タナベマネジメントレター


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『組織をミスリードする集団心理の罠』


 組織における重要な意思決定の場として、役員会をはじめさまざまな会議が企業で実施されている。日々急速に変化する情報を収集し、適時適切な施策を打ち出すことが経営には求められているため、会議における情報共有や議論は必要不可欠である。

 しかし、その意思決定のプロセスにおいて、組織が陥りやすい集団心理の罠が二つある。グループシンク(Group Think)とグループシフト(Group Shift)だ。

 グループシンクとは、同質性の高い集団の中で、考え方や価値観の異なる少数派の意見が、権力者や多数派の圧力で押さえつけられてしまう現象である。

 この圧力は、論理的な言葉として表現される場合もあれば、重い沈黙として表現される場合もある。ワンマン型のトップの発言や幹部メンバーの沈黙などがこれにあたる。下位のメンバーが異論や反対意見を言うことができず、特定のメンバーの発言のみで会議が終了することが多くなる。

 価値観の同じメンバーによる迅速な意思決定というメリットがある半面、問題の深堀や情報収集が不足し、新たな別の選択肢の検討という機会が喪失するデメリットがある。集団で考えることによって、個人で考えるよりも思慮が浅くなることから、グループシンクは日本語で「集団浅慮」と訳されている。

 グループシフト(Group Shift)は「集団傾向」と訳され、同じ意見や考え方を持つ人が議論することにより、その方向や進め方が極端になってしまうことを意味する。

 慎重なタイプの人が多いと、その結論はより保守的となり、果敢なタイプの人が多いと、その結論はより攻撃的となる。経営計画の売上予算や投資案件への投資額が、会議や議論を通じて当初の想定より急増するのは、グループシフトが作用している可能性が高い。

 米GMの全盛期を築いた元CEOのスローンは、最高レベルの会議で意見が完全に一致している場合は、異なる意見を引き出すために敢えて時間をおいて再検討したと言われる。また、ドラッカーは「真に成果を上げるためには、意見の一致ではなく不一致を生み出さなければならない」と言っている。

 自社の会議や意思決定にグループシンクやグループシフトは作用していないだろうか?今一度、客観的に見つめ直していただきたい。

以 上



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