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『粉飾を知ることの意味』 黒字倒産とは、損益計算書で利益を計上しているにもかかわらず、倒産することをいう。“勘定合って銭足らず“の状態である。理論と現実とが一致しない例えに使われる言葉だが、現実の経営ではこのような場面に遭遇することが時折ある。利益は出ているが、現金商売の会社でない限り、損益計算書のみで真の姿は見えないのだ。 増収増益であるなら、次に考えるのは増加運転資金の調達である。キャッシュという会社の血液を随時補給するには、資金繰りが必要になる。金融機関から借り入れしてひとまず一服という経験は、経営者であれば誰でもあるだろう。取引先との交渉以上に、資金調達に頭を悩ませる経営者の何と多いことか。 資金調達の準備は決算書の作成にある。経営の結果のみで判断されるのであれば悩む必要もないが、決算書という報告書が判断材料になると考えて間違いない。判断する側からしたら、それが一番手っ取り早いからだ。 融資の可否は、つまるところ利益が出ているかという一点に集約される。キャッシュフローが重視されて久しいが、キャッシュが不足するから資金調達をする矛盾について、金融機関は返済原資の根拠を決算書に求める。 利益の出るビジネスモデルを確立した企業であれば問題ない。多額の売上金を回収することが決定している企業が、その回収金を引当に資金調達することも返済のメドが立っているので容易であろう。問題は、そうでない企業の資金調達である。 額の大小あれど粉飾をしている企業が国内では非常に多い。利益を上積みするものもあれば、過小にする場合(逆粉飾)もある。そこに経営者の意見や判断が反映されるわけで、決算書は実態を映す鏡でなく、あくまで報告書なのである。 粉飾する理由を大きく捉えると、信用維持と資金調達に尽きる。しかし、経営者の望みはあくまで会社の発展であり、粉飾を良しとする精神はそこにはない。だが、会社のためと思って決算書に化粧を施すことは、1期で解消されることがない中毒性を有する。加えて黒字による法人税の納付という粉飾コストも発生し、悪化を加速させる。 粉飾の手法を知ることは、ステークホルダーが自社のどこをチェックするのか、財務基盤のどこを強化すべきかを知るためには、有効な手段と言える。ただし粉飾手法を知る目的は、粉飾を避けることにある。経営において先行で手を打つことの重要性を再認識できるだろう。
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