タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『“なぜ”を徹底的に教える』


 タナベ経営では例年、3月下旬から4月上旬にかけて、全国各地で新入社員セミナーを開催している。大阪本部開催の新入社員セミナーは全部で3コースあり、2泊3日の日程で全てお寺で行っている。新入社員としての心構えや基本姿勢・基本動作・ビジネスマナーに始まり、座禅・食事作法・作務(お寺の清掃のこと)などもカリキュラムに含まれる。

 今回、筆者がコーディネーターとして参加した新入社員セミナーで2つの事件が起こった。常々コンサルタントとして「若手社員には“なぜ”を教えなければ動かない、動けない」ことは重々承知していた。しかしこの事件を目の当たりにし、筆者の心の中で「徹底的に」という一言が加わった。

 1日目のオリエンテーション終了後、和尚様より「道場心得」の説明がある。「道場心得」とは、3日間お寺で過ごすためのマナーを座禅道場で正座して聞くのである。

 1つ目の事件はこの時に起こった。人の話を聞く時、普通は相手の目を見て聞くものである。一番前に正座していたある新入社員は、ずっとうつむいていた。和尚様が「人の話を聞く時は顔を上げて聞け」と注意した。

 何度か注意されたが彼は顔を上げることなく、ついには話の途中で座禅道場を出た。弊社の事務局のメンバーが後を追い、なぜ退席したのか聞いたところ「和尚様が気に入らないから。言い方が気に食わないから」と答えた。

 2つ目の事件は昼食の時に起こった。食堂には、弊社以外の参加者も含め約200人いた。4人1組でご飯、おかず、味噌汁を取り分けるのだが、200人の最後の1人がよそい終わって初めて和尚様が「いただきます」の号令をかける。早くよそい終わった人は、黙想をして待つのがお寺のマナーである。

 黙想をしない新入社員に対して和尚様は「黙想をしろ」と注意したが、彼は椅子を蹴って食堂を出て行った。理由は先ほどと同じで「和尚様が気に入らないから」である。

 筆者はコーディネーターを10年以上やっているが、今年のようなケースは初めてである。“なぜ”人の話を聞く時は顔を上げて聞かなければならないか。“なぜ”お寺のマナーを守らなければならないか。“なぜ”ということを徹底的に教えなければ、育成できない若手社員もいることを実感させられた新入社員セミナーであった。



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