5−1)逓増定期保険―1/3損金,2/3資産計上のケース 前へメニューへ次へ

5.逓増定期保険の税務(2)


 前章では逓増定期保険の概要と区分,さらに契約当初の6割期間について1/2損金,1/2資産計上のケースについて内容をみた。ここでは,区分を再確認しつつ上記以外の取扱いについてその詳細をみていこう。


1)逓増定期保険―1/3損金,2/3資産計上のケース

 逓増定期保険は「保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険のうち,その保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるもの」をいう。

 これが定義である。さらにその上で,「保険期間満了時の年齢が70歳超かつ加入年齢+(保険期間×2)が95歳超」に該当するものが,契約から当初の6割期間について1/3損金,2/3資産計上,その後の4割期間については毎年の保険料が損金となるとともに,それまでの資産を取り崩して損金とする取扱いとなる(保険期間の全期間にわたって保険料を支払う全期払いの場合)。

 具体的にみていこう。50歳男性,当初保険金額1億円,保険期間35年の例である。この場合,保険期間満了時の年齢が,
 50歳+35年=85歳で70歳超
 加入年齢50歳+保険期間35年×2=120
で95歳超に該当する。

 つまり1/3損金,2/3資産計上の扱いとなるわけである。ある保険会社の例では,経過7年目から保険金額が30%複利逓増し,13年目で上限5億円に達し終期までその保険金が継続する。この設定で年払保険料は1419万2900円となっている。契約1年目から6割期間である21年目まで,この保険料の1/3である473万966円が損金,残りの2/3である946万1934円が資産計上されていく。

 契約22年目から最終35年目まで,つまり後半の4割期間については,毎年の保険料1419万2900円とそれまでの資産計上累計額を残りの4割期間である14年で除した金額,つまり「資産計上累計額1億9870万614円÷14=1419万2901円」の合計である2838万5801円が毎年の損金算入額となる。最終的に保険期間の終期には保険料累計全額が損金,言い換えると資産計上累計は0となって保険期間を終了することとなるわけである。

 このケースを表にまとめると表1のとおりである。

表1 ※
経過期間 1 7 9 15 25 30 35
保険金 1億円 1.3億円 2.197億円 5億円 5億円 5億円 5億円
保険料 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900
保険料
累 計
14,192,900 99,350,300 127,736,100 212,893,500 354,822,500 425,787,000 496.751.500
返戻金 11,430,000 99,900,000 130,250,000 196,810,000 255,700,000 225,720,000 0
返戻率 80.5% 100.5% 101.9% 92.4% 72.0% 53.0% 0
損 金
算入額
4,730,966 4,730,966 4,730,966 4,730,966 28,385,801 28,385,801 28,385,801
損金算入
累計額
4,730,966 33,116,762 42,578,694 70,964,490 212,893,490 354,822,495 496,751,500
資産計上
累計額
9,461,934 66,233,538 85,157,406 141,929,010 141,929,010 70,964,505 0
※ 保険料全期払いの場合

 表でみると経過7年で解約返戻金は,それまでの保険料累計の100%を超え,それが経過11年まで続く。7年経過時点の資産計上累計は6623万3538円で,返戻金は9990万円,差し引き3366万6462円が含み益とみることができる。

 契約から6割期間について保険料の2/3が資産計上ということは,それだけ前払い保険料部分が多い。つまり,将来の支払いのための財源に充てられるため資産計上することとなる。前章の1/2損金,1/2資産計上との相違は,そういう理由であり,そのことが数字に表れているということができよう。

 すなわち,かなり早い段階から将来の支払い財源として責任準備金を積み増すため,返戻率はかなり高い水準が維持されているわけである。



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