タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『数字で語ることの大切さ』


 筆者がご支援させていただいている製造卸売業の会社は、縮小する国内市場において、ある分野でナンバーワンの地位を保持している。直近期では10年連続の増益を達成した。それにも関わらず社長の言葉の端々からは「業績に対する危機感」が常に感じられる。

 それは、根拠のない不安から発せられる言葉ではなく、あくまで自社の業績構造を数字で把握し分析した結果から発せられる言葉である。すなわち、自社を取り巻く状況を「数字で語る」のだ。

 部門別・商品カテゴリー別といった業種特性に応じた管理会計上の損益を適時にかつ正しく把握する、あるいは自社の財務数値を業界平均値や目標とする会社と比較し、劣っている場合にはその原因を追究し、改善策を検討する。業績の堅調な会社でこのプロセスを無視している会社はない。

 一方で、業績不振の会社には上記のプロセスがないケースが非常に多い。そのような会社の経営者はよく、「これだけ忙しいからきっと大丈夫」「頭の中の計算では利益が出ている」「今月は○○という大きな受注があったからきっと黒字だ」「今期、最新の設備を導入して生産性が上がったから儲けが出る」といった、定性的、感覚的な現状認識を口にする。

 筆者の経験上、経営者が数字に無頓着である場合、以下のような悪循環に陥っている会社が多い。

1. 部門別・拠点別・商品別などの管理会計上の利益がわからないままに、どんぶり勘定で経営判断を下す。

2. 経理部門も数字を適時に正しく集計して経営者に報告する習慣がないため、月次決算の確定が異常に遅い。

3.業績がわからないから、どれだけ悪化しているかも、なぜ悪化しているかもわからない。

4.業績向上の手が打てないので、いつまでも損失を計上し続ける。

 もちろん、数字からみた業績の良し悪しが、会社の優劣を決めるわけではない。しかしながら、どんなに優秀な人材を雇ったとしても、立派な設備を導入したとしても、それが自社の直面している状況と照らし合わせた有効な手立てでなければ、全く意味をなさない。

 自社の数字を正しく適時に集計し、業績構造を理解するとともに変動要因に常に目を向けることが、業績向上の第一歩となるのである。



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