タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『クレドの活用』


 社員の倫理観・モチベーションの醸成策の一つとして、企業の経営姿勢を明文化した「クレド」がある。クレドとは「心条」「志」を意味するラテン語で、企業活動の拠り所としての価値観や行動規範を表すものである。

 「企業理念」は多くの企業で使われているが、クレドは企業理念をさらに咀嚼し、社員だけでなくステークホルダー(顧客、取引先、社会、株主など)にまで浸透させていく一連のプロセスと言える。

 効果として、会社の価値観と個人の価値観が近づく、自ら考えて行動する社員が増える、自分の行動を認めてもらえる、社内のコミュニケーションが良くなる、などが望める。

 それでは、実際に筆者がクレド作成に携わった事例を紹介しよう。

 A社は創業100年を迎えようとする地場中堅ゼネコンで、他の地場ゼネコン同様に建設市場の縮小を受け、業績が厳しいため社員採用を控えていた。結果、平均年齢が高く、若い社員になかなか成長機会が回ってこず、組織が不活性化していた。

 そこで社長は、社員活性化の施策の一つとしてクレドを作成することにし、中堅幹部6名をメンバーにプロジェクトを発足した。

 A社は経営理念を策定していなかったので、まず「事業コンセプト」と「組織コンセプト」を議論した。本来、経営理念は何屋であるか?(存在価値・原点)、何を目指しているのか?(方向性)、何を基準に進んでいるのか?(判断基準、組織のあるべき姿)の3点の問いに答えることにある。よって最初の2つを「事業コンセプト」、最後の1つを「組織コンセプト」とし、議論・策定した。

 次に、クレドタイトルを「A社の約束」として、先の2つのコンセプトを実現するためにはどうあるべきかを明文化していった。約束先は顧客、社員、取引先、地域社会の4つ。事業・組織コンセプトと4つの約束を作成する過程において、メンバーはお客様、社員、取引先、経営者(会長、社長)などステークホルダーにヒアリングを実施し、A社のあるべき姿を深掘りしていった。

 コンセプト作成からクレド完成まで約4ヵ月を要したが、社長とプロジェクトメンバー双方とも納得した内容に仕上がった。何よりメンバーは膝を突き合わせた議論を通して、自社のあるべき姿を深く理解していくとともに、自分たちが会社を盛り上げていくのだという自覚が芽生えていった。

 当然、クレドは全社員に浸透させ行動を変えさせることが重要なわけではあるが、その浸透策と成果については、また別の機会に紹介したいと思う。もしクレドに興味を持たれたなら、多くの書籍が出版されているので一読されることをおすすめする。



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