コンサルタンツ・EYE
『Employability(エンプロイアビリティ)はどこへ?』 想像していただきたい。行きつけの定食屋で、いつもと同じスタッフ、同じ具材・味、同じサービス、それなのに値段だけが突然上がっている。 あなたならどう思うか。「デフレでこれだけ物価が下落している中で、何を考えているのか?」と、理不尽に思うのではないだろうか。 しかし、このような奇妙な現象が社員の賃金において生じているように感じる。新入社員で覚えるのもまだまだこれから、という若手人材ならばまだしも、それなりのベテラン社員に至っても、在籍しているだけで賃金が上がっている。 社員を雇用した以上、企業はその人材を育てて活用する責任がある。また、その優位性を利用して簡単に賃金を下げたり、ましてや辞めさせたりすることはあってはならない。それどころか国内の場合、企業は労働法で雇用し続ける責任を求められ、社員に配慮されている。 それほど大切にされている社員側に、どれくらいそれに応える参画意識があるだろうか。かつてのように、同じことをしていても市場が勝手に拡大し、会社が成長していた時代ならばそれも可能だったであろう。しかし、現在のように市場が縮小、会社の成長が横ばいではそのような状態が続けばいずれ限界がくる。 誤解していただきたくないのは、筆者はこのような状態だからこそ、もっと成果主義で変動性の強い賃金制度にすればよいと訴えたいのではない。それどころか、それによる弊害を十分に理解している。 ここで述べておきたいのは、世間から企業が“雇用し続ける努力”を求められている一方で、社員が“雇用され続ける能力(Employability)”を鍛え、向上させる責任はどれくらい叫ばれているだろうか、という点だ。 「賃金が上がらない」と嘆く前に、あなた自身は昨年よりも付加価値が増しているだろうか。「会社が成長しない」と嘆く前に、あなた自身は昨年よりも成長しているだろうか。 日本全体に元気がないように感じる今だからこそ、企業の“雇用し続ける努力”と合わせて、社員の“雇用され続ける能力(Employability)の向上”も意識されるべきだと感じる。
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