タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE

『改めて、資金繰りの重要性を問う』

(2016.05.25)

 会社の事業活動はどれだけ利益を出せたかで評価されるが、資金繰りで評価されることは少ない。
 「商売の状況はいかがですか」と経営者の方々に投げかけると、「今年の着地は売上で○円くらい、経常利益は○円くらい」という回答をいただく。「今年の着地の収入は○円、支出は○円で、手元の預金は○円残る」という回答をいただいたことは未だかつてない。
 利益と資金繰りの違いは、よく野球とボクシングに例えられる。野球は9回裏まで負けていても逆転すれば勝ちであるが、ボクシングは一度のノックアウトで負けになる。数年間利益が出ずに赤字であっても、単年度で大きな黒字が出れば過去の赤字は帳消しに出来るのに対して、資金繰りは一度ショートすれば会社はそこで倒産であることを例えたものである。
 バブル崩壊後に急速に景気が悪化し、売上重視の拡大経営を続けてきた企業が相次いで倒産し、手元に残る現金を重視する「キャッシュ・フロー経営」が重視されるようになってきたと言われる。
 しかしながら、さまざまな企業で業績管理の面からお手伝いをさせていただいている筆者の実感としては、依然として利益と売上高が経営上で最も重要とされる業績指標であり、資金繰りは二の次であるという経営者が多いように思う。
  
 業績が悪化しつつある会社を支援させていただく際、真っ先に確認するのは次の2点である。
  • 1ヵ月後の資金繰り予測
  • 2ヵ月後以降半年後の資金繰り予測
 実際には1ヵ月後の資金繰りは既に入金、支払いともにほぼ正確に予測できているが、2ヵ月後以降の資金繰り予測については全く把握していないケースが多い。
 しかし、1ヵ月後の資金ショートが判明したとしてもすでに手遅れで、資金的な手立てを講じることができずに倒産してしまう可能性が極めて高くなる。
 個別の収入や支出が確定していない段階で、2ヵ月後以降の収支予測を厳密に行うことは困難であるが、少なくとも「資金がショートする可能性があるのか」「いつ、いくら不足するのか」を5〜6ヵ月前に予測できれば、資金ショートまでの期間に手立てを講じることも可能となる。
 資金繰りを可能な限り先まで予測することは、とくに業績の悪化しつつある局面において、会社を存続させるためには最も重要なことだ。
 
 人は病に侵されても、心臓が動いていれば生きていられるが、心臓が止まれば死んでしまう。会社も同じだ。何年赤字が続いても資金がある限り存続できるが、資金がなくなればそこで終わりである。今一度、自社の資金繰りに問題がないかを確認していただきたい。

以 上



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