タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『全体最適・未来最適で判断せよ』


 先般、ある会社での情報システム改善のプロジェクトの場で、このような発言があった。

 「そのやり方に変えると各支店では作業が減るかもしれないが、本社では作業量が増えるので反対です。」

 これは部門長の発言である。確かにその変更だと彼の部門では負担が増えるのだが、全社として考えると生産性は上がるのである。彼は全社の視点を持ち合わせていなかったのか、自部門を守ろうとする思いが強すぎたのか定かではないが、幹部の判断としては間違っている。

 意思決定にあたり、部分的に不利益を被る人たちへの配慮は大切だが、全体最適の視点から判断しなければならない。

 1986年、当時の内閣官房長官の故・後藤田正晴氏が、内閣官房6室の各室長に出した訓示、通称「後藤田五訓」と呼ばれるものがある。これはどんな組織にも通ずるリーダーの行動訓であり、内容は以下のとおりだ。

1.出身がどの省庁であれ、省益を忘れ、国益を想え
2.悪い本当の事実を報告せよ
3.勇気を以って意見具申せよ
4.自分の仕事ではないと言うなかれ
5.決定が下ったら従い、命令は実行せよ

 1点目に全体最適の重要性が説かれている。会社において全体最適より部分最適の考えが勝ると、セクショナリズムの横行やチームワークの低下が起こり得る。しかし、個々人の考え方だけに問題があるとは言い切れず、むしろ会社が社員に部分最適の考え方をさせるような環境を作り出してしまっていることも多い。

 処遇制度が個人成果を重視するような形になっていれば、どうしても部分最適(自分最適)になってしまう。また、会議などの場で間違った責任追及をしてしまうと、みな自己防衛に走り部分最適になってしまう。部分最適の視点で意思決定を繰り返しているようでは、企業に永続発展はない。

 また、未来最適の視点も重要だ。今が良ければいいのではなく、未来が良くなるための判断である。会社においてはその最たる例が投資だろう。

 以前、筆者の尊敬する人が次のようなことを話され、感銘を受けたことがある。

 「“人の器”とよく言うが、それは判断基準にどれだけ広範囲の人達を対象としているかの“人”の幅、どれだけ先までの未来を対象としているかの“時間”の幅という2つの判断基準の幅を掛け合わせた面積こそが“人の器”を表している。」

 自社の永続発展のためにも、自分自身の器を拡げるためにも、全体最適と未来最適の視点で判断できる環境づくりをしていこう。



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