タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『業種を超えて異質から学べ』


 先日ある住宅メーカーS社の社長とディスカッションをする機会を得た。

 その社長に「ライバルはどこか」と尋ねると、「リッツカールトンでありオリエンタルランドである」と言う。

 S社が社員に徹底しているのは、わが社は「家を売る」のではなく、「“生涯で最も高い買い物を通じて最高の感動を提供する”ことを具体化する」ということだ。

 ゆえに同社の営業パーソンの主な活動は、展示場来訪者の追客ではない。家を建てるまでの課程で、いかに多くの感動をお客様に提供できるかを考え、実現することだ。そのために、社員一人ひとりがアイデアを考えて実践し、次々と標準化している。

 例えば、新築の家に初めて入居する日には高級車でお出迎えし、門から玄関まで赤絨毯を敷いておく。その上、家にはシャンパンやケーキまで用意しておくというから至れり尽くせりだ。

 また、完成までの打合せの様子や着工の一部始終を撮影したDVDの上映会をしたり、家族同士内緒で書いていただいた手紙を読んでもらうなど、演出にも凝っている。

 お客様はほぼ100%感涙されるそうだ。これらは全て営業パーソンが考え、会社のノウハウとなっていったものである。「入居当日の感動を最大限にしたい」というホスピタリティ精神がベースにあるからこそ、これらのサービスが具現化されているのだ。

 また営業パーソンには、サービス開発ができる予算を自分の裁量で使えるといった配慮もされている。結果として、大きな感動を体験した顧客の多くは、知人や親族にS社を紹介してくれるそうだ。

 ここまで話を伺うと、ライバルが同業ではなく、ホテル業やテーマパーク施設業であるというのも納得できる。S社は多くのライバルがひしめく住宅業界で、殆ど競争にさらされることなく順調に成長しているとのことである。

 同じ業種の中では、考えも対策も“一定の枠”を超えることは難しい。改めて異質に学ぶ大切さを教えていただき、考えさせられた良い機会であった。

以 上



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