タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『叱れないリーダーが部下をダメにする』


 部下を叱れないリーダーが急増している。怒ることはできても叱れないのだ。“怒る”とは結果について責めることであり、“叱る”とは考え方(価値判断)が違う時に改めさせることである。考え方(価値判断)を教えられないリーダーは、部下育成はできない。

 機械部品などを販売しているB社での出来事を紹介しよう。ある日、営業部長宛てに電話がかかってきた。「2週間前に発注した部品がまだ納品されていない。1週間前に担当のAさんに確認したところ、2〜3日で入ってくると聞いていたが、まだ納品されないので確認の電話をした。明日、その部品が必要なのだが・・・」ということであった。

 電話の相手は、30年もお付き合いのある非常に温厚な社長さんで、電話をかけたこと自体、申し訳なさそうに話すのである。10年前はB社でベスト5に入るほどの得意先であり、現在は規模を縮小して細々と営業されているが、B社の大事なお客さまであることに変わりはない。

 営業部長は「申し訳ございません。確認して折り返します」と言って電話を切った。窓口担当にいつ納品になるのか聞いたが、そのような部品は発注されておらず、すぐに担当であるAさんの携帯電話にかけて確認した。

 Aさん曰く、確かに2週間前に部品の注文をもらっていた。そしてその1週間後に社長さんから電話があり、自分が発注し忘れていることに気づいた。しかし今さら発注していないとは言えず、咄嗟に「あの部品は在庫を切らせていますが2〜3日で入ってきますので、また連絡しますね」と言ったにもかかわらず、また忘れてしまったとのこと。

 「今、大きな案件を抱えていて部品1個の注文など忘れていました。今、重要なのは業績達成のために大きい金額を上げることでしょう。すぐに発注かけますから大丈夫ですよ。今から打ち合わせなので失礼します」とAさんは言って、電話を切った。

 営業部長は、会社に戻ってきたAさんを別室に呼んだ。「発注ミスは誰にでもある。問題なのは発注し忘れたことではない。金額が低い、個数が少ないとかで判断する間違った考え方が問題だ。あなたは、お客さまの注文のありがたさや重要性を理解していない。部品1つにしてもわが社を信用して発注してくれており、決して金額の大小ではない。その考え方を改めよ」とAさんを叱った。

 この事例のように、発注ミスを「なぜ発注しなかったのだ」と責めて“怒る”のではなく、根底にある考え方(価値判断)についてしっかりと改めさせる“叱る”ことが重要なのである。



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