タナベマネジメントレター

コンサルタンツ・EYE

『“出来る”レベルを自覚する』

(2016.10.12)

 「クラブで主将をやっていたので、私にはリーダーシップがあります」

 このアピール表現のように、論理が飛躍しすぎていることに気付かず、「出来る」と主張する方と出会う。とくに多いのが採用面接の場面だ。採用する側と採用される側で「出来るというレベル認識の違い」が飛び交い、探り合いの空中戦が繰り広げられる。

 就職希望者は「出来るレベル認識=自分が出来ると思っていること」をアピールし、採用側は「それがどれほどのものなのか?その根拠は何なのか?」を正しく掴もうとする。このような採用面接や社内の個人面談では、双方の認識度合いの違いから互いに不満へとつながってしまうことがある。

 では、折り合うことは不可能なのであろうか。わかってもらえないのに、頑なに自分が出来ると思っていることを主張する側と、その根拠を探し続けて評価・判断をする側との接点がなければ、平行線を歩くだけだ。

 出来るレベルの設定には諸説ある。今回は、A社で活用されている「出来るレベルの設定」の事例を紹介する。

 ベースである1〜4段階は、表現の違いこそあるが概ね次のような設定である。

 <ベース1>知らない・分からない・出来ない

 <ベース2>教えてもらいながら出来る・アドバイザーと一緒なら出来る

 <ベース3>一人で出来る

 <ベース4>教えることが出来る

 <ベース4>は「一人で出来るのであれば、人にも教えることが出来るだろう」という考えから、自然とこのような設定になるのであろう。A社は<ベース4>を細分化し、次なる<ベース5>を設定した。

 <ベース5>個々のメンバーのレベルに合わせた方法で教えることが出来る

 「それだけ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれないが、「個々のメンバーのレベルに合わせた方法で〜」という基準が入ることで、その人の対応力が問われる。

 <ベース4>までは、ある程度の経験を積み重ねれば行き着くはずだ。しかし<ベース5>は経験だけでは難しい。「関心を持って相手を見る習慣」を身に付けることが必要だ。

 A社は“求める人材像”に<ベース5>を掲げ、その場所へ向けて会議・ミーティング・教育を設定し、教える・教わる良い社風を築いている。

 平行線を歩いても何も生まれない。「自分は何が出来て、何が出来ないのか」「会社はどのような人材を求めているか」を自覚させることで、人は目標を持ち努力しようとする。折り合うことも可能だ。人材・企業の成長にとって大きなプラスになるであろう。

以 上

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