的な確認をしてきた。

 この逓増定期保険の税務は,平成20年2月28日付で変更が行われ現行の内容となったものである。このため,第4章で触れたように,現在,逓増定期保険の税務は平成20年2月27日までの契約と,それ以降の新契約では取扱いが異なっている。

 ここではその内容について確認しておきたい。


1)逓増定期保険とは

 ここまで何回か繰り返してきたが,まず商品の定義である。逓増定期保険は,保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険である。

 保険金額が将来において増加していくが,保険料はあらかじめそれを織り込んだ形で(つまり平準保険料として)設定されているので,保険期間の一定時期まで前払い保険料が含まれることになる。このため解約の際の返戻金も保険料累計に対しての返戻率が高率となる場合があるため,税務はそれに応じた規定となっているわけである。

(1)平成20年2月27日までの成立契約の税務

 平成20年2月28日付けで行われた変更は,逓増定期保険商品が保険料のうち前払い部分のウエイトが想定より高かったことにより,契約当初6割期間の損金算入部分の抑制が行われたものである。現行の規定はここまで数回にわたってみてきたので,ここではまず平成20年2月27日までの契約についての税務をみておこう。

表 【平成20年2月27日までの逓増定期保険契約についての税務】※
範  囲 当初6割期間の税務 後半4割期間の税務
保険期間満了時の被保険者年齢が60歳超,かつ被保険者の契約時年齢+保険期間の2倍が90歳超 1/2損金算入
1/2資産計上
支払い保険料の全額を損金算入するとともに,それまでの資産計上累計を期間の経過に応じて取崩し,損金算入
保険期間満了時の被保険者年齢が70歳超,かつ被保険者の契約時年齢+保険期間の2倍が105歳超 1/3損金算入
2/3資産計上
保険期間満了時の被保険者年齢が80歳超,かつ被保険者の契約時年齢+保険期間の2倍が120歳超 1/4損金算入
3/4資産計上
上記3区分に該当しない 支払い保険料の全額が損金算入
※ 保険料全期払いの場合

 平成20年2月27日までの契約で現在存続しているものは,このの取扱いとなっている。当然といえば当然だが,最下段の「支払い保険料の全額が損金算入」に該当する契約が多く存続しているはずである。

 たとえば,年齢が50歳の男性が期間20年で逓増定期保険に加入していたとすれば,最下段に該当するので,全額損金算入で逓増定期保険に加入することができた。

 すなわち,保険期間満了時の被保険者の年齢が「50+20=70歳」で前表の最上段に入るが,年齢「50+20×2=90歳」なので上段三つに該当しない。すなわち最下段に該当し全額損金の扱いとなったのである。

(2)平成20年2月28日以後

 仮に同じ設定の逓増定期保険の場合,改定後の現行規定ではどのような扱いとなるだろうか? 現行の規定は下表のとおりである。※

範  囲 当初6割期間の税務 後半4割期間の税務
保険期間満了時の被保険者年齢が45歳超 1/2損金算入
1/2資産計上
支払い保険料の全額を損金算入するとともに,それまでの資産計上累計を期間の経過に応じて取崩し,損金算入
保険期間満了時の被保険者年齢が70歳超,かつ被保険者の契約時年齢+保険期間の2倍が95歳超 1/3損金算入
2/3資産計上
保険期間満了時の被保険者年齢が80歳超,かつ被保険者の契約時年齢+保険期間の2倍が120歳超 1/4損金算入
3/4資産計上
※ 保険料全期払いの場合

 契約時の年齢が50歳で保険期間の満了時の年齢が「50+20=70歳」,「50+20×2=90歳」なので最上段の区分に該当する。したがって,現行規定では当初6割期間が1/2損金算入,1/2資産計上に該当することとなる。

 いずれにしろ逓増定期保険については,現行規定では当初6割期間の損金算入額の最大が1/2であり,改定前のような全額損金算入はありえないことになっている。ただし,細かくみるとこの税務の取扱いとならないものがあるのでみておこう。

 平成20年2月28日付「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」(平成20年2月28日課法2−3,課審5−18により改正)において逓増定期保険は次のように定義されている。

 「逓増定期保険(保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険のうち,その保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるものをいう。)」

 それでは45歳までに満了する場合はどうなのだろうか?

 この通達では,保険期間満了時の被保険者が45歳以下の保険契約については定義上逓増定期保険から除外されている。したがって,一部の保険会社では満了時の年齢が45歳までの年齢範囲について商品内容としての逓増定期保険を取り扱っているため,当該範囲については全額損金扱いが存在することとなっている。

 この平成20年2月28日付改定は,実際の保険商品の内容と,税務が想定する商品の範囲との乖離が生じたことによって行われたものと考えることができる。

 つまり実際の商品が,税務が想定していた逓増定期保険の前払い保険料の割合より多く,その結果,全額損金算入を想定していなかった範囲のものまで,そのような取扱いとなっていたということである。このため,いわば税務が後を追いかける形で商品実態にあわせて変更されたといえる。

 生命保険の保険料は,もともと税務と関係なく,一定の計算基礎率によって構成されており,その固有の要因で変更が行われることがある。

 すなわち,生命保険料は保険料計算基礎率として予定事業費率や予定利率,予定死亡率を使って計算されているが,たとえば予定死亡率が変われば,当然保険料も解約返戻金も変わってくる。そのため法人契約の税務との不整合が生ずるということがあり得る。

 そういう観点から中小企業(法人)が生命保険を利用する場合,その生命保険に関わる保険料の税務は,将来の時点では変更される可能性があることをある程度考慮しておく必要がある。

 平成20年2月28日付の逓増定期保険の場合には,税制変更の前に成立した契約についてはその契約が継続している限りそれまでの税務が以後現在も生きている。したがって,このような改定の場合には,影響はその後新たに入る生命保険に限定される。しかし歴史的にみれば,契約時期が古くても,改定日以降に支払う保険料から新たな取扱いとなる形での変更もあり,その場合には改定前の契約であってもその時点以降将来に向けては影響があることになるわけである。



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